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召喚主は魔王幼女!?

楽しんでもらえると嬉しいです。

「どうか頼む!」

 魔王に土下座された。

「と、とりあえず頭を上げてくれ」

 一気にシーンが飛び過ぎたな。俺はつい今さっき、魔王を名乗る幼女――略して魔王幼女としよう――に、王国に異世界召喚をされたときと同じような魔法陣を使用してこの場に呼び出された。日本にいた俺が、異世界に召喚され、その召喚された世界からまた違う異世界に召喚されるなんてあるのかと疑ったが、起きたことだししょうがないと、頭を切り替えた。

 召喚先に魔王がいたからといって即座に討伐はできない。前の世界で魔王は悪の象徴だったが、この世界ではどうかわからない。まあ、俺はもともと平和な日本で暮らしていた、平和を愛する日本人だから、むやみやたらに、人を殺したくないというのはあった。

 だが、俺には目の前の幼女が魔王だと信じられなかった。信じられない要因は彼女が幼女だからではない。幼女に召喚された先が荒野なのは良いだろう。空にひしめく暗雲も雰囲気があって良いだろう。なにが違うかっていうと背景にある建物が確かに魔王城なのだろうが、この場の雰囲気とはかけ離れて、魔王城らしからぬものだったということだ。

建物は城とは程遠いほどの外観をした--RPGゲームでよくある最初の村のメインストーリーとは絶対に関わらないモブが住んでいるような感じの--良く言って掘っ建て小屋、悪く言って農具などを入れておく物置小屋というのがしっくりくるような、この世界に来て一番ショボイと思える建物だった。いや、マジで、レベル上げで行った辺境の村で見た家よりも酷い。

と、話が逸れたな。まあ、こんな理由からこの幼女が魔王とは思えず、とりあえず話を聞こうということにした俺は、我が城にあがってくれという自称魔王幼女に引かれお邪魔していた。

 それからシーンは今へと至っているわけで……。

「我には勇者に対抗するだけの力が必要なのじゃ……。どうか、どうか我に力を貸してくれ!」

「はぁ……。とにかくどういうことなのか説明をしてくれないか?なにもわからないんじゃ力の貸しようもないぞ。それに俺は急いで元の世界に帰りたいからな」

ため息を吐きつつも、話を聞くと言った俺に魔王幼女は床から頭を上げ、喜びを顔全体であらわしたような笑顔を向けた。

「よし、それでは簡潔に説明をしよう!最初はどこから話せばよいかの。おっと、そうじゃ。お主、名はなんと申すのじゃ?」

 魔王幼女は土下座をやめると、ドカッとその場に女の子らしからぬ音をたて、あぐらを掻いて座った。

「我はさっきも言ったからわかると思うが、1743代目の魔王。名前はカローナ・ベルチェじゃ!」

 あくまでこの幼女は自分が魔王であるということで話を続けるようだ。彼女の魔王発言について言及して話の腰を折っていては前に進まないだろうと思ったため、俺もそれについてはなにも言わないことにした。

「俺は田中 実。えっと、日本って名前の国から来た」

「タナカミノルか珍しい、というよりも聞いたことのない名じゃの。国のほうも我が知らない国じゃ」

 ジロジロともの珍しそうに俺のことを魔王幼女が観察してきた。

「まあ、恐らくというよりほぼ確実に違う世界だろうな。俺の最初にいた世界にはこんな魔境は、俺が知る限りなかったからな」

「……。ああ、そういうことか」

 魔王幼女は顎に手を当て何かを考えていたが、すぐさま一人で納得をしていた。一人で納得していないで、俺にも説明しながら話を進めてほしいと思う。

「まあ、お主の――タナカミノルの故郷の話しは置いておこう」

 魔王幼女の一人で納得していたことについて知りたいとも思うが、話を先に進めてくれるらしい。

「そうだな。あと、呼ぶときは実でいいぞ。フルネームなんて呼びにくいだろ」

「了解じゃ。ならミノルよ。我のことはローナと呼ぶがいい。親しかった者たちはそう呼んでおった」

 わかったと告げ、魔王幼女ことローナに話の続きを促した。

「それでは、何を話そうかの……。まずは召喚を行った理由とかが妥当じゃな」

 そう言い、ローナは召喚を行うに至った経緯を話し始めた。

 まとめると、ローナは先代魔王であった父が急死したことにより、若くして魔王の称号を継いだ。そんなローナをよく思わない過激派のお偉いさんが、同じような考えを持つ兵士たちの指揮を執り反乱を起こし、現魔王となったローナを殺しにかかってきた。城から命からがら逃げだしてきたローナは、仮の城としてここに住み、反撃の期を窺っていた。魔王軍は先代魔王が納めていたころとは違い、王国の領地など各地で暴れているようで、悪いうわさがローナまで届いてく。そんな折、王国で魔王討伐のために勇者召喚を行ったという知らせを聞いた。ローナはその手があったかと思い、勇者召喚は無理でもそれに近い、戦士の召喚はできるはずだと書物をあさり、召喚の方法を探した。戦士に協力をしてもらうべく、懸命になって探した。そして見つけた召喚の方法。召喚にいろいろな準備が必要で探し始めてから3ヵ月という時間がかかったが、召喚は見事成功。現れたのが俺となるわけだ。

ローナのことを疑っていたけど、話を聞く限りだと本物の魔王ってことになるんだな。

「そういうわけじゃ。我は魔王の子であるにもかかわらず、魔人族で落ちこぼれといわれるほど魔力総量が少ない……。我一人では平和を望んでいた父が作り上げた国を取り戻すことができん。父の考えを逸脱している今の魔王軍だけなら討伐されてしまってもよい。じゃが、王国との全面戦争など勃発してしまっては国まで滅んでしまうやもしれん」

 話しているうちにローナの顔がどんどんと俯いていく。

「頼む。魔人族の味方をして欲しいというわけではない!我の……父が残していった国を取り戻す手伝いをしてくれるだけでいい。どうか……、どうか……」

 がばっと二度目の土下座をしてきた。

「なあ、頭を上げてくれ」

 声をかけるも、ローナは一向に頭を上げてはくれない。自然と、見えているローナのつむじに向かって手を伸ばしていた。

「ローナ。俺はローナに協力するよ。だから、頭を上げてくれ」

俺の手を押し上げるように、次第にだがローナの頭も上がってきた。それに合わせてローナの頭から手を離す。

「本当に助かる……。ありがとう」

不覚にも、目尻に涙を溜めながら笑うローナにドキッとしてしまったことは己の内に秘めておくことにした。

俺は目尻に見えた涙には気が付かない振りをして、話を振る。

「それで、ローナ、気になったことがあるんだがいいか?」

「ああ!何でも聞いとくれ」

ローナは目をゴシゴシと擦り最初と同じように振る舞う。

「それじゃあ単刀直入に聞くな」

ウムと元気に返事をし俺の質問を待ってくれるローナ。

「ローナのやった召喚って異世界から人を喚ぶ勇者召喚と違って、この世界から人を喚ぶ限定的な召喚だよね?」

そんなローナもさすがに固まってしまうような質問を俺は投げかけたようだった。

読んでくださりありがとうございました。できるだけ早く更新するつもりです。

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