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ザ・ページ  作者: 名もないP
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イライと中村彩

今日から第四章スタート。この章から政府軍とかも動き出します。この章今までに比べるとかなり長いのでボリューミーな内容をお楽しみください。


い・い・ね・と・ぶ・っく・ま・-・く・よ・ろ・し・く



「シュウト、残念だったね、せっかく我慢して待ってたのに、コンピューターが捨てられていたなんて……」

「クイーヌスってやつ、許せない!」

賢はクイーヌスのやっていたことを思い出し、怒りをあらわにした。

「お前らにはホントにわりいことした……。無駄な時間を過ごさせちまった……。すまない。そして、ありがとう。俺のために、戦ってくれて。」

「ううん、気にしないで。シュウトは何も悪くないさ。」

「ポーラちゃんのことについては、どうしようか。」

「お前らがよければ、俺をこのまま船に乗せてほしい。ポーラは必ず生きてる。俺が見つけてやらなきゃならねえ。」

「もちろんいいぜ。シュウト、めっちゃ強いから、頼りになりそうだしな!」

優太は白い歯を見せて二カッと笑う。

「ありがとう……。」


ぐぅ~……


「あ」

ハカセの体が空腹を訴えた。


「というか、優花がほぼ動けない今、誰が料理するんだ?」

「……」

シュウトの疑問に全員が固まった。そして誰が料理を作るのかの会議になった。ベットから上半身だけ起こした優花とシュウト。そしてその回りに座る三人。

「えっと、取り敢えずお兄ちゃんは料理しないでね」

「う、うん。」

「どうしてそうなるんだ?」

シュウトが疑問を口にした。

「お兄ちゃんが作った野菜炒めが真っ黒だったことがあるんです。」

「やべえな。」

「悪気はないよ。気づいたら焦げてたんだもん。」

「お兄ちゃんは食べ物を炭素にする天災だからね」

「誉めてないよね、それ。」

「で、どうしよう?」

「なんだかんだ、賢がやるのが一番いいと思う。」

「僕が?」

「ハカセさん、ずっとなんか遠い方を見てるし」

「ごめん、僕は料理ができなくて物作りに専念するようになったって言うくらい料理が苦手なもんでね。麦茶と間違えてお酒を飲んだり、唐揚げを揚げるじゃなくてレンジに入れようとしたこともあったし。だから、賢が作った方がいいと思うよ」

