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その道を歩ませてすらもらえなかった

作者: 羽入 満月

 目の前で「構ってほしい!」と言う副音声が聞こえるほどのため息をこれ見よがしにつかれ、私の方がため息をつきたい衝動に刈られたが、グッとこらえる。


「……なに?」

「私、不安で……」

「……で?」

「話を聞いてほしいの」


 そう訴える彼女の話に耳を傾ける。

 話の内容は、ここ最近ずっと同じ話である。


 まだ起こってもいない、未来への不安をただひたすら聞かされる。

 同じ話を聞かされる私の身にもなってほしい。


 しかも。


 いくらアドバイスしても「でも」と、ネガティブな発言をし、大丈夫だって!と励ましても「だって」と後ろ向きな発言ばかりする。


 それに、毎回同じ話を堂々巡りでされるのだ。


「私はなんて、だめなやつなんだ」

「みんなに顔向けできない」


 と。


 そして、不安になっている事柄をネットで調べては、自分を自分で追い詰めていく。


 暗い顔でため息をつき、死にそうな顔で毎日周りをうろうろされる。

 話を聞いたって、ネットの言葉を信じて、勝手に不安をましましにして、こちらにぶつけてくるのだ。

 私のアドバイスなんて聞いてないくせに。



「みんなが私をダメな奴だって思ってるかもしれない」


 思ってないよ。誰もあなたに興味なんてないよ。

 だって、私も他人に興味ないし。

 第一、私、人間関係運が最低な方にカンストしてるんだよ?



「色々考えたら、やっぱり自分のせいで……」


 じゃぁ、考えるの辞めたら?

 いくら考えたって過去は変えられないし、未来の起こってもいないことを不安に思って、落ち込まれても困るんですけど。



 あれやこれやいったって、結局はあれでしょう?


「私、落ち込んでるの。構って!ねぇ、私かわいそうでしょう?だから、一緒に暗くなりましょう。落ちこみましょう」


 って。


 そんなこと思ってない!って、いくら言われてもやってることはそうなのよ。


 同じ話をぐるぐるされて、アドバイスしたって聞いてない。

 悩んでるのが好きなんでしょう?それにかまってちゃんだから、鬱陶しいのよ。


 ごめんなさいね。

 普通、女の人の会話って、「そうだね」って同調したり、慰めあったりするんでしょ?

 でもね、私は無理なのよ。

 話を聞いたら、こうしたら?ってアドバイスがしたくなっちゃうの。

 結論が欲しくなっちゃうの。



 そんなことない。

 あなたは優しい。

 話を聞いてくれるだけで、嬉しい。

 人間関係運ないって言うけど、そんなことない。

 私はとても助かってる。


 って?



 でもね。

 そうなったのはあなたのせい。


 私の話なんて、聞いてない。

 だから、私は話すのを辞めた。


 私の話を聞いたことで、不安になってうろうろされるのいやだから。

 だから、建設的な話し方をするようになった。


 過去も未来も、考えたって答えがない。

 考えたって仕方がないの。

 だから、私は無駄なことを考えるのを辞めた。


 能天気、悩みがなさそうって言うけど、表に出さないだけ。

 優しいって言うけど、めんどくさいから当たり障りなく生きてるだけだよ。


 泣くことも、怒ることも、不安を出すことも、何もかも全部出来ないようにしたのはあなただから。


 あぁ、人間関係運に関しては自分を中に入れない図太さには、感動したよ。

 言わないけど。


 なーんにも考えずに毒だけ振り撒いて、相手の気分を最悪にして、それでも私は可哀想っておもえる性格が羨ましいよ。


 小さい頃から、そんな感じの扱いだったからね。

 私が淡泊になるしかなかったんだよ。

 それにすら、気づいてないかもしれないけど。


 もし、あなたが自分の親じゃなきゃ、私はさっさと見切りをつけて、無視をして、知らない振りを決め込んでるよ。


 私は、そうやって自分の感情に素直に生きていけれない。

 いまさら、そう生きていこうとも思わないけど。


 ただひとつだけ言えるなら、

 私はその道を歩ませてすらもらえなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] そんな相手なら主人公はフェードアウトした方が良いだろうな……と思いつつ読んでいたら、えっ、身内? はっと思わせられました。 家族だからこその甘えなのか、そもそもそういう性質なのか。 主人公が…
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