それぞれの理由がある
毎日更新できるか不安になってきました。
でもいいねとブックマークよろしく!!
ガチャリ
受付の老人が出ていって一分も経たないうちに入って来たのは、優太が一番気にしていた選手だった。
「おはよう、君は優太君だね。」
青いジャージを来ているので、それっぽく見えないが、顔ですぐに優太は誰だか分かった。
「プリンスナラ!お会いできて光栄です!」
「そんなに喜んでくれて、もしや、僕の大ファン!?」
「え?いや、まあそんな感じ?」
噂には聞いていたが、少し変わり者の反応だと優太は感じた。
「でもどうしてこの大会に出たんですか?」
「単純に実力試しだよ、王子だから、強くないと父上にしかられるんだ。」
「大変だなあ、俺もだらだらしてると赤岩さんにしかられるなあ、みんな同じなんだなぁ。」
「あははははっ。異国の地でも同じ感性を持ってる人がいて、嬉しいよ。」
陽気に笑う姿は王子というかは田舎の少年のようである。
ガチャリ
ドアが再び開き、入って来たのは緑色の厚いコートを着た三十代前半くらいの男とその男に隠れている12歳くらいのオレンジ色の髪の毛を持つ可愛らしい少年だった。
「ふん、プリンスナラと聞いてすごいやつかと思ったら、ジュエルと同じひ弱な男じゃないか」
「そんなこと言う相手じゃないですよ、マルタさん。」
「言っとくが、勝つのは俺だ!」
マルタはそう叫んだ。
「面白そうなやつしかいないな あはははは。」
プリンスナラも笑って答えた。
ガチャリ
「誰だ!俺の事をごみだといったのは!?」
入って来たのは異様に顔が大きくて、唇がたらこで、鼻の穴も大きい男。いかにもDJと言わんばかりのシャツを着て、そこには53と大きくポップ体で書かれている。全員感づいた。こいつがMr.53なんだろうと。
「あの、誰も言ってないんだけど。」(プリンスナラ)
「え?そうなの?こりゃ失礼。」
ガチャリ
「お主の持つ身ぐるみそこに捨てい、金は奪うが、心は奪わんから安心してくれ。お隣の国からやって来た、カーネダ・イスキ只今参上!世の中のお金全て手にいれる。もちろんクレシェンドダイヤもー!てことで宜しく若僧。」
「は、はい」
手を差し出された優太はずっと困惑顔だった。
「正々堂々、それが金の近道。とは上手く言ったものよ。私の言葉だがね。」
ガチャリ
「俺が最後とは、何か気に食わねえな。」
ドアの向こうからやって来たのは赤黒い炎が描かれたフードを被っている男だった。年齢は優太と同じくらい(優太は19、優花は16、賢は15、赤岩は63)で、目の中の緑色がこちらを見ているのが少し怖いように感じた優太は手を強く握った。
「どうせ俺が勝って200000ルーンをいただく。」
「それは僕……」
「口出しをするな。邪魔だ。」
「あっ……」
王子に対しても冷酷な態度のその男の名はファウスト。
賑やかだった部屋が静まりかえる中、彼が座るドサッと言う音が冷たく響いた。
「全員揃いましたので、トーナメント表を発表します。」
大崎優太 (カブト)VSジュエル(クロッサー)
カーネダ・イスキ(ハントラード)VSハカセ(タイト)
ファウスト(ファイブ)VSマルタ(マル)
プリンスナラ(フォルスター)VSMr.53(ブロンズ)
()はパートナー名
「厳選なる抽選の結果、このようになりました。30分後に第一試合を行いますので、準備をお願いします。」(ナレータートム)
「よし。(イメトレイメトレ)」
「なお、試合前にここで戦闘があった場合、乱闘に関わっていた人及びパートナー全員失格になります。ご気を付けください。」
優太は思った。あのファウストというやつは異様なオーラがあった。他の選手からも変なオーラを感じるが、ファウストは特に異様だった。
なんて事や、戦闘のイメージトレーニング、お金の使い道などを考えているうちに30分が過ぎていた。
「大崎優太さん、ジュエルさん、パートナーを連れてスタジアムのステージに上がってください。」
「はい」
「いってきます、マルタさん」
「焦るなよ」
「……」
優太はやり取りを聞いて少しモヤモヤを感じた。
「やってやろうぜカブト」
うなずく力強さに優太は安心した。
「いくよ、クロッサー」
ジュエルの声は震えていた。
「よろしく、ジュエル」
「ええ、優太さん」
二人は握手をしてから入場すると、それと同時に黄色い歓声が飛び交った。集まった観客は1500人。小さいスタジアムなのでこれでも満員である。
「まもなく第一試合が、始まります!!!!!!」
「お兄ちゃーん!」
「優太ー」
スタジアムの上の方で手を振っている優花と賢とナオコさんを見つけたので手を振り返した。
「私の名前はナレータートム。ルールを説明します。ルールは簡単!舞台で戦うのはパートナーのみ!主は専用のケージに入ってもらい、指示を出すことしかできません。ケージを破ると失格です。武器の持ち込みは禁止ですが、舞台の破片を投げつけるなどの行為は許可します。それでは、試合、スタートです!」
潔いゴングの音がスタジアムに響き渡り、歓声は一層大きさを増した。
「クロッサー、スラッシュクロウドロップ!」
ジュエルの指示を受けたクロッサー(ノコギリカブトの種)は角で地面を叩いた。
「負けの条件は降参することとこの舞台から落ちて10秒経つことの二つです。これ以外は負けが認められないので注意でーす。」
叩かれた地面から1メートルくらいの白い刃が突き出てカブトを襲った。
「かわせ!」
カブトはピょっと飛んでかわし、その勢いのままクロッサーの右っ腹にぶちかましを打ち込んだ。刃は観客席に突き刺さって席を2つほど破壊した。
ズゾー......。クロッサーは引きずられた。
「怯むな、今度はトリプルクロウだ!」
今度は三つの刃がカブトに迫った。
「グロウアップ!」
カブトはグロウアップを発動した。
ブゴウィイアアアアン!
