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世界最強の極悪貴族は、謙虚堅実に努力する~原作知識と固有魔法<虚空>を駆使して、破滅エンドを回避します~  作者: 月島 秀一
第四章

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第八話:特殊暗殺部隊

 あぁ、綺麗な夜空だ。

 ダイヤに見せてあげたら、きっと喜ぶだろうな。

 ぼんやりそんなことを考えながら、満天の星空を見上げていると――背後から短刀がヌッと伸びてきた。


「――終わりだ」


「バレバレだぞ?」


 ボクが右肘(みぎひじ)を軽く引くと、


「ガ、ハッ!?」


 真後ろにいた男の胸に刺さり、グシャリという嫌な音が鳴った。


(……ん……?)


 えらく生々しい感触だったので、チラリと振り返れば――なんと『暗殺者A』の胸部が、深く陥没(かんぼつ)しているではないか。

 彼は口から血反吐を吐き、ゆっくりと膝を折って倒れ、そのままピクリとも動かなくなった。

 どうやら胸骨(きょうこつ)が砕け、心臓が弾けたっぽい。


(これは……ちょっとやり過ぎたかもしれない)


 放っておいてたら死んじゃうので、こっそりと回復魔法を使い、応急処置を施した。

 やっぱり命って、貴重な資源だからね。


(しかし、やり(・・)づらい(・・・)なぁ)


 元々ボクは手加減が得意じゃない。

 今はそこへ聖域のデバフも乗っているため、『ちょうどいい出力』がとても掴みづらい。


(とりあえず……ここが『猟奇的(りょうきてき)殺人(スクラップ)現場』にならないよう、かなり抑えめでいかなきゃね)


 基本的な方針を定めたところで、周囲をグルリと見回す。


「まったく……それで隠れているつもりか?」


 ボクがそう言い放つと――夜闇の中から黒装束が浮かび上がり、リーダー格の男が不敵に微笑む。


「褒めてやろう、よく我等の隠形(おんぎょう)を見破った」


「くくっ、どこの世界にそんなバレバレの隠形がある? 褒めてやろう、中々に面白い『コスプレ集団』だ」


 挨拶代わりに軽い挑発(ジャブ)を送ると、


「「「……っ」」」


 敵さんたちは、鋭い殺気を放った。


 一触即発の空気が(ただよ)う中、再びリーダー格の男が口を開く。


「私はジェロム、大魔教団の『特殊暗殺部隊クィンズ』を束ねる者だ」


 まぁ、予想通りの展開だ。


 原作ホロウは、世界に中指を立てられた存在。

 破滅の運命(シナリオ)は、隙あらば悪役貴族を抹殺しようとする。


(勇者の聖域にいる間、ボクの全ステータスは大幅にダウンし、ボイドバレ防止のため<虚空>も使えない……)


 早い話、ホロウ・フォン・ハイゼンベルクを消す『千載一遇の大チャンス』だ。

 おそらく『世界の修正力』が働き、自然な形で死亡フラグを寄せてくるはず。

 そんな風に考えていると、『クィンズ御一行』がやってきた。

 既に警戒していたため、特段の驚きはない。


「ホロウよ、貴様は少々調子に乗り過ぎた。ただの学生に『天魔(てんま)』を討たれたとあっては、大魔教団(うち)の面子が丸潰れなのでな。ここできっちり落とし前を付けさせてもらおう」


「おやおや、自慢の最高幹部がやられて、次に出て来るのが『(した)()』とは……哀れだな。よほど人材難(じんざいなん)と見える」


「……私達は下っ端じゃない。『殺し』に特化した特殊部隊(・・・・)だ」


 不快そうに眉を(ひそ)めたジェロムは、ゆっくりと右腕をあげる。


「モノを知らぬ哀れなガキよ、冥途(めいど)土産(みやげ)に教えてやろう。『強さ』には、様々な種類があるということをなッ!」


 彼がパチンと指を鳴らした瞬間、暗殺者たちが一斉に襲い掛かってきた。


「――我が『魔剣』、受けてみろッ!」


 正面から振り下ろされるのは、よく(・・)目立つ(・・・)真っ白な(・・・・)太刀(・・)


