1.始まりは路地裏から
俺の名前は東上神一。
まだ特に何も成していない、ただの学生だ。
今は夏休みで、適当にラノベや本を読みつつ、ゲームをするという生活を続けている。
そんな俺だが、今日はめずらしく早起きをした。
そう、今日は新作ゲームの発売日。
これは買いに行くしかないだろう。
俺は身支度をし、外へ出た。
最近は家の中で過ごしていた分、空気がうまく感じる。
店の近くの路地裏まで差し掛かった時、それは起きた。
「こちらへ来い――」
突然、路地裏から声が聞こえた。
ちょっと渋めの、ダンディーな声色だ。
こちらへ来い?
俺に言ったわけじゃないよな。
「……東上神一、こちらへ来るんだ。」
――!!
俺の名前じゃないか。
この声に見覚えはないが、もしや知り合いだったり?
人を覚えるのは苦手な方だが、さすがに記憶になさすぎる。
顔を見れば思い出すかもしれない。
俺はそっと路地裏を覗き込んだ。
だが、そこには誰もいない。
「はぁ、俺を呼んだやついるかー?」
……人が居そうな気配はない。
ただの聞き違いにしては、はっきりとしていたな。
気持ちが晴れないまま、俺は後ろに振り向いた。
すると、俺の前には信じられない光景が続いていた。
「――俺、疲れてんのか?」
俺のいる路地裏が、延々と続いている。
さっき入ってきた入口が、果てしなく遠くに見える。
何か怪奇現象やら、心霊やらの本は読んだことがある。
これは、マジのやつだ。
肌身に不気味さがまとわりついている。
何かが起こる。
俺は必死に路地裏から出ようとした。
だが、その努力も空しく、出口は離れ続ける。
そして、同時に俺の意識が消えていく。
本当に……何がなんだか――
俺の意識は、そこで途絶えた。




