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二十三話 おにぎりVSゴブリン

「ゴブゴブゴブ」

「ゴブゴブゴブ」


 少し進むと、開けた場所が見えてきた。そこではゴブリンの大群が食事をしていた。更に奥の方を見ると、ゴブリンが住んでいるであろう洞窟の入口が見える。

 

 ……ゴブリンがどんな食事をしているか、と言うと。


「ゴブゴブ。スペアリブ用の味付けうまくいったゴブ。うめぇゴブ」

「チキンはちょっと塩をかけすぎなんじゃないゴブか? 次からは気を付けろゴブ」

「にんじんは甘いし、ピーマンも良い苦みゴブ。あ、カボチャ取られたゴブ」

「キングゴブリン様はどこゴブー? サーロイン焼いていいか聞きたいんゴブがー」

「キングゴブリン様なら今日のために作っておいたバニラアイスを取りに行ったゴブよー。サーロインはちゃんと分けるなら好きにしろって言ってたゴブ」

「やりぃっ! 楽しみにしてたんゴブ」


 バーベキューであった。チキン・スペアリブ・サーロイン・野菜・その他もろもろが用意された、非常に豪勢なバーベキュー大会が開かれていたのだ。ゴブリン達はいくつも用意されている鉄板の前に群がって、串に刺さった野菜を食べたり皿やトングや箸を丁寧に使って肉を取ったりおいしそうに焼かれた食材に舌鼓を打っていた。


「バーベキューしてる……。おいしそう……」


 草木の陰で隠れてその様子を見ているプリマリアは、よだれを垂らしながらそう呟いた。彼女にとってはかなり久々に見る人間界のおにぎり以外の料理。しかもおにぎりに飽き飽きしてて食のストレスが溜まっている状態。料理を欲しがるのも無理はない。


「あいつらが人間を襲ったゴブリンで間違いないようだ」


 同じく草木の陰で隠れてその様子を見ていたルイスは、手持ちの依頼用紙とゴブリンを比較して人間を襲ったゴブリンで間違いないと結論付ける。


「本当ですか? 大分平和そうな集団ですが」

「襲われた人間の証言と合致している。おにぎりを探している最中に野外で料理していたゴブリンの集団に自分の作ったおにぎりを食べさせようとしたら襲われた、と」

「……それ、ゴブリンさん達の正当防衛ですよね? この世界の人間、爆発する土くれおにぎりしか作れませんでしたよね? 誰だって拒否するかと」


 ルイスは事前に聞いてた証言とゴブリンの状況が一致しているとプリマリアに伝えた。が、プリマリアには明らかに人間の方が悪い状況だとしか思えなかった。


「一刻も早く対処しなければならないな。もしこのままあいつらに料理を続けさせたら、近くに住む人間に肉食・野菜食・デザート食文化が芽生えてしまう!」

「芽生えさせたほうがいいでしょその文化。今の食文化の方が不健全だと思いますよ」

「行くぞ、プリマリア。おにぎり食文化に満ち溢れたこの世界の平和を守るんだ!」

「ちょ……勝手に出ないでください! あと、そんな歪んだ平和いらないっ!」


 そしてルイスはそう歪んだ決意を胸に抱き、隠れるのをやめてゴブリンの前へと姿を出す。プリマリアは止めようとするが、ルイスは目をギラギラさせてやる気だ。


「うわっ! 人間だゴブっ!」

「なんでよりによって今日来るんだゴブっ!」

「早く抑えつけろゴブっ! 爆発するおにぎり投げられるぞー!」


 突然現れた人間に、ゴブリン達はパニックになる。慌ててほおばった食べ物を飲み込んだり、食器を近くに置いたりした後にゴブリン達は焦りながらもルイスを捕まえようと彼の方へと向かっていく。


「<<おにぎりスロー>>!」


 だがルイスの方が攻撃は早かった。そう呪文のような単語を呟いたのち、ルイスは持っていった道具袋からおにぎりを取り出しゴブリンの口めがけて投げまくる。


「ぎゃっ!?」

「げふっ!?」

「ぎにゅっ!?」


 おにぎりは全てゴブリンの口を塞いだ。おにぎりを投げつけられたショックゆえか、それとも呼吸がしづらいからか。ゴブリンの群れは次々に気絶し、そこはぐったりとした緑色の者達で溢れるバーベキュー会場となってしまった……。




「これ、ゴブリンさん達悪くなかったですよね? 完全にこっちが悪いですよね?」

「大丈夫、見ていてくれプリマリア。すぐにゴブリンを反省させて食文化をおにぎりに染め上げてやるから……」

「もう勇者じゃなくて魔王だろあんた」


 ルイスの発言と行動に、かなりドン引きしたプリマリアであった。

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