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「ところで……記憶がないのはいつから?
全て忘れてしまった、という訳ではなさそうだけど」
小首を傾げながら片腕を組み、顎に手をやる仕草が余りにも自然で、さも「今日のおやつ何食べる?」くらいの感覚で訊かれているかのように錯覚してしまうが、異世界に転生して2日で怪しまれる演技力のなさを、リーリエは心の底から悔やんだ。
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時は半刻ほど前に遡る。
「お招きいただきありがとう」
「招いた訳でないのですが……」
舞踏会の時の煌びやかな印象とは異なり、少し落ち着いた印象のクラディスを、本当に来たのかという驚きと