2.仲間はぶりっ子僧侶と哲学家盗賊?!
「もうやってらんないよ!」
「「「えっ?」」」
「マホ、急にどうしたの?」
緑色の石の杖を持つ少女が尋ねてくる。
「全然魔王見つからないし!あなた達戦わなさすぎ!!おかげで私しかまともに戦ってないんですけど!!
しかも、こんなに倒したって魔王を討伐する時は4人でしょ??私だけ強くても意味ないよ!みんなで戦って強くならなきゃ。」
「な-んだ、マホ。そんなこと考えてたのか。だいじょうぶだいじょうぶ!」
勇者が無駄に慰めてくる。
「何も大丈夫じゃない!」
「俺は勇者!こうみえて不死身だぜ!」
「あなたが不死身でも私たちは有死身だし!」
だから、強くならなきゃって言ってるのに。
「もし、戦って顔に傷でもついちゃったらソウ、お嫁に行けな-い。」
先ほどの少女が言ってくる。
あっ、一応紹介しておくと、この子は僧侶のソウ。緑色の杖と白いローブを来てるから、一応僧侶っぽいんだけど……。
実はすっごく臆病ですぐ回復呪文使うから、すぐMP無くすの。
あと、すっごく結婚したいらしい。だから、いわゆるぶりっ子を貫いている。言葉によく“~“がついている。彼女いわく、自分を守ってくれる殿方を見つけるために、旅してるんだって。不順な動機だよね、全く。
ちなみに、彼女の好きなタイプは……。
「イケメンで優しくて-、お金持ちで-、ハーバード大学行けるぐらいの頭脳を持っていて-…運動神経が良くて-…料理ができて-、センスが良くて-、服もおしゃれで-…背が自分より5センチぐらい高くて-…絵も歌も上手くて-、私のことを一番に考えてくれて愛してくれる人!」
あのさ、いるわけないじゃん。そんな人。
もしいたら今すぐ名乗り出てください。
「傷付かないためにも、強くなるの!」
「そういえば、強い女子よりもか弱い女子の方がモテるって聞いたことあるなぁ。」
論点がずれてる。
「多分だけど、魔王倒した方がモテるでしょ。ってか、地味に私のことモテないって言うのやめてもらっていいですか?」
一瞬の気まずい間。
「…地味に自分強いですアピールもやめてもらってい-い?」
「うん…それは思った。ゴメン。」
失言には気を付けないと……。炎上しそう。
「世界を平和にするために、暴力は良くない。」
私の左隣の、屈強そうな男が言う。
一応紹介しておくと、彼は盗賊のトウキ。
一言で正義感&倫理観の癖が強すぎな人です。
彼のことも、紹介したかったんですけど、残念ながら時間が押してるので……カットしたいと思い……
「ノー!ウェイ!!」
あ、はい。すみません。冗談です。いやー、怖い怖い。
えーっとね、この人は正義感が強いあまり……争い事とか、法律違反とか、許せないみたい。だから魔物とか、倒せないんだよね。えっ、じゃあ何で盗賊なんてやってるの……?あんなん宝盗むだけじゃないの?知らんけど。
「いや、暴力は良くないのは分かるよ。でも…」
「何事も話し合えば分かる。人間は話し合って分かりあうことが生きる源なのだ。」
出た。彼の倫理観。
「…相手、魔王なの。人じゃないの。」
「だとしても、暴力は良くない。言葉が通じなくとも、表情や伝えたい思いを伝わるまで伝えることで世界は平和に一歩近づくのだ。」
トウキ、盗賊よりも哲学家の方が向いてそう。
「戦いよりも楽しいことがあるでしょー!」
勇者が一番言っちゃいけないセリフが今出たよね。
「魔王を倒さないと!使命があるんでしょ!」
「あーあ、ネットでバズりたいな-。それで、俺考案のカップラーメンとか売りたい-」
全然聞いてないし。あと、み○きんは私も食べたい。
はぁ、こんな感じで私の仲間は全くやる気がないみたい………。いったい魔王討伐はいつになるのやら………。
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一方その頃、王国では。
全く人気のない森のなかの孤城。
そこに、ただ聞こえてくるのは、そよ風の音と、川のせせらぎ、ケージの中のインコの声、そして。
とある少女の歌声だけだった………。
私は小鳥 ゆり椅子揺られ
部屋で一人 静かに泣くの
私は小鳥 ケージの中で
歌うインコに 私を重ねる
もしも この鍵が 開け放たれていたら
自分の羽で 空を翔びたいの
だけどそれは 許されないわ
分かっているから 鍵開けないの
トントントンと、控えめなノックの音。
「お嬢様。入ってもよろしいでしょうか。」
扉の向こうから、聞きなれた声が少女に呼び掛ける。
「……ええ、いいわよ。」
「失礼いたします。」
そういって入ってきたのは、一人のメイドだった。
「お嬢様。陛下がお呼びです。」
「ええ、国王の専属メイドのあなたが来たってことは、お呼び出しでしょうね。」
少女はため息をついた。目に少しばかり、涙が溜まっている。
それで、いたたまれなくなったのか、メイドがこんなことを言った。
「あの…お嬢様…やっぱり私言って参ります。今日は、体調が優れないらしいと。」
「いや、仮病を使う必要はないわ。…やっぱり、はっきり言わなきゃダメかしらね。」
「…お嬢様?」
「父上の所まで連れていって下さる?」
「はい!!」
こうして、2人は部屋を抜け出した。
コツコツと、足音だけが響きわたる廊下の途中で、少女はメイドに訊いた。
「父上は今も怒っていらっしゃるご様子だった?」
「はい…正直言うとそうです。」
その言葉に、少女は震え上がるような思いだった。
当たり前だ。だって自分は父とはいえ、国王を怒らせてしまっているのだから。
「でも…陛下も陛下で、お嬢様のことを一番に考えてのことでしょうし…」
それは少女が一番よく分かっているつもりだ。
「私のことを考えてくれてるならもう放っておいてくれないかしら。」
「お嬢様。それは陛下に直接伝えなければなりませんよ。」
「言われなくても分かってるわよ。」
「では…ノックいたしますね。」
メイドが扉をノックする。コンコンコン。
「陛下。王女を連れて参りました。入ってもよろしいでしょうか。」
返事の代わりに、扉が開いた。
ゴゴゴゴゴという重低音。
少女は昔からこの音が、なぜか苦手だった。
なんだか、自分の身分と、責任の重みを感じてしまう気がしたから。
開口一番に、国王が言った。
「今日は二人で話したいのだ。席を外してはくれまいか。」
身分が下の者にもこの丁寧な態度。
この場面だけ見ていれば、それはそれは完壁で、寛容で、国民思いの国王だと思うだろう。
「かしこまりました。それでは失礼します。」
メイドは言われた通り、玉間から出ていく。
「お父様。」
「この間、言ったことは本気なのか?」