男達の考察~小説を書くという事について
西暦二〇〇X年、世界は火の海に包まれた。とある国の内乱をきっかけに戦火は世界中に飛び火し、あっという間に火の手は広がった。それから一〇〇年余りの時が経ち、世界は平穏を取り戻していた。技術は格段に発達し、バーチャルリアリティを始めとする最先端科学から『魔法』としか表せないようなトンデモ科学までそれこそ無数に存在する。そしてそこに、一人の少年がいた。『あらゆる異能を打ち消す』という、最先端科学でもトンデモ科学でも解明できない力を宿した少年と、自称魔術師を名乗る美少女シスターが出会う時、物語は始まる。東京・池袋を舞台に外道なクラスメイトが集い、少年はその中に己の正義とオパーイを―――
「待て待て待て待て」
「何だよ」
「一つツッコませろ。それ何て電○文庫刊行?」
「失敬な。どこからどう見ても俺のオリジナルだろうが」
「ツッコむのは一つと言ったからな俺は。もうこれ以上は何も言わんぞ」
「いやツッコめよ! 前半やけに火が多くねとか色々ツッコミ所あんだろ!」
「自覚してんなら修正しろよ。―――で、これは何だよ?」
「いやあ、俺もそろそろ小説家デビューしてみようかと思ってさ。とりあえず設定を書き出してみた訳よ」
「死ね。あとそのドヤ顔ウザいから止めろ」
「順番逆じゃね? あと俺そろそろお前の扱いに泣いてもいいよな?」
「あのな、言っとくが小説を書くってのはそんな楽な事じゃねぇんだよ。現に締め切りやエタリで苦しんでる作家が何人いると思ってる?」
「あーな。何とかって小説投稿サイトでも大量に溢れ返ってるしよ。何で最後まで書き切らねぇんだよ根性無えな」
「そう言ってやるな、プロでもそういう事はままあるんだ。ほら、ちょっと前に2chで自演して身バレしてクッソ叩かれた奴とか」
「それはもう許してやれよ……。ほら、新刊も出た所だしさ」
「あるいは散々締め切りぶっちぎった挙げ句にレーベル移籍という名の厄介払いされたアイツ」
「それは絶対に許さない」
「あとほら、ジ○ンプでいう所の冨がs———」
「それ以上言ったらお前ホントに消されるぞ」
「……ゴホン、まぁとにかくだ。俺が言いたいのは小説を書くってのはそんなに簡単な事じゃねぇんだよ」
「随分と真面目な顔だな。実体験か? お?」
「ぶち殺すぞコラ。大口叩くならまず長編小説一本でも良いから書き上げて来い」
「お前ってよく分かんねぇトコで真剣になるけど、今回はかつて無いぐらいの真剣具合だな」
「俺は別に、エタる事が悪いって言ってる訳じゃねぇ。さっき上げた奴らみたいなプロと呼ばれる人間でも、『無い事は無い』レベルで存在してるんだ。アマチュアなら尚更だろ」
「いやでもほら、ほぼ毎月のペースで出版する奴らもいるじゃん。鎌池○馬とか川○稔とか」
「あれはアイツらの頭がおかしい。常人と一緒にするな。てか話が逸れたじゃねぇか」
「人のせいにすんなよ」
「まぁとにかく、そういうプロですらやらかすレベルの話なんだ。アマチュアの作品の一つや二つ、寛大な目で見守ってやろうぜ?」
「確かに正論っちゃ正論だが、さっきからお前妙にエタリ作家の肩持つな」
「勘違いすんなよ? 俺が言ってるのは『プロもやる事なんだからしょうがない』じゃあない。『プロもやるほどしょうがない事なんだ』と思えって事だ」
「何か怪しいなコイツ」
「リアルが忙しくて。アイデアが思い浮かばなくて。何かしらやむを得ない事情があるんだよ。ソイツらだって、好きでエタらせた訳じゃないんだよ……!」
「お、見つけた。えーとなになに? 『俺は極普通の高校生。両親は海外に出張中で、俺は妹と二人暮らしだ。気が置けない仲の親友とバカやって過ごしていたが、ある日突然現れた美少女に世界を救ってくれと頼まれる。そして俺の中に眠っていた力「暗黒皇帝」が覚醒し、最愛の妹を守るため———』ダメだ、これ以上はイタ過ぎて読めん……っ!」
「テメッ、何人のパソコン勝手に漁ってんだ!」
「ロック掛けないお前が悪い。しかもこれ、一話しか書いてねぇし。ギャハハッ、ヤベェ、超腹痛え。これはっ、ギャハハハハハッ」
「よぉし戦争だ。五体満足で帰れると思うなよ」
「暗黒皇帝さんチィーッス。何すか、邪王が炎殺して黒龍っちゃう波でも出すんですかぁ〜?」
「……マジで殺す」
終
作中にて特定個人を中傷する内容の描写がございますが、決して当該人物を非難している訳ではない事をここにお断りさせていただきます。
作者は神メモもISもハンタも好きです。