第99話 メイドに洗ってもらって
俺はクレッタとともに、風呂に入っていた。
色々あって、クレッタの裸を見てしまったが、タオルを巻いてもらったので、これ以上は見ることもないはずだ。
「あっ!」
「うん?」
そんな中、クレッタが声をあげた。
何か、思い出したかのような声だ。この状況で思い出すこととはなんだろう。
「スレイドさん、申し訳ありません。私、とんでもない間違いをしていました……」
「うん? 間違い? なんだ?」
どうやら、クレッタは何かを間違えたようだ。
だが、そんなことに心当たりはなかった。背中を洗うのは、とても上手かったし、特に間違えたようには思えない。タオルの件も間違いという訳ではないだろう。
「普通、頭から洗った方がよかったですよね?」
「は?」
「背中の前に、頭を洗わないと汚れが落ちてきてしまいます……」
「ええ……」
疑問を覚えている俺に告げられたのは、そんなことだった。
確かに、頭から洗った方がいいとはいうが、そこまで気にすることではないはずだ。
どうやら、クレッタは意外なところにこだわりがあるらしい。
「クレッタ、そんなことは気にする必要はないことだ。俺はそんなことは気にしない……」
「そ、そうですか?」
「ああ、まったく問題はない」
俺からすれば、そんなことはとてもどうでもいいことだ。
どこから洗っても、あまり変わらない。
「でも、それでは私の気持ちが収まりません」
「うん?」
「お詫びに、背中以外を洗います」
「え?」
そこで、クレッタがそんなことを言い出した。
俺は、その提案について少し考える。少し気恥ずかしい気もするし、具体的にどこまで洗われるのかも気になってしまう。
だが、クレッタの提案を無下にするのも駄目な気がする。というよりも、クレッタが折れる気がしない。そのため、受け入れる方が早いと思えてしまう。
駄目な所は言えばいいし、きっと問題ないはずだ。
「わかった。それなら、よろしく頼む」
「はい。お任せください」
俺の言葉に、クレッタが動き始めた。
洗う準備をしているようだ。
「それでは、頭からいきますね」
「ああ……」
俺の頭に、クレッタがお湯をかけてくる。
その直後、クレッタの手が俺の頭を洗っていく。
「おお……」
その手つきに、俺は感心した。すごく気持ちがいいのだ。
大胆であるのだが、繊細でもあるその動きは、俺の頭を刺激してくる。
その力加減も動きも、中々に心地いいものなのだ。
「どうですか?」
「かなり気持ちいい……」
「それなら、よかったです。こういう時のために、色々と学んでおいて正解でした」
クレッタは、慣れた手つきで俺の頭を洗いながら、そんなことを言ってきた。
これを想定していたとは、中々すごいことである。メイドとは、このようなことまでできなければ、務まらないのだろうか。
単に、クレッタが勤勉なだけかもしれないが、色々と大変である。
「それでは、流しますね」
「ああ……」
クレッタは俺の頭にお湯をかけて、泡を流していく。
「拭きますね」
「ああ」
さらに、クレッタは、どこからからタオルを取り出し、俺の頭を拭いてくれる。
とりあえず、これで頭は終わりだ。次からが、問題になるだろう。
「さて、スレイドさん。次は、体を洗いますね」
「クレッタ、ところでどこを洗うんだ?」
「どこ?」
そのため、俺はクレッタに問い掛けることにした。
これは、聞いておかなければならないことだ。
俺には、クレッタに洗われるとまずい所はある。念のため、その確認はしておくべきだと思ったのだ。
「もちろん、全部ですよ」
「全部……?」
「何か、問題がありますか?」
「……いや」
俺の質問に、クレッタはそう答てくる。
あまりに自信満々にそう言ってきたため、俺は何も言うことができなかった。
