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第二十話 哀しい人



「…あなたは…、誰なんですか…?」

 明治が、やっとそれだけ呟くと、ずっと明治の頭を抱いていた手が離れて水城の顔が月明かりの下あらわになる。いつのまにか眼鏡をとったその顔は、じっと明治を見つめていた。

「…………」

「……あなたは……、」

 明治の顔が、哀しげに歪む。

 冷たい、氷のような水城の手をとって、明治は言葉を紡いだ。

 今なら、

 今ならわかる。どうして自分にわかってしまうのか解らないけれど。

「…あなたは、…死んでいるんでしょう…?」

「……うん」

「っ、どうして! どうして…あなたは今も泣くんですか…? そんな…死んでまで…」

 実際、泣いているのは水城ではない。他でもない自分だ。しかし、この涙は水城のものなのだと、今ならわかる。

 水城の傍にいると、彼の哀しみが溢れてきてこの体が涙を流す。

 体を持たない、彼の代わりに。

「…っ」

 明治は、もう水城に何を言ったらいいのかわからなかった。

 ただ、今は水城の哀しみに裂かれるように胸が痛んで、切なかった。

「…君は…、優しいね…」

 そっと目を閉じ、何かを決意したかのように水城は口を開いた。


「僕…、いや、俺はかつてこの地に根付いていた大地主、水城家の一人息子だった…」


 そして彼は、月の下で遠い昔の出来事を語った。

 幸せで、不幸せで。

 永遠で、儚い。

 在りし日のことを…。





 また短いです。

 水城に関しては、うすうす気づいていた方もいたかと…。

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