幕間
どんよりとした空の下、ふたつの人影が両端が森になった街道を歩く。
基本的に、草木を切って大きな石をどかしただけの簡素な道は、昨日の雨でぬかるみ歩きにくい。
もっとも、この周辺は雨が降る事が多い為にいつもこんなもんなのだが。
「ヘィ、もうじき着くな。」
二人組の内の一人が口を開いた。
アエアリス・ガニュメディアル。それが、彼の名だ。
まるで、西部劇のガンマンを思わせるようなテンガロンハットとマントが特徴的な背の高い男である。
長めの茶の髪が顔の右側を隠し、見える左目は少しタレ目であるものの、その眼光は鋭い。目の上と下に上下の黒い三角タトゥーをいれている。彼なりのお洒落である。らしい。
「……そうだな」
そんな、このファンタジー世界に相応しくない西部劇風の男の隣を歩くのは、褐色の肌をした大男であった。
タウルス・エルナートという名の男。
鍛え上げられた肉体と、茶色い半袖の上着と長いズボンと非常にシンプルで簡素な服装。
髪は灰色で、短めで逆立てている。
何より目立つのはやはり身長だろうか。隣のガンマン風の男、アエアリスも背は高い方なのだが……タウルスと並ぶと小柄に見えてしまう。
「しかし……マジなんだろうな?」
アエアリスのぼやきに、さあな、とだけタウルスは答えて首を軽く横に振った。
「どちらにせよ、無視する訳にはいくまい」
「ヘィ。そりゃあまぁ、そうだ」
アエアリスは軽く頷いて、軽く帽子を被り直すような仕草をした後、続ける。
「コルピオの奴ァ遅れるってよ。ヘィ、まったくいいご身分だぜ。お前の区だろうがっての」
肩をすくめるアエアリスに、そう言うな、とタウルスは苦笑を浮かべる。
「アイツは平和な時期でも忙しいからな。
俺達は暇なんだ、駆り出されるのも当然だろう?」
たしなめるような言葉に、そりゃあそうだけどよ、とアエアリスはぼやく。
「やれやれ……ま、取り越し苦労でもそうじゃなくても酒くらい奢ってもらわねーとな。十一区からは結構遠いんだからよ。二区だって、結構な距離だろ?」
ここら辺はまったく土地勘ねぇしな。そうぼやくアエアリスの隣、そうだな、とタウルスは軽く笑った後、目を細める。
「見えて来たな」
その目に映る町を見ながら、静かにタウルスは呟くのだった。
その隣で、アエアリスもまた気を引き締めた顔をする。
さて、件の話が本当ならば──オレ達、『十二聖護士』二人でも難しいかもしれねぇな。
軽く得物に手を伸ばして、指先で少し撫でた。