(あっ、『暗器』じゃん)


 白い剣先から伸びた透明な刃(・・・・)を優しく摘まんでやる。


「なっ!?(この暗がりの中、初見でッ!?)」


「くだらん玩具(おもちゃ)だ」


「ご、ハ……ッ」


 暗殺者Bの腹を殴り、その意識を刈り取る。


 直後、


「「――死ね」」


 短刀を握った暗殺者CとDが、両サイドから突進してきた。

 よくよく見れば、刀身がしっとりと濡れている。


(おっ、毒だね)


 今は『虚空のかけら』を使った『免疫機構』を切っているため、平時の『完全毒耐性』がない。

 ここはしっかり防御しよう。


 ボクは地面に転がる暗殺者AとBを爪先でヒョイと蹴り上げ――即席の『盾』とした。


「「なっ!?」」


「「が、ふ……っ」」


 まさに同士討ち。

 毒の塗られた短刀が、盾の腹部をぐっさりと(えぐ)る。


「あーあー、可哀想に……。まさか仲間に刺されるなんて、思っていなかっただろうなぁ」


「「……っ」」


 動揺する暗殺者CとDの後頭部に手を回し、それぞれの額をゴツンとぶつけてやった。


「「ぁ、う゛ッ」」


 鈍い音が響き、二人はぐったりと倒れ伏す。


「ん?」


 目の前に白い玉が転がった。


(ははっ、煙玉(けむりだま)か)


 蹴り返してやってもいいけど、向こうの油断を誘うため、ここは()えて爆発させよう。


 刹那(せつな)、煙玉がボフンと(はじ)け、視界が真白(ましろ)に染まり――これを好機と見た暗殺者E・F・G・H・Iが、無言のままに襲い掛かってきた。


(残念ながら、丸わかり(・・・・)なんだよね)


 風の流れ・鼓動の音・魔力の揺らぎ、たくさんの情報が、敵の位置を正確に教えてくれる。


「よっこいせっと」


 ボクは前屈(まえかが)みになって、先ほど昏倒させた暗殺者CとDを拾い――即席の『剣』として、暗殺者たちを迎え撃つ。


「よっ」


「貴様、なんと卑劣な……ガハッ」


「ほっ」


「ひ、酷い……きゃぁ!?」


「はっ」


「お前は悪魔だ……うぐっ」


「そぉれ」


「この外道め! ぐはッ!?」


 あっという間にE・F・G・Hが沈黙。


「や、やめろ……っ。ホロウ……お前は人の命をなんだと思っているんだッ!?」


「くくっ、お前も暗殺者だろう? この世界で『甘さ』は命取りだ」


 同じ暗殺者として、助言をプレゼントし――お手製の剣でIを殴り倒す。


「ふむ、存外に悪くないな」


人剣(じんけん)』、刃渡り約170センチ。

 基本的人権を削ぎ落とした至高の一振りだ。

 斬れ味はそんなによくないけど、軽く刃毀(はこぼ)れしちゃっても、回復魔法で治るところがグッド。

 さらに今みたく、敵の戦意を削ぐオマケ付き。


 咄嗟(とっさ)の思い付きにしては、けっこうイイ武器だね。


「さて、残すはお前一人だな」


 ボクの視線の先には、特殊暗殺部隊クィンズの(おさ)ジェロム。


「……なるほど、『第六天(だいろくてん)』ラグナ・ラインを倒すだけはあるらしい。だが、この私――『世界最強の暗殺者』ジェロム・ジェノヴァーゼには遠く及んぞッ!」


 彼が両手を広げたそのとき、周囲の木々が音もなく両断された。


「ほぅ、『操糸術(そうしじゅつ)』か」


「御明察! 研ぎ澄まされた魔力糸(まりょくし)を指より放ち、それらを手足のように操る高等技能だ! 3()手繰(たぐ)りて二流、5()を束ねて一流、10()を纏めて超一流と呼ばれる世界で――私は30()を同時に操るっ!」


