表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の極悪貴族は、謙虚堅実に努力する~原作知識と固有魔法<虚空>を駆使して、破滅エンドを回避します~  作者: 月島 秀一
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/165

第十八話:真の目的

 ヴァランの反抗的な態度を目にしたルビーは――笑った。

 苛立つのでも、怒りに呑まれるのでも、激情に駆られるのでもなく、嬉しそうに口角を吊り上げた。


 うわぁ……完全に(たの)しむ気だよ。


「ふふっ、なるほどなるほど、確かにこれは『教育』が必要ね」


「はっ、貴様のような小娘が、この私に何を教え(さと)すと?」


 ヴァランは鼻を鳴らし、無謀にも挑発を口にした。


(……怖い、ボクはもう怖いよ……っ)


 彼は今、地雷原でタップダンスを踊っている。

 しかし当の本人は、それにまったく気付いていない。

 なんと恐ろしく、滑稽(こっけい)な話だろうか。


 ボクが『約束された惨劇(さんげき)』に肝を冷やしていると、ゾーヴァが大声を張り上げた。


「お、お待ちくださいルビー様! こやつはただ、何も知らないだけです! ボイド様の偉大さも、貴女様の恐ろしさもっ! 儂が後ほど、厳しく言い聞かせておきますので、どうかここは寛大なる御慈悲を……ッ」


 彼は深々と頭を下げ、必死に許しを()うた。

 きっと怖いだろうに……自分と同じ『被害者』を増やさないよう、なけなしの勇気を振り絞ったのだ。


「残念だけど、無理な相談ね。本件はボイド様より(たまわ)った勅命(ちょくめい)。それに、こういう身の程知らずには、厳しい(しつけ)が必要よ」


「うぐ……っ」


 ルビーの説得は不可能。

 そう判断したゾーヴァは、すぐさま標的を変える。


「ヴァランよ、悪いことは言わぬ! 今すぐに心を入れ替え、謝罪するのだ! ボイド様は心優しき御方! しかと誠意を見せれば、慈悲を(たまわ)れるやもしれぬっ! さもなくば、儂と同じ(・・・・)運命(・・)を辿ることになるぞッ!?」


「ふんっ、どこまでも情けない男だ。こうなっては、人間もう終わりだな」


 ヴァランは侮蔑(ぶべつ)の言葉を吐き捨て、


「こ、この馬鹿者め……っ。何故、年長者(ねんちょうしゃ)の言うことに耳を貸さぬのだ……ッ」


 ゾーヴァはグッと奥歯を噛み締めた。


「ふふっ。私、嫌いじゃないわよ? あなたのような愚か者は」


「奇遇だな。私も嫌いではないぞ? お前のような勘違い女は」


 そうして始まったルビーとヴァランの死闘は――コンマ一秒で終わった。

 開幕と同時、ルビーの右拳が、ヴァランの(あご)を砕いたのだ。


「ぁ、ぐ……っ(つ、強過ぎる……ッ。この女、いったい何者なのだ!?)」


 顎を叩き割られたヴァランは、脳が揺れているのか、無様に床へ這いつくばり、


「所詮は『魔人崩れ』、口ほどにもないわね」


『龍の女王』は、冷たい瞳で敗者を見下ろした。


(まぁ……こうなるよね)


 魔人になった程度じゃ、うちのルビーには(かな)わない。

 何せ彼女は、龍の血×英雄因子×魔王因子の持ち主。

 所謂(いわゆる)『スーパーサラブレッド』だからね。


(でも、思ったより控えめ(・・・)だったな)


 てっきりルビーのことだから、もっとえげつない倒し方をして、ヴァランの尊厳を踏み(にじ)り、彼の人格を破壊するのかと思ったけど……。

 顎を叩き割るだけなんて、とても良心的だ。


(きっと彼女も、いろいろな経験を重ねて、丸くなったんだろうなぁ)