「プッふはははははは!はーっはっは。」

「なんだよ酒お化け」

「なんだその間抜けエピソード、ははは!腹いてえ!」

「と、とにかく賢に任せるよ」

「分かりました。」

と、いうわけで、賢がご飯を作ります。(優花の全身火傷が治るまで)。


「賢が作ったおかゆ美味しいね」

「お姉ちゃんの料理作ってるのを見てきたからね。」

「俺も見てきたけどできないのは何でなんだろ?」

「多分、才能の差だよ」

「「はあ。」」

優太とハカセは深く冷たいため息をついた。


そして一ヶ月が過ぎた。

「良かったな、優花。もうすっかり元気だな。」

「うん、リハビリ手伝ってくれてありがとう。」

「俺もすっかり良くなった。お前にリハビリ手伝ってもらうのは気にくわなかったがな。」

シュウトはジーっとハカセを見つめた。

「仕方ないだろ、賢は毎日の料理で疲れてるんだから。」

「よし、じゃあビラーク島に出発だ!」

「「「「おーーう!」」」」

そして舵はビラーク島へと向かって進む。


~ビラーク島~

「出たぞ~!デュエラーだ!」

「ヒョヒャヒャひゃひゃひゃひゃひゃ!」

水を操るデュエラー 、ミガラ及びそのパートナー センス(ショウジョウバエの種):懸賞金12000000ルーン


「今月2回目だ!また倉庫を狙っているのか!?」

「みんな逃げろ~!」


逃げまとう人々の中に、静かに下を向いて立っている警察官がいた。


「何が目的で来た。ミガラ。懲りない奴だな。」

「食料庫にある 王トウモロコシをボスが欲しがってるんだよ。よこせ。」

「今回もそれが目的か。二回もやってくるとは相当欲しいんだな。」


ここ、ビラーク島には珍しい食材が詰まった食料庫がある。入っているのは貿易によって獲得した野菜や、牛肉など様々だ。


「俺は暇じゃないんで、すぐ終わらせるぞ。」

「センス!アズマ!」

その叫び声を聞いたセンスは空高く飛び上がって、上からどんどん水の爆弾を落としてくる。

バシャアン バシャアンバシャアン

警察は軽い身のこなしで全てかわした。

「(水のエネルギー量が以前と変わっていない。これなら勝てる。)行くぞ。薔薇駄義山神(バラダギサンジン) (警察のパートナー ミズカマキリの種)」

「相変わらずすばしっこいやつだ。」

独り言をこぼしたミガラの真上に警察は音をたてずジャンプしていた。

「あいつどこ行った?」

キョロキョロ見回すが見つかるはずもない。真上から警察とバラダギサンジンがミガラとセンスをそれぞれ攻撃した。

「ヒャー!(; Д)゜ ゜」

ミガラとセンスは頭を打たれた衝撃でその場に倒れ込んでしまった。

「これが技ナンバー02。黄金のコンドルだ。」

「ぉ、覚えてろー!!」

ミガラは起き上がって猛スピードで逃げていった。




「よし、皆出てきていいぞ!」  

「うわーい!今日もイライさんの勝ち!」

「俺は負けないさ。みんなの平和を守るための警察だからな。」

「イライさんカッコイイなー」

「君も警察になるかい?」

イライは楽しそうに子供たちと話していた。しかしその光景を家の窓から見て喜びつつも、笑顔になれない者がいた。

「イライさん……」


~約1ヶ月前の政府軍北の支部~

「クイーヌス要塞を破壊したこのデュエラー達に懸賞金を設定しようと思うんだけど、いくら位が妥当なんだっポ?」

クルッポー少将:北の支部の軍人(鳩の半鳥人)が言った。

「クイーヌスが倒されるんざ、相当だなあ。」

ディエス中将:北の支部の軍人

「トランペルン中将が居ないまま決めるのは少々気が重いけど、しょうがないっポ」

「30000000は確定だな。」

「部下達にも懸賞金を付けるっポね。」

「シュウトは過去に懸賞金がかけられた身だ。大きな額を設定しろと伝えてくれ。」

その台詞を言った後、ディエスはゆっくりと立ち上がった。

「どこに行くんだっポ?」

「そのチーム優太とやらを観察しに行く」

「気をつけるっポ」


~ビラーク島の町~

「ただいま」

「お帰りなさい。イライさん」 

ミガラとの戦闘を終えたイライはバラダギサンジンと共に家に帰ってきた。そしてそれを出迎えたのは中村彩(なかむらあや)という名の20歳の少女だ(ちなみにイライは33歳)。清らかな黒髪にふくよかな胸。女性らしい丸い体のライン。パッチリした優しい目の小さな顔。彼女のルックスは男を悩殺するのには十分だ。要するにとても美人なのである。二人はここで暮らしているが、夫婦ではなくイライが住んでいた家に彩が居候している。

「怪我はありませんでしたか?」

「ああ、何ともない。ご飯はもう食べたかい?」

「ええ。冷凍のうどんを食べました。」

「そっか」


何気ない会話を終え、順番にお風呂に入った後、それぞれ別の部屋で就寝した。


~次の日~

二人は目覚ましのお陰で同時に目が覚めた。イライは顔を洗った後、警察としてふさわしい制服に着替えてパトロールにいく準備をした。彩もそれを見送ろうとしたが、二人は何やら外が騒がしいことに気がついた。

イライは勢いよく扉を開けて外に出た。そこには大勢の町の人たちと大きな船が見えた。船から一人の少年が飛び降りて来て、体を伸ばしている。そしてその少年は多くの人に見られていると気づいてもなんら気にすることなく船に向き直って言った。