きっと、クレッタもわかっているのだろう。クレッタだって、洗いたくないはずなので、きっと問題ないはずだ。
そう思ったので、俺は特にクレッタを止めないことにする。
「それでは、前を洗いますね」
「ああ……」
という訳で、クレッタが俺の前に来た。
そこで、クレッタが体を洗う準備を進めていく。
「……うん?」
すると、俺の目にあるものが入ってくる。
クレッタは、少し屈んでいるのだが、そのことで胸の谷間がとてもよく見えるのだ。
見てはいけないと思うのだが、これは無理だった。視線が、その谷間に集中してしまう。
「あれ? スレイドさん……?」
「あ、いや……」
当然、そんな視線を向けたので、すぐにばれてしまった。
クレッタは、そのことに少し口の端を歪める。
「見てしまいましたか?」
「その……」
「見たいなら、いくらでも見てもいいんですよ?」
今日のクレッタは、かなりサービス精神旺盛であるようだ。
だが、許可が出ると逆に見にくくなる。
という訳で、俺はクレッタの胸元から目を逸らす。
「あらら、見ないんですね……」
そのことに、クレッタは少し残念そうな顔になった。
そんな顔をされると、見たくなってしまう。だが、これで見るのは駄目だ。もっと、自制しなければならない。
「それなら、それでいいですけど……」
「うん?」
そこで、クレッタが動いた。俺の体に、泡を塗り始めたのだ。
まずクレッタは、俺の胸に手をかけてきた。
「うわあ、すごいですね……」
「え?」
「やっぱり、鍛えているんですね……」
何やら、クレッタは俺の体を褒め始める。
なんだか、少しむず痒い。
「……っ!?」
「あれ? どうしたんだ?」
だが、クレッタの動きが変わった。
俺の胸を撫で始めたのだ。しかも、大事な所を重点的に攻めてきている。
一体、何を始めているのだろうか。
「クレッタ、どこを触っているんだ?」
「ちょっとした悪戯ですよ。気にしないで下さい」
「そ、そうか……」
「次に、いきますね」
クレッタは俺の質問を受け流しつつ、手を腹の辺りに移していく。
今度は、へそを重点的に攻めてくる。これも、悪戯だとでも言うのだろうか。
「クレッタ?」
「いえ、お腹もすごいですね」
「いや、さっきから……」
「まあ、まあ、気にしないで下さい」
「いや、気にしないって……」
クレッタは、そのまま手を下に持っていく。
なんだかんだ丁寧に洗ってくれるのは、メイドとしての意地だろうか。
「クレッタ、少し待ってくれ」
「はい?」
そこで、俺は気づいた。
クレッタが、俺のタオルの中に手を入れようとしていることに。
そこは、クレッタに洗ってもらっては困る所である。もちろん、クレッタもそれはわかっているはずだ。
「そこは駄目だろう」
「駄目ですか? 私は平気ですよ」
「へ、平気……?」
「はい。何も問題ありません」
俺の言葉に、クレッタはそう返してきた。
どうやら、クレッタはタオルの下を洗うのは平気らしい。
メイドの仕事として、平気だとでも言うのだろうか。だが、流石に洗ってもらう訳にはいかない。
「クレッタ、そこは自分で洗うから……」
「そうですか? 遠慮しなくても……」
「いや、遠慮とかではなくて……」
「まあ、スレイドさんがそう言うならいいです。足にいきますよ」
「あ、ああ……」
俺が拒否すると、クレッタは何事もなかったかのように足へと移る。
本当に、タオルの下も大丈夫だったのだろうか。あまりに気にしていないため、そんなことを考えてしまう。俺の心は複雑な気持ちに満ちていた。
今日のクレッタは、色々とわからない。いや、いつもわかっている訳ではないのだろうか。
「スレイドさん、足をあげてもらえますか?」
「ああ、これでいいか?」
「はい、ありがとうございます」
こうして、クレッタに俺は体を洗ってもらうのだった。
俺達の風呂は、続いていく。