三つの刃はカブトの角の大きな振り払いの一撃によって消え去った。
「そんな......。そんなっ……。」
ジュエルは立ち尽くした。自分の大技がことごとく破られ、しかもクロッサーが殴られてもうボロボロだからだ。
「ざんねんながら、実力差がありすぎたようだな。俺も君のパートナーを無理やり殴ったりしたくない。さっさと降参してくれ。」
「嫌です!僕が勝たないと、あの人が、あの人が、あぁ。うああ!」
観客席からは痛々しいクロッサーの姿を見たくないと目をそらす人が三人に一人はいた。
「いつも強いお兄ちゃんを見るのが楽しかったのに、今日は楽しくないよ、お姉ちゃん……」
「……」
優花もなにも言えなかった。お互いの正義を理解できてしまうときが一番辛い。
「クロッサー!サイドロックロウだ!これで決めてやる!」
クロッサーは最後の力を振り絞り、カブトの右側から角を突き立てて突進してきた。そして角でカブトを掴み投げ飛ばそうとしたが、カブトは体を反転してクロッサーを下側に持ってくると、そのままプレスをしてクロッサーを踏み潰した。
「もう動けないだろ、無理すんなよ。」
「う、うう、うああクロッサーーーー!!」
「痛くしないからもう動くな」
カブトはクロッサーをふっ飛ばし舞台から落とした。
「10......9......8......」
このままテンカウントは終了し、カブト及び大崎優太の勝利となった。
「大崎優太さん!二回戦進出です!」
「ジュエル、君はきっとまだまだ強くなれる。無理せず自分を磨くんだ。」
「……。」
2人の健闘を称えて観客席からは大きな拍手がおこっていた。
ジュエルは泣きっぱなしだった。二人は待機室へ戻っていった。
「ごめんなさい、マルタさん、僕は、勝てなかった……」
「俺はお前を恨むぞ、大崎優太!」(マルタ)
「……」
優太はなにも言わなかった。
「第二試合はカーネダ・イスキさん対ハカセさんです。」
「フム、私の番だな」
「僕を楽しませてよね、おじさん」
「言ってくれるぅ。200000ルーンは俺のものよ。」
観客からは再び大きな拍手がおこった。
二人は舞台に上がり、向かい合った。
「ねえ、君。」
「はい、トムでございます。」
「この舞台にある石は攻撃に使ってもいいんだよね」
「ええ、構いませんが……あ、でもあなたのパートナーが腰に刺している拳銃は私に預けてください。使っては行けません!」
「はいはい。」
ハカセはタイトの腰から順を外してトムに手渡した。
「それでは、試合開始ーーー!!」
カーン!!!!!!