 そんなボクの幻想は、すぐに打ち砕かれた。


「再生は終わったかしら? ……よし、それじゃ行くわよ」


 ルビーは『炎の首輪』をヴァランに付け、付属のリードを容赦なく引っ張る。


「う゛ぐっ!? ま、待て、どこへ行くつもりだ……!?」


「こんなところで始めたら、ボイド様のお目汚(めよご)しになるでしょう? だから場所を移すの、『仲良しの家』にね」


 ……どうやら、まだ始まってすらいないらしい。

 さっきのはただの『格付け』に過ぎず、『地獄(おたのしみ)』はこれから、ということだ。


「な、仲良しの、家……?」


「わかりやすく言えば『懲罰房』ね」


「……っ」


 ヴァランはゴクリと息を呑む。


「ふふっ、いい顔になったじゃない。ようやく自分の立場を理解したのね? 偉いわ、御褒美にその紫の鱗、一枚一枚丁寧に()ぎ取ってあげる」


「だ、誰か……そうだ、ゾーヴァっ! 頼む、助けてくれ……後生(ごしょう)だッ!」


 根源的な恐怖に震えた彼は、必死にこちらへ手を伸ばすけれど……もう遅い。

 せっかく犠牲者Z(せんぱい)が助けようとしてくれたのに、それをすげなく断ったのは、他でもないヴァラン自身だ。


「あらあら、情けない声ねぇ……ゾクゾクしちゃう」


 ルビーは恍惚(こうこつ)とした表情で微笑み、


「ひ、ひぃ……っ」


 ヴァランは顔を引き()らせ、


「「……」」


 ボクとゾーヴァは揃って目を伏せた。


(ルビー先生は……完全に『スイッチ』が入っていらっしゃる)


 もはや彼女を止めることはできない。


(頑張ってね、ヴァラン……)


 人格面は……もう無理だ。

 おそらく徹底的に矯正され、花を(いつく)しみ鳥の歌に心を寄せる、『綺麗なヴァラン』となって返ってくる。


(でもせめて、『目』だけは守ってほしい……っ)


 キラッキラの瞳は、ゾーヴァ一人で十分だ。

 ボクは自分の街を――このボイドタウンを『少女漫画的な乙女空間』にしたくない。

 目に星の入った爺キャラは、もう間に合っている。


「魔人を調教するのは初めてね、とても楽しみだわ」


「い、いやだ……いやだいやだいやだ、いやだぁああああああああ……ッ!」


 凄まじい絶叫が響く中、扉がバタンと閉められ、(うつろ)の宮に平穏が訪れた。


「ふぅ……緊迫の時間だったね」


「……救えなかった、儂はいったいどうすればよかったのでしょうか……」


「あれはヴァランが悪い。むしろゾーヴァは、よく頑張ったと思うよ?」


 まぁ結果的に、新たな『犠牲者』が増えちゃったけどね。


「それにしても、面白いモノが見られたなぁ……」


 ボクがしみじみと感慨(かんがい)(ふけ)っていると、ゾーヴァが無言でジッとこちらを見つめてきた。


(ボイド様は本当に恐ろしい、ヒトをただの『玩具(おもちゃ)』としか思っていない……。儂とて偉そうなことは言えぬ、幾度となく悪しき実験を行ってきた。しかしそこには『目的』があった、最強の固有魔法を再現するという『野望』があった。その点、この御方は根本的に違う(・・)。彼の望みは――楽しむ(・・・)こと(・・)。ただそれだけのため、人間を『ゲームの駒』としておる、『真性のサイコパス』……ッ)


(ふふっ。悪いけど、キミの考えていることは、全て手に取るようにわかるよ?)


