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いとしのマンドラゴラちゃん❤

 当面、魂石はアリシャに預かってもらうことにした。

 魔法鞄を持っているアリシャが適任だったからだ。

 アカデミーアに戻ってから山分けをすればいいし。

「まったく。女の子に荷物持ちをさせるなんていい度胸をしていますわね」

 アリシャはちょっとだけ怒っていたが、しかしそれほど嫌がっている訳ではないらしい。

 口元はちょっと笑っている。


 それからしばらくワールド・エンド探索を続ける。

 途中でモンスターに襲われることも多かったが、俺たち四人の敵ではなかった。

 やはりD級ライセンスで立ち入れる場所ぐらいなら余裕でこなせるらしい、と確信する。

 ワールド・エンドには地上にはない薬草や特殊な鉱石などが存在し、素材集めにも気合いが入る。

「あ、見てくださいフェリクスさん。これマンドラゴラちゃんですよっ!」

「……マンドラゴラ……ちゃん?」

 いや、マンドラゴラは知っているけどね。

 まさかちゃんづけする女の子がいるとは思わなかった。

 自生しているマンドラゴラ(ちゃん)に大はしゃぎするリオ。

 魔法薬の材料になる貴重な植物だが、あの様子だと毒薬の材料にもなるのかもしれない。

「あはは~。可愛いですねぇ~。引っこ抜いてもいいですか?」

「ちょっと待てーっ! 耳栓もなしにそんなことされてたまるかっ!」

 マンドラゴラは引っこ抜くと悲鳴を上げる。

 しかもその悲鳴は聞いた者に大ダメージを与えるのだ。

 耐性のない人間が聞いたら即死してしまうレベルの悲鳴だ。

 少しでも魔法耐性があれば死ぬことはない、と言われている。

 あれは一種の音波魔法なのだと本で読んだことがある。

 俺たちはある程度の魔法耐性を持っているから死ぬことはないが、それでも備えもなしにそんなモノを食らってしまったらダメージ甚大間違いなし。

 最低でも耳栓ぐらいはつけておく必要がある。

 慌てて鞄の中から耳栓を取り出す。

 ヴァルもアリシャも慌てて装備する。

 マンドラゴラそのものを採取することに依存はないからだ。

「よし、準備完了」

「ーーーー」

「ーーーー」

 高性能の耳栓なので、ヴァルとアリシャが何かを言っても聞き取れなくなってしまっている。

 まあ俺と同じようなことを言ったのだろう、と推測しておく。

「おーい。リオも早く耳栓しろよ。危ないぞ」

 というか引っこ抜くリオが一番危ないと思うのだが、両手でマンドラゴラを掴んだままにこにこ笑っている。

「ーーーー」

 何を言っているのか聞き取れないが、そのままひらひらと手を振って、マンドラゴラを引っこ抜いてしまった。

「「「っ!!???」」」


 ひぎぇあああああぎゅううううう~~~っ!!


 耳栓越しでもわずかに届く怪音波。

 マンドラゴラの悲鳴だ。

 これだけでも不快なのに、リオは耳栓なしでそれを聞いてしまったのだ。

 悲鳴が収まるのを待ってから耳栓を外す。

「おい! 大丈夫なのかリオっ!」

 リオに駆け寄って無事を確かめようとするのだが……

「へ?」

「えへへへ~」

 そこには何故かうっとりした表情のリオがいた。

 マンドラゴラを胸に抱えて、うっとりまったりご満悦の表情だ。

「あの……リオ……?」

 ダメージが変な方向にいってしまったのだろうか……と首を傾げるのだが……

「マンドラゴラちゃんの悲鳴、やっぱり素敵です~」

「………………」

 ひぎぃ、うぎぃ、と小さな悲鳴を上げるマンドラゴラに頬ずりするリオ。

 気のせいかもしれないけど、マンドラゴラがいやがっているようにも見える。

 心底愛しいものにするように、その表情は愛情に満ちている。

「だ、大丈夫なのか……?」

「えへへ。大丈夫ですよ~。私、マンドラゴラちゃんの悲鳴が大好きなんですぅ」

「………………」

 そんなことを嬉しそうに言うなよっ!

 やっぱりこの子怖いよっ!

「その……ダメージは?」

「ないですよ~。小さい頃から何度も聞かされてますから~。すっかり耐性が出来ちゃったみたいで」

「………………」

 家庭環境が酷すぎる。

「最初は死にそうだったんですけど、何度も何度も聞いているうちに可愛いなぁ、素敵だなぁ、とうっとりするようになって」

「………………」

 なるなよっ!

 しかしそれもリオの自衛手段の結果かと思うと責めるのも酷だ。

「というわけで、私は平気です。心配してくれてありがとうです」

「いや……無事ならいいけど……」

 安心したけどドン引きレベルもさらに上がったよ……

 ヴァルとアリシャも真っ青になりながら視線を逸らしている。

 深く関わると怖いことになりそうだから、必死で現実逃避をしているのだろう。

 ヴァルはともかく、あの気位の高いアリシャお嬢様をも震え上がらせるとは、恐るべし。

「せっかくだからこれ、全部抜いちゃっていいですか?」

「ああ……まあいいけど……」

「アリシャさん。後で魔法鞄に入れてもらってもいいですか~?」

「………………」

 青くなりながらもこくこくと頷くアリシャ。

 さすがのアリシャも今のリオに逆らう度胸はないらしい。

「じゃあ引っこ抜いちゃいますね~。せーのっ!」

「ーーっ!!」

 いきなりだったので再び耳栓をする俺たち。

 ギリギリで間に合ったようで、くぐもった悲鳴が耳栓越しに聞こえてくる。

「~~♪ ~~♪」

 かれこれ一時間ほど、リオはマンドラゴラ引っこ抜き作業に徹するのだった。

 自生していたのは七十本ほどで、俺たちが手伝えばもう少し早く終わったのかもしれない。

 しかしとてもじゃないが今のリオに近づく度胸はなかった。

 そしてあれだけうっとりとマンドラゴラを引っこ抜くリオの楽しみを奪う度胸もなかった。

 俺たちは青い顔でそれを眺めている以外、出来ることは何もなかった。

 ……情けないと言うなかれ。

 怖いモノは怖いのだ。


 そして一時間後……

「えへへ~。大漁ですね~」

「そうだな……」

「あははははは……」

「ああ……わたくしの魔法鞄がゲテモノに圧迫されていきますわ……」

 ……確かにマンドラゴラはゲテモノだけど、売ればかなりの金額になるんだからそこまで嫌がらなくてもいいんじゃないか?

ああヤンデレちゃんが怖い方向に成長していく……( ̄。 ̄;)

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