七
困り果てた時、少女と同い年くらいの男の子が遠くから走ってやってきました。
少女の声を聞いて来たようです。
どうやら、二人はその時初めて会ったようでした。
男の子と話しているうちに少女が泣き止んだので私は一安心しましたが、男の子もあまり背が高くありません。
私の枝にかかった帽子に手が届くでしょうか。
男の子は枝に手をかけて私によじ登ろうとしましたが、細い枝が折れそうで、私はとても心配でした。
とうとう帽子がかかっている枝までたどり着けずに、男の子は降りてしまいました。
二人は私の根っこに腰掛けました。
帽子は諦めてしまったのでしょうか。
少女は泣き止んで男の子とお話をしていましたが、その声は少し悲しそうでした。
いつのまにか夕日が二人を照らし始めました。
すると、急に強い風が吹いてきて、帽子を軽々と宙へ投げ出しました。
その帽子は二人の目の前に落ちました。
二人はしばらく目を見合わせると、明るい声を上げました。
その時は、私も二人と一緒になって喜びました。
それからは、あの二人が一緒に遊んでいるところをよく見かけました。
少女が私の根っこに座って、男の子が来るのを待っていました。
私の下を二人の待ち合わせ場所にしていたようです。
男の子を待っている間、少女はよく歌を歌っていました。
そう、今、目の前の女の子が口ずさんでいる歌と同じ歌です。
昔の出来事ですが、女の子の唄声を聞いているうちに、だんだんと思い出してきました。
本当に、歌は不思議ですね。
なんだか懐かしい気持ちになりました。
あの二人は今頃どうしているでしょうか。
できるなら、もう一度会いたいです。