女の子のジャスティスはお風呂!
十分に睡眠をとった俺たちはいよいよ第二層に突入する。
一層のモンスターを一通り相手取ったが、それほど苦労することはなかった。
この調子なら二層に行っても大丈夫だろうという全員の判断だ。
「二層には黒大蛇がいるはずですわ。あれの鱗は魔法具や薬のいい材料になるんですのよ。しっかりと素材採取をしないと」
魔法関連のアイテムには並々ならぬ関心を寄せるアリシャ。
「黒大蛇は毒も持ってるんです。出来ればそっちも採取したいです~。新しい調合に役立ちそうですし~」
毒薬に目がないリオがはにかみながら続ける。
笑顔が可愛いけど言ってることはとても恐ろしい。
一層では素材採取が出来るモンスターはほとんどいないけど、二層では逆に素材採取が可能なモンスターばっかりだ。
黒大蛇、鉄翼蝙蝠、魔牙狼など。
それぞれが鱗や毒、翼や牙などの素材を得ることが出来る。
それらは売ってもいい金になるし、自分たちで実験の材料にするなり、アイテム調合に利用するなり、色々と使用できる。
ワールド・エンドに来ると魂石だけではなく多くのアイテムが手に入るので、数日の探索だけでもかなりの金になる。
おかげでアカデミーアの学生、とくにワールド・エンドによくやってくる学生は、親の援助をほとんど必要としていない。
それどころか在学中にひと財産稼ぐ生徒もいるぐらいだ。
俺たちも今回だけで一般家庭が消費する一ヶ月の生活費ぐらいは稼いでいる
十三歳のお小遣いにしては十分すぎるだろう。
まあ装備を調えたり消耗品を買い込んだりで結局すぐに使ってしまうのだけれど。
逆に本格的に戦う為にはこの程度では足りない、とも言える。
レベルの高い装備はとても高価だし、それにアリシャやリオのように自分でアイテムを調合しようとすればかなりの費用がかかってしまう。
金に困らないアリシャならまだしも、自活しなければならないリオには今後かなり厳しいことになるだろう。
「でも素材採取系モンスターは倒し方に気をつけないといけないのが面倒だよなぁ」
「それは言えてる。でもそれはそれで技術を磨く練習になるんじゃないか?」
「それもそっか」
剣術バカのヴァルはそれで納得したようだ。
もとより俺は技術を磨くことに熱心なので異論はない。
「じゃあ第二層にれっつらごー」
「「「おー」」」
ライセンスカードをかざしてから第二層への封印を解く。
そして第二層に到着した俺たちは素材採取系モンスターと切った張ったついでに魔法ぶっ放しの毒刃攻撃で無双しまくったのだった。
やはり俺たちのレベルならこれぐらい大丈夫ということらしい。
むしろ倒すよりもその後の素材採取の方に時間がかかったぐらいだ。
「うわ……この鱗取りづらい……もう一気にやっちまおおうぜ」
面倒くさがりなヴァルが大ざっぱに鱗を一気剥ぎしようとするのだが、
「やめなさいっ! 罅割れた鱗は使い物にならないんですのよっ!」
「げ、マジ!?」
「当たり前ですわっ! 全部とは言わないけど、大漁に素材を無駄にしたら許しませんわよっ!」
「うげげ……分かったよぅ……」
金持ちでもモノを無駄にすることは許せないらしいアリシャは異様な迫力でヴァルを威圧していた。
「えへへ~。あっちもこっちも~」
「………………」
そして俺とリオは黒大蛇の毒嚢採取だ。
うかつに触れればこっちが毒されてしまうので、俺はしっかりと保護手袋を填めている。
リオもそうしているのだが、表情がうきうきしているのがすごく怖い。
この毒嚢は山分け対象から外そう。
こんな物騒なモノはなかなか買い手もつかないし、全部リオに使ってもらおう。
本人は大喜びするだろうし。
「リオ。その毒嚢だけは自分で持ち歩きなさい。私の鞄にそんな物騒なモノを入れる訳にはいきませんわ」
「あ、はい。もちろんですよアリシャさん。というか肌身離さず持っていたいぐらいです~」
「………………」
「………………」
「………………」
怖いなぁ。
この無邪気なドス黒さがたまらなく恐ろしいんだけどなぁ。
本人がいい子なのが唯一の救いか?
他にも第二層をうろつきながらモンスターの相手をしたり、素材採取をしたりしているうちに夕方になった。
そろそろ野営地を決めようかと地図を確認する。
「龍の森。ここがいいかもな。近いし」
その昔、古代龍が棲んでいたと言われる森で、魔力に満ちた場所だった。
結界もその魔力を利用して構築されている。
「よーし。じゃあここにしようか」
「確かに近い方がいいですわね。川が近くにないから昨日みたいなことは出来ないでしょうけど」
「その分屋根のある場所で寝られるみたいだぞ」
「「えっ!?」」
地図を確認している俺に女の子二人がすごい勢いで食いつく。
「うわっ!」
女の子二人に押し倒されそうな勢いで迫られて、思わず身を引いてしまう。
……だって二人ともすごい表情してるし。
怖いというか……真剣というか……
屋根付きってそんなに魅力的なの?
確かに雨風は凌げるけど……
「ど、どうしたんだ? 二人とも……」
「屋根がある……と言いましたわね?」
じろり、と睨みつけてくるアリシャ。
「い、言ったけど……」
「ならお風呂は?」
「お風呂はありますか!?」
「……あ、あると思うけど」
こういう基地みたいな場所には大抵風呂もついている。
川が近くにないから水は通っていないみたいだけど、そこは魔法でどうにかなる。
浴槽さえあれば風呂はどうとでもなる。
水の魔法と炎熱魔法で一気に準備完了だ。
「でかしましたわっ!」
「お風呂に入れます~!」
きゃっきゃとはしゃぐ女子二人。
「………………」
屋根付きよりも風呂付きという方が重要だったらしい。
やっぱり女の子ってそういうのが気になるのか……
「わっかんねえなぁ。一日二日ぐらい風呂に入らなくったって別にいいじゃないか」
女心の分からないヴァルがぼやく。
「よくありませんわよっ! お風呂は一日一回は最低限ですわっ! わたくし朝から自分の体臭や汚れが気になって仕方がありませんでしたしっ!」
「ですよねっ! 私もやっぱりお風呂に入れないと落ち着きませんっ!」
「無神経な男の適当さと一緒にしないでもらいたいですわ。こちらはレディーですのよ」
「無神経って……」
無神経呼ばわりされたヴァルがむくれる。
女の子にそういうことを言われるのはやっぱり屈辱なのだろう。
けど女の子相手に風呂を一日二日ぐらい、と堂々と言ってしまうあたり、否定は出来ないよなぁ。
「とにかく風呂はあるみたいだし、早めに向かおうか」
「賛成ですわっ!」
「早く行きましょうっ!」
「………………」
女子二人、テンション高っ!
はしゃぎながら足早に進むアリシャたち。
俺たちは置いて行かれないようについて行くので精一杯だった。
こういう時の女子には別腹ならぬ別体力というものが存在するらしい。
少年少女には譲れないジャスティスがあるのです(*^▽^*)




