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プロローグ

初書き修正中…


血の色に染まった月が、街の上に浮かんでいた。

「なんか今日、ブラッディムーンみたい。」

口にして、自分で笑った。──縁起でもない。

そう呟いて、夜の公園へ足を踏み入れた。



〇プロローグ



街灯の切れた並木道を急ぎ足で歩いていく。

その瞬間、草むらから手が伸びた。

次の呼吸より早く、腕を引き寄せられる。

地面に叩きつけられ、身体を抑え込まれた。


「離せ、このバイ菌。」

反射的に吐き捨てた。

「なに? 触りたいの? マネキンでも撫でてろよ。」

思ってた以上に声が冷静で、自分でもちょっと怖かった。


相手が顔を歪めた瞬間、拳が飛んできた。

鼻の奥が熱い。血の味。痛み。

……いや、これ、痛いより恥ずかしいな。ニュースになったら親が泣くやつ。


男がまた身体に手を伸ばしてきたので、拳を強く突き出した。

悲鳴と共に男がうずくまる。

鈍い音。情けない悲鳴。ざまあみろ。


慌てて立ち上がろうとするが、こっちも足が震えてる。

アドレナリンって、万能じゃないんだな。


そんなことを考えた瞬間、男がナイフを取り出した。

刃が月の光を反射して、嫌にきれいだった。


「ちょ、道具持ち出すとか反則……」

声が最後まで出なかった。

冷たい痛みが腹に走って、息が詰まる。


男は慌てたように後ずさり、足音を響かせて逃げていった。

残されたのは、私と血の匂いと、赤い月だけ。


(うわ、やられた。

 でも、まあ……未遂ってことでいいか。

 生きた証としては、ちょっと派手すぎたけど。)


笑ったつもりが、咳き込みに変わった。

喉の奥が鉄みたいに苦い。


体が冷えていく。

指先がしびれる。

目の端に映る月が、やけに近い。


……死ぬって、もっと劇的かと思ってた。

BGMもなし。助けもなし。

あるのは静けさと、少しの後悔。

寒さが骨まで届く。


思考は勝手に走馬灯みたいに過去を引っ張り出した。

小学校のくだらない恥、兄の笑い声、母の台所の匂い。

意味のない記憶が、無意味に温かい。


「お母さん。今日の月、赤いね。

 笑っちゃうくらい、きれいだよ。」


息が漏れた。

空が溶けるように滲んで、

音もなく、世界が消えた。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

どうでしたか?

不定期更新ですが、これからもお付き合いよろしくお願いします。


彼女がこれからどう生きるのか見守っていてくれると嬉しいです。

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