表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐びより  作者: もってぃ
第2幕
PR
14/25

13


「──したらそこで、葉山くんとキスでもした?」


 結沙が茜に云った。

 茜の顔がばね仕掛けのような勢いで結沙に向く──。


「え! な、なんで?」


 顔を朱くする茜は、含羞を帯びたあどけない少女そのものだ。

 結沙はそんな茜に、にやにやと揶揄うような目線を投げ掛ける。


「なぁんで今更、カマトトぶる?」

「……ぶってないもん!」


 二人がそんなやり取りをしていると、県道の先の方から固まって歩いてくる男子の集団が目に入って、結沙がぎくりとする。近くの男子校の生徒達だった。


 ──コイツらしつこく茜に言い寄ってたっけ……。


 (たち)の悪い連中で、いい噂を聞かない。よりによってこんなとこで……。

 結沙は嫌な感じに胸が高鳴った。

 このまま何事もなく通り過ぎられますように……。茜も目線を下げ、目を合わせないようにしている。


 ──けれど……、



「これはこれは、いいところで会えましたね、お二人さん。こんばんわー」


 リーダー格の生徒の慇懃(いんぎん)な台詞が聞えてくると、取り巻き連中が二人を取り囲むように広がっていた。

 あっという間に茜と結沙は、県道の端に追い立てられてしまう。


「いつも葛葉のお嬢さんにはフラれてばかりですからねぇ。今日は是非ともお付き合い頂きたいものですね」


 その取り巻きの中…──赤黒い顔でニヤニヤと舌なめずりする彼らの中に、クラスの有森の姿があった。

 目線が合うと、有森はねっとりとした笑みを返してきた。


 ──…嗚呼……。

 結沙は絶望的な気分になった。




   *  *


 先頭の明弘が、ぴくと、何か音に反応するように立ち止った。そのままじっと耳を澄ましている。


「蒼…──」 蒼もまた、同じ表情でじっと耳を澄ましていた。

「──…ああ……‼」 その顔がみるみる険しくなっていく。


「葉山、悪いが……先、戻っていてくれ──」

 明弘が絞り出すような声で、そう云った。



「…………」

 二人の周囲が、尋常ならざる気配に支配されていくようだった。

 たしかに〝空気〟が変わった……。

 (浩太)もまた、明弘と蒼の発する〝何か〟に、緊張していた。

 

 と、次の瞬間、明弘と蒼の二人が駆け出した。一瞬で視界から〝消えた〟と感じた。


 ──な、なんだ?


 そういう疑問が形になるよりも早く、一拍の後には俺もまた二人を追っていた。


 ──なんだ……? いったいどうなってるんだ?


 自分の視界の中の動きについてアレコレと考えるよりも速く、周囲ではその視界が流れていく……。

 視界を、飛ぶような速さで緑が線になって流れていった。


 耳元では風が鳴っていた。

 先を走る明弘と蒼の背で風が巻いて、切り裂かれる……。

 二人が、俺の先を飛ぶように駆けていく。

 俺も同じように駆けている。

 噴き出た汗が身体の後方へ飛び散っていく。


 息が苦しい──。

 心臓が張り裂けそうだ……。


 ──なんて荒々しい走り方なんだ……。まるで獣だ……。


 人の走りではないと思った。


 ──でも、美しい……。



 自分がどうやって二人に付いて行ってるのかわからない。

 それでも 細く険しい獣道の上で、俺は必死に足を動かした。


 でないと二人の背中が視界から消えてしまう…──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