朝風呂ジャスティス
次の日、出発は大いに遅れた。
なぜなら……
「朝風呂ですわっ!」
「ですねっ!」
と、女の子二人が力説したからだ。
お風呂の味を占めてしまったらしい彼女たちは、朝風呂に入ると断言したのだ。
おかげで彼女たちが出るまで待つ羽目になる。
「……分からん。女の子の風呂好きって、分からん」
ヴァルが理解不能なモノを見るような目で外に視線を移す。
確かに理解は出来ないけど、女の子を理解しようというのがそもそも男にとって不遜なのだ。
「あんまり深く考えない方がいいぞ。自分とは違う存在なんだから、考え方もこだわりも違って当然だし」
「そりゃそうだけどさぁ……。風呂なんて昨日入ったばっかりじゃん。あれから数時間しか経っていないのに、どうしてまた入りたがるんだ?」
「さあな。そういうものだとしか言いようがない」
「女の子って謎だ……」
「その謎を受け入れないと彼女が出来たときに喧嘩する羽目になるぞ」
「それは困る!」
「彼女は欲しいのか」
「当たり前じゃんっ! 思春期の男として当然じゃんっ!」
「当然か……」
いいなぁ、こういうの。
俺もそういうことで一喜一憂出来たらいいんだけど。
「なんだよ~。フェリクスは彼女欲しくないのかよ?」
「……欲しくないとは言わないけど、俺は一応婚約者がいるし」
「なにーっ!」
がばっと身を乗り出して迫ってくるヴァル。
ぎゃあああっ!
近い近い近いっ!
男はそれ以上近づくなっ!
「婚約者っ!? マジでっ!?」
「う……うん……。まだ本決まりじゃないけど、一応……」
「うわ……マジかよ……誰なんだ?」
「ひ、秘密……」
銀閃の騎士ローゼリッタ・シルヴィスなんて言おうものなら大変なことになる。
「だから俺が彼女欲しいとか考えるのは、その人に対して不誠実かなーって思うんだよ。だから今のところは欲しいとは思わないかな……」
「ふうん。婚約者って美人?」
「まあ、美人かな」
俺にとっては世界で一番美人だ。
「今度紹介しろよ」
「絶対やだ」
「何でだよっ!」
「何ででもっ!」
他の相手ならまだしもローゼは紹介できないって。
大変なことになるのが目に見えてるし。
「……けち」
「けちで結構。こっちにも事情があるんだよ」
「ふーん。ま、いっか。フェリクスが結婚する時には嫌でも分かるわけだし」
「………………」
俺はそれを破棄したくて頑張ってるんだけどなぁ。
それも言えないし。
やれやれ。
友達に秘密を持つっていうのは思ったよりも居心地が悪い気分にさせられる。
なんだか裏切っているような気持ちになるのだ。
「ふう。さっぱりしましたわ」
「朝風呂最高ですぅ~」
そんな会話をしているうちにアリシャ達が戻ってきた。
二人ともすごくご満悦だ。
「じゃあそろそろ出発するか? 今日は北の方を探索してみようと思ってるんだけど」
「その前に行ってみたい場所がありますの」
「私もです」
「?」
「どこに?」
「ここですわ」
アリシャが地図を指さす。
ここからそれほど離れていない場所だった。
徒歩で三十分ぐらいだろうか。
しかし特に何もない場所のように思えるんだけどなぁ。
地図にはそこで出くわすモンスターや採れる素材のことも細かく記載されているが、ここは特に何もない。
「どうしてここに行きたいんだ?」
「ただの好奇心ですわ。お風呂に入ってぼーっとしているときに見えたのですけど、ずっと遠くに青い石が見えましたのよ」
「青い石?」
「すごく大きな、恐らくは何らかの遺跡だと思うのですけれど、とにかく魔法的な意味合いが何かあるような気がして。強いて言うなら好奇心ですわね」
「なるほど。魔法使いとしての好奇心か」
「フェリクスだって魔法使いなんだから興味はあるでしょう?」
「うーん。俺は戦闘能力としての魔法技術を磨いているつもりだから、そういう研究じみたことにはあんまり興味がないんだよなぁ」
「む……。魔法使いは探求者でもあるんですのよ。貴方はこのわたくしが認めたライバルなのですから、そのような低い意識では困りますわ」
「……そんなこと言われても」
研究方面でライバル扱いされても困るんだけどな。
そもそも俺とアリシャじゃ目的意識が違うし。
アリシャは魔法使いとして自身を完成させること、更なる高見を目指すことを目標としているのかもしれないが、俺は戦闘能力の一つとして魔法技術を磨いているだけなのだ。
新しい魔法とか、遺跡の研究とか、そういうのにはあんまり興味がない。
デスクワークよりもガチンコ勝負の腕を磨きたい。
「でもすっごく綺麗な石だったから、私も近くで見てみたいです」
何故かリオまで乗り気だ。
毒薬関係以外でここまでうきうきしたリオを見るのは珍しい。
「……フェリクスさん。今何か酷いこと考えてませんでした?」
「え? か、考えてないよ」
「むー……」
「ほ、ほんとだってば……」
鋭い……
っていうか酷いことは考えていないと思うんだけどな。
むしろ本当のことというか……
でもそれを言ったら怒るんだろうなぁ。
女の子を怒らせるのは遠慮したい。
リオのような怖さを持っている女の子ならなおさらだ。
「ま、まあいいんじゃないか? 予定が押しているわけでもないし、観光気分で行ってみようぜ」
気まずくなっているところをヴァルがとりなしてくれた。
ほっ……
「では決まりですわね」
「楽しみです~」
そこに行けると分かったアリシャとリオは二人ではしゃいでいる。
さっきまで俺を追いつめていたことなど綺麗さっぱり忘れているようで何よりだ。
このまま思い出さないでください。
お風呂~。
お風呂~(^_^)
ロリ美少女達のお風呂~(*^▽^*)




