表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

私は売られることが得意な妖精だったみたいです

世界は広い。

蝶々は宙を羽ばたき、花たちは「私をみて」と主張するように大きく花びらを開く。太陽は私たちを暖めてくれている。時は刻々と静かに進んでいた。

そんな平和な土地で私は過ごしている。

生い茂る芝生の上で仰向けになりながら、ため息をつく。ピースフルすぎるこの土地に、実は私は飽きてしまった。世界は広いから、飽きたならすぐに旅に出れば良いじゃないか。その辺フラフラしてたら、新たな出会いがあるかもしれないじゃないか。と思う人が大半だろう。


世界はどこまでも続いている‥!!

と言いたいところだけど、


私が過ごしている世界はめーっちゃ狭い。とんでもなーく、狭い。「それほどか?」とみんな思うかもしれないが、「それほど」だ。


普通は、歩けば住宅街、砂漠、草原などそれぞれ個性がある土地にいけるし、たとえ海に突き当たったとしても、船を漕いでいけば、また新しい土地へと辿り着ける。が、私だけは人生ハードモードコース突入。


歩いて解決する問題ではなかった。海に突き当たる前に、私の目の前に立ちはだかる壁。決して超えることが不可能な世界の限界がある。100mの立方体の中のみの生活に制限され、そこに唯一あるのが小さな黄色い屋根の家。その家から一歩出ると、ただ草原が広がっているだけ。存在する生き物は蝶々くらい。それだけの世界。


ここまで聞いて、勘のいい奴は気づいただろう。

私は訳あって、狭い空間に閉じ込められている。

何故こんなことになったのか、それは3年前に遡る。




私は花の妖精だった。妖精の国「フェルニマ」で暮らしていた。フェルニマとは、月・花・風・光・火・水の6つの能力のいずれかを持っている妖精が、妖精の在り方や能力の使用方法などを学び暮らす、妖精だけの国。


妖精は、人間達と直接関わることが禁忌だと、この(フェルニマ)では長年言われており、人間と関わることがないよう、生物が立ち寄ることが難しい位置に存在している。あくまで妖精は自然界と世界を結ぶ役割。強大な妖精の力を人間の欲で使われないよう、自制しているのだ。


人間と一緒に共存するという発想は微塵もなく、お堅い思想の国だった。それが「フェルニマ」で暮らす上で理解しなければいけないことだ。

人間とは関わってはいけない、と。


だが残念なことに、その考えを完全無視する花の妖精がいた。私、「らぬ」のことである。フェルニマでは、名のある問題児だった私なんだけど、「人間と関わってはいけない」という意見に関してはどうしても同意できなかった。なぜなら、私たちが気をつけて接すればいいだけの話だと思っているから。だってそうでしょう?能力を悪用されなければいいなら、必要な時以外は力を使わなければいい。私は人間と話したり、遊んだり、一緒に過ごしてみたかった。それが夢だったんだもの!だから、こっそり国から逃亡して、人間界で暮らすことに決めた。そこからは全てが早かった。決断した日の翌日の夜には計画を実行してたのである。


必要最低限の荷物をカバンに詰め、家出しますという手紙を家の机に置き、そそくさと人間界へと向かった。フェルニマには心残りはないんか?と言われると、もうちょっと妖精達と仲良くなりたかったなと思う節はあった。が、夢の方が第一だから、人間界まで足を進めた。

途中までは順調だった。キノコの森を抜け、竜巻の原っぱをすぎ、幽霊が棲みつく墓場などを奔走し、人間界まであと一歩というところだった。

最後通りかからなければならなかったのは、魔女の塔。魔女のすみかなんだけど、変に魔女を刺激しなければサーっと通れると思ってたんだ‥。それが間違いだったみたい!!

塔に引きこもっていると有名な魔女が塔の近くをふらふらと散歩してたのである。誤算だった。出会う予定もなかった魔女にあってしまった。


「妖精?あら、珍しいお客さんだね。久しぶりだねぇ。」

「こんにちは、偉大なる魔女様。実は人間界に行きたくて、この塔を通り過ぎる許可をいただけませんか。」


ニコニコと恐怖を全面に出さぬよう、魔女に言えたと思っていた。私の取り柄は笑顔だし。


「ふーん。妖精が人間界に、ねぇ。あなた達の中では禁忌でしょう?勇気のある妖精ちゃんだね。でもタダでここを通させてはあげないよ。ああ!そうだ!いいこと思いついた。」


ニヤニヤと裏がありそうな含みのある笑いを魔女は見せると、私に向かって呪文を唱え始めた。流石にこれはやばい魔法だと察知した私は一目散に逃げ出そうとした。でも、魔女の呪文の速度の方が上だった。ピカっと目の前が真っ白になり目を閉じる。少し時間が経ち、様子を確認しようと目を開けるとあたり一面は草原になっていた。


「上手くいったようだね。妖精ちゃん、新しい住処はいかが?」


声が聞こえた方へと顔を向けると、魔女のドアップされた顔が目の前にあった。慌てて辺りを見渡すと、草原ではあるが、目の前の方向だけは、さっき立っていた場所とイタズラ好きな魔女の姿が大きく一面に映っていた。青空が広がっているのではなく、魔女が大きく映って見えるなんて、不思議な光景だ。