 自慢気にそう語ったジェロムは、


「ホロウ、貴様の首を手土産(てみやげ)に持ち、このジェロムが新たな天魔となるのだァ!」


 両腕を激しく振るい、30本の魔力糸(まりょくし)をこちらへ放った。


 鋼を刻む『糸の斬撃』はしかし、


「――ふむ、確かこうだったかな?」


『漆黒の魔力糸(まりょくし)』によって防がれた。


「なっ!? 貴様も操糸術(そうしじゅつ)を……!?」


「くくっ、何を驚いている? こんなものは児戯(じぎ)に過ぎん」


 ボクの両指から、大量の魔力糸が伸びていく。


「あ、あり得ん……っ。貴様、いったい何本を……!?」


「さぁな、1万から先は数えていない」


 多分、3万本ぐらいはいけると思う。


「せっかくだ、一つ手本を見せてやろう。操糸術(そうしじゅつ)は、こうやるんだ」


「ひ、ひぃいいいいいいいい……!?」


 っというわけで、大魔教団の特殊暗殺部隊は壊滅。

 魔法の絡まない戦闘は、また趣向が違って楽しかった。

 たまには、こういうのも悪くないね。


(さて、どうしようかな……)


 ボクの足元に転がるのは、満身創痍(まんしんそうい)の暗殺者9人と糸でグルグル巻きのジェロム。

 大魔教団の特殊暗殺部隊が、お得なセットになって(まと)まっている。


(いつもなら、家族へ迎え入れるところなんだけど……)


 残念ながら、ここで<虚空渡り>を使うわけにはいかない。


(ちょうどやってきたみたいだしね……)


 騒ぎを聞きつけたアレンとラウルが、こちらへ駆け寄って来ている。

 ニアとエリザが出て来ないのは、お風呂にでも入っているのかな?


(仕方ない、今回はリリースしよう)


 ボクは魔力糸(まりょくし)を消し、ジェロムを解放してあげた。


「……貴様、なんの真似だ……?」


「お前たちのボスに伝えろ。『そう怯えずとも、しばらくは生かしてやる』、とな」


 そのまま返すのもあれなので、『メッセンジャー』として働いてもらう。


「くそ……覚えていろッ!」


 ジェロムは捨て台詞を吐き、煙玉を投げ付けた。

 白い煙幕が立ち込める中、彼は気絶した仲間を素早く回収し、脱兎(だっと)(ごと)く駆け出す。


 そうこうしているうちに、アレンとラウルがやってきた。


「ホロウくん、今の奴等は!?」


「これはいったい何事じゃ!?」


「大魔教団の下っ端です。自分を狙っていたようなので追い返しました」


 特に嘘をつく意味もないので、正直に現状を説明する。


「さすがはホロウくん。でも、怪我とかはない?」


「あぁ、大丈夫だ」


「そっか、よかったぁ……。でも、凄かったね! あの黒い魔力の糸! アレも魔力操作の応用なの!?」


「まぁ、そんなところだ」


 アレンが鼻息を荒くして、絶賛の言葉を並べる中、


(……今の一幕で十分にわかる。このホロウとやら、異常な(・・・)ほどに(・・・)強い(・・)……っ)


 ラウルはジッとこちらを見つめた。


(若くして修めた回復魔法・驚異的に仕上がった体術・神業(かみわざ)と呼べる魔力操作……こやつ、まさか……っ)


 もしかしたら、ちょっと不審に思われているかもしれない。


「自分の顔に何か付いていますか?」


「……いや、ハンサムなうえにその強さ、女子(おなご)が放っておかんじゃろうと思ってな(いかんいかん、儂は何を考えておるのじゃ。アレンの大切な友達が、ボイドであるはずなかろう!)」


 (わず)かに疑念を持たれたようだけど、確信には至っていない。

 これぐらいなら誤魔化せそうだ。

 もう二度とここには来ないしね。


 その後、勇者コンビと別れたボクは、<創造(クリエイト)>で作った屋敷へ戻るのだった。

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