資本主義の怪物3
この日は彼の買い物に付き合わされて飲みにも付き合った。挙げ句の果てには隣駅まで歩いて帰ろうなんていう有り様だ。電車で帰った方が良いと、当然私は嫌気を表に出した。今思えばこの日の中で私が私を彼に伝えたのはその時が初めてだったように思う。そんなことも露知らずに彼はこう言ってのける。
「お前さ、そんなんで楽しいのかよ。趣ねぇな?」
情緒を好む私にとってこれ以上の侮辱があるのだろうか。腹が立つなんてぬるま湯に浸かった言葉じゃ到底満足できない。その上こうして彼の事を綴っている今でさえ、二人で語らいながら夜道を歩き進んだ、あの時の景色を想起して感慨にふけってしまっているんだから、尚のことである。
隣駅に向かう途中で道に財布が落ちていた。私はこれを見て見ぬふりしようか迷った。なぜ迷ったのか思い出すのは難しいが、良心からの行動が面倒を呼ぶこともあるのだと粗方察していたという辺りだろう。私がそんな葛藤の中にいることにも目もくれず、彼は財布へと足を進め、一目散にそれを拾って私に問いかけた。
「いくら入ってるかな?」
そう言ってニヤけながら財布の中を開こうとした彼を私は止めた。
「中を見るなんていけないよ。」
「は? 何が不可ないんだ、中を見るだけじゃないか。」
「中身なんて見なくたっていい。やることは交番に届ける、それで十分じゃないか。」
「いや勿論届けるさ。見てもいいだろって言ってんだよ。見たら不可ないって言うお前が意味理解んない。」
たしかに見てはいけない理由を説明できなかったし、むしろ私も分かっていなかったと言ってもいい。とにかくそんなもんだから私は不機嫌そうに口数を減らしてしまい、そんなもんだから彼も怪訝そうに口を閉じていた。