「いい場所だろう?私は、あなたを絵画の中に閉じ込めたの。それも家にあったほぼ何にも描かれてない草原の絵にね。おほほ、面白いでしょう?ほら、私の姿は見えてるわよね?私が見えている方が普段、絵を鑑賞されている面の方向よ。」


そう、あろうことか、私は絵の中に閉じ込められたらしい。あまりにも想定外のことすぎて絶句した。


「魔女様、いい場所かも知れませんが、私は人間界へと行きたいのです。どうか、この中から出してくれませんか」

「嫌だね。」


即答でこたえる魔女に頬を膨らませるが、これじゃ人間界に行く前に抜け出せないとわかり、かなり焦った。


「でも、安心しなさい?たくさんの人と出会えば状況は変わるかも知れないわよ?その絵の中でどうやって出会っていくのか、不思議だけどね。おほほ。」


完全なる魔女からの嫌味である。フェルニマから逃亡したことがよくなかったのかも知れない。はぁ、とため息をつきながら、国を出たことに後悔した。


「あなたのことは、人間界の原っぱに置いておくから、頑張ってね〜。あらやだ、絵を捨てておくって言った方が正しかったかしら。おーほほ。」



その後、魔女の腕に(絵画として)抱かれながら、目指していた人間界に連れて行かれ、魔女に適当に捨てられた。理不尽である。ただ、人間と出会いたかっただけなのに、この有様。それも運が悪いことに普段人間が来ることが少ない原っぱに捨てられたことで1年は誰も私のことを見つけてくれなかった。その間は絵画の中で畑を作り、家でくつろいだり、それなりに満喫してたんだけど、1年もそれを繰り返していると流石に飽きる。話し相手も蝶しかいないし。一応、どうにか絵から抜け出す手段はないかと、研究もしていたけれど方法は見つからなかった。

絵画生活2年目は、やっと人間に見つけてもらえた。久しぶりに目にした人間は長い髭の生えたおじさんである。


「こりゃ珍しい。絶滅したと言われている可愛らしい妖精が描かれているではないか。とりあえず市場に行って、売りに行くか」


なぜか、絵画(わたし)は高値で売れると思われたらしく、市場に出された。絵画に閉じ込められてからはじめて、新しい景色を見ることができ、売られているという事実は悲しかったが感動もしていた。それも念願の人間がたくさん目の前に広がっているのである。でも、ただの絵画と思われているらしく、変に動いたり話し始めたら、厄介なことになりそうだと思い、私は沈黙を貫いていた。そこから、そこそこ高値の値段で売れ、豪邸の中の一つの壁に私は展示された。はじめは、新しい環境に移りワクワクで、私を買ってくれた主人と会話できるかもしれないと思い、主人が私を見に来ることを待っていた。が、この家の主人は忙しいらしい。買われてから一切目の前に現れなかったのである。私の退屈の生活2年目は豪邸に飾られたのみ、変化はなかった。そろそろ、やることが尽き、私は毎日草原を散歩しながら歌うことを日課にした。歌は元々、好きだったから少しでも気休めするためにも歌を歌っていた。

3年目は寝る時間を増やし、過ごしていた。相変わらず家の主人は来ないし、出られる気配もないし、魔女を恨むのも疲れたのである。ある日、いつものように大声で歌っていると、目の前に映っていた豪邸の部屋の景色に家の主人らしき人物がギョッとした目でこちらを見ていた。私の気付かぬうちに、歌を聞きつけ見に来たようだった。


「君もしかして、本物の妖精なのかい?」


ここに来てついに私の理解者が!!この人となら、まともに会話できるかもしれない!期待を膨らませる。人間と仲良くなって見せるんだから。早速お友達になれるか、聞いてみよ‥


「これは世界で偉大なる発見だ!!きっと、これは大きな話題になるに違いない!美術館に寄贈しようじゃないか!」


お友達になるという選択肢は一欠片もなく、また売られてしまった。そして、博物館に展示された今日、私の行く末を本格的に絵の中で一生過ごすことになるかもしれないと売られていく中で確信になった。妖精の力を悪用されたことはないものの、レアすぎる存在ってだけで宝の値段と言われるちょー高額で私は展示されているらしい。


そして現在に至るのである。3年もの長い時間を絵画の中で過ごすことで私はこの世界を知り尽くしてたし、ただならぬ魔女の力がこの絵画にかかっているのもわかっている。どうせ、私のことを探しに来る妖精もいないだろうし、完全に詰みの状態。そんな絶望をひしひしと感じてる私の目の前に美術館にやってきた1人の少女が現れた。黄色の宝石のようなキラキラした目に、白いくるくるとなった可愛らしい髪の持ち主。そのキラキラとした目に私の姿が映っていた。これが私の人生を変える転機になるとは、思っていなかった。


「妖精ちゃん、あなたの名前教えてくれない?」

私の運命の歯車がこの少女との出会いで動き始じめたのである。

次回、花の妖精、らぬ!

「世界征服目指します!」

私に人間全員、メロメロにさせよう計画開始。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