定価800円なり(読了1分)
「これっ、俺の想いを込めた三年間の集大成……、受け取ってくださいっ!!」
彼が頬を少しだけ朱に染め、私の目の前に手紙を突き出す。
私の頬も朱に染まっているのが自覚できる。少しだけ震える手でそっと手紙を受け取る。
「中を見ても?」
私が問いかけると、彼は後ろを向いて答えてくれた。
「返事、いつまででも待ってる」
「えっ!?」
彼は言い終わるとそのまま駆け出して行ってしまった。
きっと恥ずかしかったんだろう。シャイな彼が精一杯の勇気を振り絞って書いてくれた手紙……。ただそう考えるだけで凄く嬉しくなってしまう。
私ははやる心を抑えながら、中の手紙を傷つけないようゆっくりと封を開く。
淡い桜色の封筒を開くと、中には四つ折りにされた一枚の白い紙が入っていた。
高鳴る鼓動と共に彼との三年間の思い出が脳裏に蘇る。
震える手で白い紙を取り出し、ゆっくりと紙を開く。
白い紙に描かれていたのは、印刷された一枚の写真と大きく、力強く書かれた一文。
正直、意味が分からなかった。顔を上げて彼の走って行った方向を見るけれどもすでに遠く離れ、声をかけても届かない距離だ。
けれど聞きたい。声をかけたい。「どうしてなの」と叫びたい。
だって……、何度見ても同じ……、白い紙に書かれた文面。
『冷やし中華始めました』
この作品は作家仲間でのテーマ短編小説です。みやさん、冷さん、秋さんご参加させていただき誠にありが……、あっ!? みやさん殴らないで、冷さん蹴らないで、秋さんぐりぐりしないでぇ〜っ。