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薄幸の堕天使  作者: 怒雲
一章『終りと始まりの詩』
13/165

十二聖護士

 得た力は抗う力を持たぬ者の為に。

 磨き、研ぎ澄ませた人類最強を謳う力。



 一部の隙さえ存在しない。───勝ち目など無いと識れ。













「……ヘィ」



 平和な町中を歩きながら、ガンマン風の男、アエアリス・ガニュメディアルは曇り空を隻眼に写しながら、呟いた。


「……ヘイ、やっぱりなんかの間違いだったんじゃあねぇか?」


「……かもしれんな。」



 そうぼやき、帽子を一度外してまた被り直すアエアリスの隣で、ふぅ、と褐色の巨漢。タウルス・エルナートも溜め息をつく。



「まぁ、それならそれでいいだろう」


呟き、タウルスは頷いて、軽く笑う。



「ならば───予定を変更して、コルピオの奴に酒でも奢ってもらうとするか?」


その言葉に、アエアリスは軽く吹き出した。



「ははっ、そうだな。遠路遥々やって来たんだ、美味い酒くらい呑まなきゃな」



「ああ。八区の酒は──」



 言葉は、途中で途切れた。何かを感じとった様子のタウルスの表情を見上げながら、どうしたと、アエアリスは訝しげな表情をした後にその隻眼が鋭い光りを放つ。



「何か、来やがるな……!」



 アエアリスとタウルスが、同時に後ろに下がると、それは地面を突き破り現れた。



「な……にぃ!? ワームだと……!?」



 そのミミズの様な姿を見て、アエアリスが思わず叫ぶ。町中から悲鳴が響いた。



「ヘィ! しかも二匹かよ! ……どーなってんだ、アアン!!?」



「俺に解る訳がないだろう……!」



 アエアリスとタウルスは、身構えながら二匹のワームを見上げる。ワームは、二人を獲物と判断したらしく口を開いた。




「……ヘィ、ナメられたもんだなァ、オレらもよ!」



こちらを狙う姿に、二人は安心して笑った。



良かった。他の住民でなく、真っ先に自分達を狙ってくれて。



 アエアリスは、口を開けて突撃してくるワームをその隻眼で見据えながら、軽く体を横に反らして避ける。

 ……のと同時に、右手が素早くリボルバー式の拳銃を抜く。



 拳銃は、実に特徴的な見た目をしている。


 まず、拳銃と呼んでいいのか解らないくらい妙に大きく武骨なである。

 なんとなく、水瓶を思わせる見た目のシリンダーには、六発の弾丸を込める箇所と、真ん中に拳くらいの大きな穴。



 ただの弾丸が飛び出すにはあまりに大きい銃口と、その上に普通の弾丸が飛び出しそうな銃口。






 アエアリスが左の掌を開くと、まるで手品の様にそこには緑色の大きな球体が出現し、それをシリンダーの、目立つくらい大きな穴にセットした。



 そして、ワームとすれ違う瞬間にその頭目掛けて発砲。緑色の巨大な弾丸が、一撃でその竜の頭蓋を砕き、絶命させる。




 アエアリスはそのまま、ワームの亡骸から視線をそらしてタウルスの方に向き直る。



 彼は、迫って来たワームに拳骨を喰らわせていた。



 それだけでワームは、同じように頭蓋が砕かれ地面に埋没する。




「ヘィ……まだいやがるな」



 周囲から、わっ、と歓声が上がる中、アエアリスはタウルスに耳打ちする。



「……ヘイ、タウルス。ワームってなぁよォ。群れる生き物だったかい?」


 タウルスは難しい顔をしたまま、軽く腕を組み口を開く。


「俺は聞いた事がないな。ワームは群れは作らないはずだ」


 チッ、とアエアリスは舌を打ち……軽くトレードマークのテンガロンハットに触れた。


「ヘィ、間違いねぇな……魔族の仕業だぜこいつはよ」



 うむ、とタウルスは頷く。魔族の中には、獣やらなんやらを操る能力を持つ者がいる。ワームの動きを見るに、完全に操れている訳では無いが……。



「……件の話し、やはり真かもしれんな」


 タウルスの呟きに、ハッ、とアエアリスは鼻で笑いながら、銃を握り歩き出す。



「かもな。だが、まずはこのワーム共の全滅が先のはずだぜ。

 オレ達が二人もそろってて犠牲者を出してみろよ。『十二聖護士(じゅうにせいごし)』の名折れだぜ。ライブルの奴になに言われるか解ンねーよ……ふっ」



 それを聞いて、タウルスはそうだなと笑った。笑って……二人の目付きが変った。


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