 ()えて言葉に出さずとも、十分に伝わってきた。


(間違いない、ゾーヴァは――ボクに『感謝』している)


「こんな貴重なイベントを見せていただき、本当にありがとうございます」、彼の目がそう語り掛けてくるのだ。

 昔から、『目は口ほどにモノを語る』と言うしね。


「さて、それじゃボクは次の現場に行ってくるよ。引き続き、魔法炉(まほうろ)の調整をお願いね」


「はっ、承知しました」


 こうして第一章と第二章の大ボスが絡む、超々貴重なイベントを堪能したボクは――<虚空渡り>を使い、虚空界の『とある一角』へ飛んだ。


 現在ボイドタウンでは、二つの巨大事業が行われている。

『ニュータウンの開発』と『武具(ぶぐ)の大量生産』だ。

 どちらもメインルートの攻略に直結する『重要な下準備』であり、その成否(せいひ)によって、今後の展開(なんいど)が大きく変わってくる。


「――到着っと」


<虚空渡り>で飛んだ先は『特設展望台』。

 最上部の展望デッキでは、現場監督のダイヤが指示を飛ばし、眼下に広がる作業エリアでは、大勢の犯罪者たちが街づくりに(はげ)んでいる。


(うんうん、みんな頑張ってくれているね!)


 作業員の中には、見知った顔がたくさんあった。


(盗賊団の頭領グラード・大魔教団の副支部長イグヴァ・切り裂きジェイ・暴虐(ぼうぎゃく)のマット兄弟、奴隷商の長ムンド・裏カジノの総支配人ベラルタ……)


 新しいところで言えば、帝国の暗殺者ティアラなんかも、重たい土嚢(どのう)を運んでいる。

 第一章~第三章の小ボスや中ボスたちが、みんなで力を合わせて、ボクのために働くその光景は――控えめに言って『壮観』だ。


(ふふっ、今後もコレクショ……ゴホン、大切な家族を増やしていかなきゃね!)


 自分の()き集めたトロフィーに満足しつつ、現場監督へ声を掛ける。


「やぁダイヤ、遊びに来たよ」


「えっ、ボイド? あなた、時間は大丈夫なの? 最近は忙しいって聞いていたのだけれど」


「うん、ちょっとだけ手が空いてね。それよりも、進捗(しんちょく)はどんな感じ?」


「ニュータウンの開発事業は……あまり(かんば)しくないわ。このままじゃ、工期(こうき)に間に合わないかも」


 彼女は申し訳なさそうに視線を落とした。


「やっぱり人手が足りない?」


「えぇ、労働力不足が一番の問題ね」


「そっか」


 まぁこればかりは仕方ない。

 いくらダイヤが完璧な指示を出し、効率的な計画を組んだとしても、手が足りなければどうしようもないからね。


「もう一つの事業、『武具の生産』はどう?」


「あっちはギリギリ間に合うかどうか、と言ったところかしら。正直、余裕はまったくないわ。一つの遅れが命取りになる状況よ」


 なるほど……ニュータウンはまぁいいとしても、武具の遅れはちょっと困るね。


「それじゃ、街作りに割いているリソースを武具の量産に回そう。街作りが『3』、武器の量産が『7』ぐらいかな」


「確かにそうすれば、武具の量産は固いけれど……。ニュータウン事業は、どう足掻(あが)いても間に合わなくなるわよ?」


「大丈夫。労働力には『アテ』があるんだ」


「そう、もう既に手を打ってあるのね。さすがだわ」


 ダイヤはすぐに<交信(コール)>を使い、現場作業員に指示を出し始めた。


(ニュータウンの開発は、もうちょっと後でいい)


 この街を活用するのは、『王選』の後だからね。

 そんなことよりも今は、武具の生産を急ぎたい。 


 ボクが未来のイベントを見据(みす)えていると、ダイヤが「ふぅ」と息をついた。


「あなたの指示通り、街づくりの人員を武具の生産へ移行したわ。これで猶予時間(バッファ)も十分だし、武具の方は絶対に大丈夫よ」


「それはよかった」


 ひとまず、安心してもよさそうだね。


「でも、こんなに大量の武具を作って、いったいどうするつもりなの?」


「実はもうすぐ『大きな戦い』が起こるんだ。それをどう(さば)くかによって、今後の『勢力図』が激変する。今作っている武具は全部、そのときに備えたモノだね」


 王選と違って、こっちの(いくさ)はかなり近い。

 具体的には、『第四章』の最終盤面(ラスト)だ。


 今はまだ『第三章』の途中であり、本来ならば、目の前のイベントに集中すべきなんだけど……。


(第四章は特別だ。何せ原作ロンゾキルア『前編』の()(くく)り、第一章・第二章・第三章の『総決算』にあたる、とても大切な章だからね!)


