第1話〜遭遇
突如として我が家に逃げ込んできたのは、ボロボロになった一人の少年。
どこか見覚えのあるような、不思議な違和感を抱えながら、彼の「おばさん」として接することになった私の日常は、ここから大きく動き出します。
『明日から来た私』、第1話をお届けします。どうぞお楽しみください!
ソファに横たわりながら、ぼんやりとスマホで今日のニュースを見ていた昼下がりの出来事である。
突然、激しくドアチャイムが鳴らされるのを聞いた。
━━こんな時間に誰だろう?何の用かしら?
インターホンが再び乱暴に鳴り響き、続いてドアノブがガタガタと強く回された。
正直私は、恐怖を感じた。何の腕力もない専業主婦である私がもしもの時に抵抗する術はないように思われたのだ。しかし、こんな声がドアの向こうから聞こえてきた。
「お願いです、開けてください!助けて!」
悲鳴に近い切迫した声が聞こえ、思わず鍵を解除して扉を少しだけ開ける。すかさず滑り込んできたのは、肩を大きく上下させ息を荒らげた小学6年生くらいの男の子だった。
ビショビショになったTシャツと擦りむけた膝。少年は恐怖に怯える目で後ろの廊下を振り返りながら、すがりつくようにこちらを見上げた。
「追われてるんです……匿ってください!」
少年の汚れのない真摯な瞳に私はこの子の言うことは信じなければならない、と心に誓ったのであった。
「まあ、ともかく中へお入りなさい。追われているのでしょう?」
自分自身でも意外な言葉が出ていた。
「有り難う!おばさん」
少年は少し怯えたように入ってきた。玄関で脱いだ靴も、汚れと傷がごちゃ混ぜのような体をなしていた。
━━やはりこの子の言う事には信憑性があるわ
私は思った。
リヴィングに招き入れ、どこでもいいから
お座りなさい、と告げたが、
「僕の服は皆汚れているのでこんな綺麗な椅子に座ることはできません」
と遠慮してくるのだ。
「まあ」
私は感嘆の声をあげそうになった。
中学一年生の息子の部屋に向かい、手頃な服を見繕って、少年の前に差し出した。
「うちの息子のだけど、お着替えなさい。御飯はちゃんと食べているのかしら?お風呂も入れて貰ってる?」
声がなんだかぎこちなくなる。それにしても、まるで仕事から帰宅した夫に対してかわす言葉のようだった。
「昼御飯御飯はもう食べました。お風呂もすましてあります。それよりお洋服までお貸しくださいまして誠に有り難う御座いました」
少年は頭をさげた。
「ところでお名前は、おうちはどちら?」
「名前は鈴木太郎です。うちは……」
【つづく━━第2話以降をお楽しみに】
本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。
日常の静寂が突如として破られ、見知らぬ少年を匿うことになった主婦の焦燥感と緊張感を描いた緊迫のサスペンスです。自分には何の力もないと自覚しながらも、少年のまっすぐな瞳を信じて保護しようとする主人公の葛藤とささやかな勇気を感じていただければ幸いです。
男の脅迫、そして少年の抱える「重い秘密」とは何なのか。果たして主人公は少年を守り抜くことができるのか――。物語はここからさらに加速していきます。
二人の運命と隠された真実が明かされる次回展開も、ぜひ楽しみにお待ちください!