「皆~出て来いよー!」

そう仲間に呼び掛けた。イライは拳銃を構えて船へと近づいた。そして降りてきた五人に拳銃を向けながら告げる。


「誰だ。何が目的で来た。」


低いながらもよく響くその声は優太達にも重くのしかかった。

「俺らはドート島って場所に行きたいんです。あとどのくらいで着くのか知りたくって。」

町の人達は安心していた。食糧庫を狙われているのでなければ良い、と。

「そうだな。」

イライは拳銃をしまって言った。

「俺の家に来るんだ。そこで話をしてやろう。」

「ありがとうございます。」

あまり整理されていない土の道を優太達とイライは進んでいく。イライの家の前では彩が心配そうに待っていた。

「ただいま。」

「その子達は?」

「聞きたいことがあるみたいだ。中に入れてやろうと思ってな。」

「そうでしたか。では、お茶を持ってきます。」

優太達は出されたお茶を飲みながら聞いた。

「ドート島に会いたい人がいるんですが、そこって誰もいない島なんですか?」

「そうだなぁ、珍しいキノコとか麦とかが育つ島だから、それ目当てに来る人が多少いる程度だな。きっと。」

「良かったな。次に行く島はそんなに危険じゃなさそうだぜ。」

「いや、あそこにはクレイジーアントがいる。人の目を狙って毒を吐いてくる危険なやつだ。」

「そんなやつがいるのか、怖いな……。」

「ああ、そうです。危険と言えば、イライさん!」

「え?」

「昨日は疲れてそうだったので言いませんでしたが、何で私を戦わせてくれないんですか?私は強いです!イライさんがもし怪我していたらって心配で私は気が気じゃありません!」

「君は街を守るのが仕事じゃないだろう?」

「元々そういう仕事してたんです!私が戦えないせいで、イライさんを怪我させたくないんです!」

「……あの」

「あ、すいません急にこんな話して……私先に寝ますね。」

彩は深呼吸してから二階の寝室に行った。

「何かあったんですか?」

イライはふーっと肺にため込んだ息を吹いてから話し始めた。

「あの子は……彩は自分のせいでお母さんを亡くしたと思い込んでしまっている。だから次は誰かのために戦って役に立ちたいって言ってるんだが、俺だって彩に怪我をさせたくない。そう思ってる。」

「だから、急にあんな話が……」

「どうすれば良いのかは俺は思いつかない。彩の心の傷は、とても深い……」


~10年前  政府軍入軍式終了後~

「お母さん!お父さん!私も政府軍になれたよ!」

「うん!お母さんも嬉しいわ!彩!」

ハルカ:彩の母親 政府軍少将(この時29歳)

「しっかり強くなるんだぞ。彩。」

ディエス:彩の父親 政府軍中将(この時32歳)


「私!学校の先生になるの!」

「素敵よ。」

「体を強くして頭もよくなるために政府軍に入ったんだもんな。タンチョウさん。彩のことをよろしく頼みます。」

「ええ。立派な軍人にしてあげるわ。」

タンチョウ:政府軍教育係(この時45歳)