「よし、できた」
ハカセのパートナー、タイトは大きなブレス銃を腰につけていた。
「……!?何があった!?」
「ちょっと、武器の持ち込みは禁止っていったでしょ!?」
「ちがうよ。作ったんだよ。」
「は?」
観客もカーネダ・イスキも何がおこったか理解できていなかった。
「僕のスキルはトゥインクル・ベルって言うんだ。僕は道具を作るのが得意なんだけど、何故か僕が道具を作っている間は周りの時間が止まるんだ。おじさん、君から見て左側の舞台が少し削れてるだろ。」
「っ!?」
「それを少し錬金してこの銃を作ったんだよ。」
「それはありですね、舞台の石を武器として使うのはアリなので。」
「ふん、時間が止まるだかなんだか知らんが、関係ないわこの小僧が。」
「行くぞタイト、発泡」
(タイトはオオクワガタの種。ハカセのパートナー)
カーネダ・イスキのパートナー、ハントラード(モーレンカンプオウゴンオニクワガタの種)に向かって紫色の光弾が放たれた。
「打ち返せ!」
ハントラードは大顎を金色に光らせ、光弾の進行エネルギーを変更し、ブレスを打ち返した。
打ち返されたブレスをタイトは飛んでかわした。
「少しは骨があるみたいだね、おじさん」
「後ろだぞ。」
「何っ!?」
ハントラードはタイトの後ろに回り込み、黄金に輝く大顎でタイトを掴み、投げ飛ばした。
タイトは舞台の外に落ちた。すぐに起きあがって、舞台に戻ろうとしたが、タイトの体は動かなかった。
「何でタイトが動けないんだ?」
「ははは、ハントラードの放つ黄金の光は体を拘束する鎖として働くのだ。お前のパートナーを掴んだときにその光を触れさせた。黄金束縛だ、思い知ったか。若僧。」
「思い知るのはそっちだけどね。」
ハカセは小さくつぶやく。
既にカウントはもうあと3カウントまできていた。
「なるほど、光に触れなきゃいいんだな。ペラペラと喋ってくれて助かったよおじさん。」
その言葉がハカセの口から放たれていたときにはもう既にタイトはハントラードの背後にいた。
「どうやって抜け出した!?」
「簡単だよ。僕のスキルは時間を止めている間、他の人やパートナーには触れることができないけど、他の人のスキルは無効化出来るから。その間に抜けたのさ。」
「くそー!」
「発泡」
「かわせ!」
「無理だよ」
「!?」
ハントラードの足には鎖がつけられていた。
「束縛返し(カウンターホルダー)」
ハントラードは逃げることができないまま舞台の外に落とされ、逃げようとしたが、足に鎖がついているのでできず、テンカウントが終了した。
「くそ~!この俺が負けるとは」
「僕が強すぎるだけさ」
「ぐぬぬぬぬ」
「ハカセさん、 二回戦進出です!」
「ねえお姉ちゃん、あの人メチャクチャ強いね」
「時間を止められるなんてもうチートよ」
「さあ次の試合は、ファウストさん対マルタさんでーす!」
「長引かせるなよ。」
「ふん、貴様など、秒で片付けてやる!(ジュエルが敗れた今、私が勝たないと、あのお方の未来はない)」
「入場でーす!!」
ファウストは余裕の表情を浮かべていたが、顔は笑っていなかった。マルタは焦っていた、大会での勝利が彼にとっての、全てだからだ。
「試合を開始しまーす!!!!」
カーン!!!!!!
向かい合った二人及びそのパートナーは観客の歓声に急かされるように威嚇を始めた。
「行けっ!マル!真っ直ぐにだあっ!!」
最初に仕掛けたのはマルだった。
マルはファイブに向かって一直線に飛んでいった。しかし。
マルの右側に赤黒い穴が出現し、そこからファイブが出てきた。
「何っ!?」
マルはタックルされて吹っ飛んだ。
「俺のスキルはゲートオブキラックァ。この次元の中だけだったら、俺とファイブを好きなところに移動させることができる。」
「つまり、実質的な瞬間移動……?」
「ふん、そうだ。そんなダサイ名前ではないがな。」
「行くぞ、ファイブ」
マル(マキシムマルバネクワガタの種)は何度も何度も攻撃を仕掛けたが、ファイブ(ゴホンヅノカブトの種)の謎の穴から出て来る奇襲攻撃に翻弄され、全く敵わなかった。
「降参しないのか?しないならしないでもっと痛め付けてやるさ、ふはははは!」
ファイブはマルの下側から出現し、マルを空中に突き上げた。そして今度は上空に出現し、マルを地面へ叩きつけた。これを繰り返されると、疲れているマルはもう抜け出せない。
「いいぞ、ファイブ、もっとだもっと、ふははは!」
「やめてくれ!!降参だ!」
「ここでマルタさん、降参です。ファイブとファウストさんの勝利~!」
優太は立ち尽くした。ジュエルのことを考えるとなおさらだった。
マルタはいい大人だったが、大泣きしていた。自分はどんなに弱いのかということを思い知らされたというのが一つ。そしてもう一つは
「すまない、街の衆......。ううっ……。」
ある人たちへの慈悲であった。
「ジュエル。すまない、私はダメだった。」
「うぅ......。」
「大丈夫だよ、約束したでしょ。」(優太)
「でも……。」
「続いての対戦は、プリンスナラさん対Mr.53さんです」
「貴様か、私のことをごみだといったのは!」
「言ってないって……」
「あら、そうなの?こりゃ失礼」
「選手の入場です!」
観客席からは黄色い歓声が飛び交った。
読んでくれてありがとうございます。近々質問コーナーをここのあとがき部分でやろうと思います。お楽しみに。