入学式が終わって……
いよいよ学園生活が始まります。
次の日は入学式だった。
シロツメ寮以外からも新入生が集まっているのでかなりの人数になっている。
学園の中でもかなり大きな講堂で入学式が執り行われる。
俺達が通うのは学園都市の中に存在するうちの一つ、アイザック校中等部だった。
ヴァルもアイザック校に通う生徒で、俺の隣に座っている。
アイザック校の校長であるシノメン・マテリアが歓迎の挨拶をしてくれて、それから入学式は終了となった。
それぞれのクラスに入ることになるが、実はこのクラスそのものにはあまり意味がなかったりする。
一応生徒を分ける枠組みというだけであり、一緒に授業を受ける訳ではないからだ。
それぞれが自分の専攻する授業に向かうので、この教室に戻ってくるのは授業が終わってからということになるだろう。
「入学式眠かったなー……」
「言うなよそれを」
ヴァルがあくびをかみ殺しながら言うので、とりあえず注意しておいた。
……確かに眠かったけどさ。
俺達がいるのは一年のCクラスで、他に三十人ほど生徒が入っている。
剣士を目指す生徒もいれば、魔法使いを目指す生徒もいる。
アイザック校は戦闘スキルを教える学校なので、ここにいる生徒のほとんどは戦闘職を目指しているのだろう。
入学式は午前中に終わって休憩時間を挟み、午後からはそれぞれの授業に向かうことになる。
俺とヴァルは最初に剣術の授業を受けることになった。
「ふっふっふ。さっそく試させてもらうぜー」
「……いいけどさ。でも最初は剣の振り方とか、そういうのから入るんじゃないかな」
剣士を目指していても今までまったく剣を握ったこともない生徒もいる筈だ。
そんな生徒達と一緒に授業を受けるのだから、初歩の初歩から付き合うことになる覚悟はしておいた方がいい。
「それは問題ない。最初に適性チェックが行われるから」
「適性チェック? なんだそれ」
「お前何にも知らないんだな」
呆れた目を向けてくるヴァル。
「うぅ。悪かったな……」
大して調べないままここに来てしまったのは否めないので、小さくなるしかない。
この学校の実績と、ワールド・エンドに自由に出入りできるという特権が目当てで入ってきたので、詳しい教育方針などは調べなかったのだ。
「ここは完全実力主義なんだよ。授業にだってランクがある。高度な技術を持った生徒なら更に高度な授業を受けられるように配慮してもらえるんだよ。初心者コース、中級者コース、上級者コース、みたいな感じでな。で、そのコース分けをするのが最初の適性チェックって訳だ」
「な、なるほど……」
確かにここに入ってくる生徒の実力はバラバラだ。
俺は多分上級者の方に入るとは思うけど、他の生徒の実力までは分からない。
ヴァルだって大きな口を叩くのだから上級者コースに入る自信はあるのだろう。
「ヴァルは上級者コースを目指してるのか?」
「目指してるんじゃなくて確信してるんだよ」
「………………」
すっげー自信。
そんなに腕が立つようには見えないんだけどなぁ。
まあ見た目で判断するのは危険だけどさ。
「……お前、今オレのことあんまり強くなさそうって思っただろ」
じとーっと俺を睨むヴァル。
鋭いヤツだな。
「うん」
そして俺も即答。
「うん、じゃねえだろっ! そこはもっと気まずくなったり慌てて否定したりするとこだろっ!!」
そして更に怒らせてしまう。
そんなパターン通りの反応を期待されても困るのだが。
俺は思った通りのことしか言えないし、腹芸は苦手なんだぞ。
「そんなに怒るなら実戦で実力を証明すればいいじゃないか」
「てめぇ……。絶対ぎったんぎったんにしてやる……」
「………………」
おかしいなぁ。
何故か喋るほどに怒らせている気がするぞ。
怒らせたい訳じゃないんだけどな。
少なくとも、見た目的にはあんまり強くなさそうだし。
それにある程度感じる実力というのもある。
威圧感、というべきか。
ローゼからはものすっごいプレッシャーを受けるし、見た目は美少女でも中身はとんでもなく強いというのはありありと分かるのだ。
しかしヴァルからはそこまでのプレッシャーは感じない。
戦えば多分、俺の方が強いと思う。
「まあ模擬戦で戦えば分かることだし、そこまで怒らなくてもいいじゃないか」
「そののらりくらしした態度がムカつくなっ!」
「うぅ~。どうしろって言うんだよ……」
どうやらヴァルはかなりの負けず嫌いらしい。
面倒な友人を持ってしまったものだとため息をつく。
この様子だとたとえ俺が勝ったとしても悔しくて余計に怒らせるだけじゃないだろうか……と不安にもなる。
もちろん負けて悔しがるのは正しいし、俺だってローゼに勝てないことは悔しく思っているし、気持ちはよく分かるけど。
しかしそれで八つ当たりのように怒られたのではたまったものではないというか。
……ヒロインまだ出ません。
いや、メインはお姉ちゃんかもしれないけど。