~授業初日


彩が教科書を抱えて教育棟に入ると、たくさんの人が廊下と部屋を行き来していた。

「(私、ここで勉強するんだ。)」

彩はワクワクが止まらなかった。自分の未来に胸が踊った。どんなことが起こるんだろう?想像してニヤニヤしてしまった。

「(おっと、教室に入らなきゃ。)」

一つの教室には40人程の年齢も人種もバラバラな生徒達がいる。彩は一気に緊張が走って、ワクワクがドキドキに変わった。

それでも彩は友達を何人か作り、うまくやっていた。


「おはよう、木沼くん。」

「んだなあ。おはよう彩ちゃん。」

木沼亮大(きぬまりょうだい)は彩と同い年の半魚人(タイの半魚人)だ。気さくな彼は彩ともすぐに仲良くなった。



「今日の理科の授業楽しかったね」

「んだなあ。でも二酸化炭素って何でO2CじゃなくてCO2なんだろなあ。」

「あはは。木沼くんは面白いね。そういえば、木沼くんは将来何になりたいの?」

「んだなあ。おらあ新聞記者になって、世界中を飛ぶんだ。」

「カッコいいね」

「んだなあ。彩ちゃんもきっとカッコいい先生になるよ。」

「可愛いって言ってよ。もう。」



はじめは順調だったが、13歳になり、中等部に上がってからは少し状況が変わった。


政府軍での教育機関では将来の進路にかかわらず軍人としての体力や知識を習得するための訓練が中等部から課せられる。


「(なにこれ……何が書いてあるかわからない……。)」

新しく教科書を手渡され、教師に言われたページを開くと、見たことのない記号や図表であふれており、頭の中が真っ白になってしまった。


周りに座っている他の生徒たちは目線が真剣過ぎて、助けを求めようにも、とても声をかけられなかった。


護身の授業では、身体能力の不足を痛感した。


「それでは、はじめ!」


彩が構えようとするや否や、対戦相手の半鳥人の男子は懐に入り込み、道着をつかんで床に彩の体をたたきつけた。


「カハッ……!」

彩は呼吸が一時止まった。


「おい!女の子相手にそこまでやらなくていいだろ!」

目の前で見ていた木沼が声を荒げる。半鳥人の男子はギロリと木沼に冷たい軽蔑の視線を送る。


「戦場で同じ言い訳が通用すると思うか?」

一言だけ残して、去っていった。


彩は何もしていないはずなのに動機が止まらなかった。

「彩ちゃん、大丈夫か?」

「……はぁ、はぁ、大丈夫。」

「保健室に行こう。俺が担ぐ。」

「あ、ありがとう。」


「弱者が……。」

授業を出て、保健室に向かう二人を横目に、彼はそう吐き出して水をのどへ流し込んだ。




「中村彩さん。」

タンチョウは書類をたくさん抱えながら彩に手招きをした。


~教育棟地下室~

「あなた。実は成績が不振なのよ。このままじゃ、上の階級に上がれないわ。」

「えっ……」

彩は突きつけられた事実に驚いた。そして猛烈な不安に襲われた。自分は皆と違う。出来損ないなのか?と。そんなことを思っていると、いつの間に涙が流れ出していた。声のない悲しみ。心当たりはずっとあった。劣等感をぬぐい切れぬ毎日だった。


「私は、学校の先生になれないんですか?」

彩は恐る恐る聞いてみた。もし否定の返事が来たらどうしようかと思った。だが

「いいえ、あなたならきっと立派な学校の先生になれるわよ。」

タンチョウは優しく言ってくれた。そして彩を抱きしめてくれた。彩はその温かい心と体温でまた涙が溢れてきた。彩はまた頑張ろうと思えた。 


こんな風に優しい人になろうと思った。


~それから2年後~


「中村彩殿。あなたを正式な卒業生として認めます。」

彩は教育段階を卒業し、これからは軍人として新たな任務に赴けるようになった。これからは研修生として三年間過ごしたあと、自由の身になる。研修生になれたのは彼女の努力が実を結んだ結果だった。タンチョウがあのとき励ましてくれたからでもあった。次に会ったときにはお礼をたっぷり言おうと思った。彩は研修生としての成績は非常に良好だった。体力測定でも、確認テストでも彩は優等生だった。そして数ヶ月たったとき。


「彩ちゃん。おれたちも、ついに戦場に行くんだぜ。」

「本当は行きたくなったけどね……。でも、軍人になっちゃったから、しょうがないよね。」

「夢のために、通らなきゃいけながったからな。」

「今までやってきたことをやれば大丈夫だよね......。」

「んだなあ。あ、そうだ。その任務にはハルカ少将とディエス中将も参加するんだってよ。」

「え!お父さんとお母さんが!?」

「んだなあ。彩ちゃんが研修生として頑張ってるって知ったら嬉しいだろうな。」

「会うのが楽しみ!」

「んだなあ。忙しくて、全然会えてなかったもんな。」

「教えてくれてありがとう、木沼くん。」

その後彩と木沼は作戦会議室に呼び出された。数百人の兵士達がその部屋に集められ、静かに待機していた。しばらくするとディエスが入って来て、無線を接続した。

「この任務はドーラ海賊団とドクターファンクビート、セロデュエラーズ連合軍らの戦争を食い止めることが目的だ。ハルカ少将が調べた情報によると、二日後にここから見て西の方向にあるトライ島にて戦うようにセロとドクターファンクビートが宣戦布告したらしい。私たちはヘリに乗り、上空から攻めて、空軍は陸軍の援護に回り、その後は全方向から攻撃を仕掛ける。以上だ。当日は空軍と陸軍でそれぞれ別れろ。

質問は?

……よし、解散だ。今日と明日は激しい運動は禁止だ。2日後に全力を注げるようにしておけ。」


※ネタバレ注意⚠








中村彩の過去編始まりましたね。彼女はこれから一体どうなってしまうのでしょうか。続きをお楽しみに。

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