 ボクはそこでハイゼンベルク家の力を――いや、『極悪貴族』ホロウ・フォン・ハイゼンベルクの力を見せ付ける!

 父ダフネスへ、四大貴族の当主たちへ、そして何より……クライン王国の王族たちへ!


 そのためにも今は、ボイドタウンという『水面下』で、しっかりと準備を整える。

 そうして万全な状態で『奴』を迎え撃ち、ケチの付けようのない、『圧倒的な実績』をあげるのだ!


(くくくっ……順調だ! ここまでは完璧、最高の展開(ルート)を進んでいる!)


 ボクが邪悪な微笑みを浮かべていると――ダイヤが声を掛けてきた。 


「ねぇ……ボイドはどこまで未来(さき)見据(みす)えているの? あなたの真の目的はいったいなんなの?」


「ふっ、そんなの決まっているだろう? ――『生存End(ハッピーエンド)』だよ」


 ボクの見据える未来・真なる目的、それはこの世界に転生した六年前から、一ミリだって変わっちゃいない。


 死の運命(シナリオ)に勝ち、生き残ること。


 誰もが当たり前のように享受(きょうじゅ)する、『(せい)』という極々(ごくごく)ありふれた状態。

 ボクはそれを勝ち取るため、ひたすらに努力しているのだ。


(現状、攻略チャートの障害になっているのは、たった一つ――『労働力不足』)


 ボクは(おり)に触れて家族を増やしているけど……それでもまだまだ足りていない。

 このままではニュータウンの開発事業は失敗に終わり、メインルート攻略に深刻な影響が出てしまう。


(でも、大丈夫! 労働力問題を一手に解決する、夢のような方法があるっ!)


 第三章の大ボスが持つ、起源級(オリジンクラス)の固有魔法だ。

 あの超便利な固有が手に入れば、労働力不足は一発で解消する。

 武具の生産も余裕で間に合うし、ニュータウンの開発も予定通りに終わる。


(たとえどんな手を使っても、『彼』だけは絶対に拉致するっ! そう、何があっても絶対にだッ!)


 決意を新たにしたボクは、攻略チャートを取り出す。


(さて……そろそろ第三章も終盤に突入する)


 今回の最終盤面は、レドリック魔法学校。

 大魔教団の幹部が、万全の準備を整えたうえで、奇襲を仕掛けてくる。


(どうせやるなら、『死者ゼロの完全攻略(パーフェクトクリア)』を目指したい……)


 きっとそっちの方が、原作ホロウ(ボク)の名声に繋がるだろう。


(そのためには、こちらも『場作り』をしなきゃだね!)


 つまり、ボクが次に取るべき最善手(こうどう)は――『レドリックの完全支配』だ!

【※読者の皆様へ、大切なお知らせ】

「面白いかも!」

「早く続きが読みたい!」

「執筆、頑張れ!」

ほんの少しでもそう思ってくれた方は、本作をランキング上位に押し上げるため、


・下のポイント評価欄を【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】にする


・ブックマークに追加


この二つを行い、本作を応援していただけないでしょうか?

ランキングが上がれば、作者の執筆意欲も上がります。

おそらく皆様が思う数千倍、めちゃくちゃに跳ね上がります!

ですので、どうか何卒よろしくお願いいたします。


↓この下に【☆☆☆☆☆】欄があります↓

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

カクヨム版の応援もお願いします!


↓下のタイトルを押すとカクヨム版に飛びます↓


カクヨム版:世界最強の極悪貴族は、謙虚堅実に努力する



― 新着の感想 ―
今のホロウの名声は上がるけど原作は変わらないよね
元巨悪で被害者の会が結成される日も近いな
『なかよしの家』×『キラキラの目<被害者Z>』×『乙女空間』×『異世界』 連想できるのは、小説家になろう定番ジャンルの起源になった 『なかよし』 という 少女漫画 雑誌 で 初の 剣と魔法と巨大ロボ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