第96話 酔っぱらい達の反省会
俺、クレッタ、カノンさんの三人は、ファラエスの目の前で正座させられていた。
理由は、酔っ払ってファラエスに色々と失礼なことをしたからである。
俺の酔いが醒めた時、それに釣られてカノンさんの酔いも醒めて、こういう状態になったのだ。ちなみに、クレッタはいつの間にか眠っており、目が覚めると同時に、酔いも醒めた。
ファラエスは、椅子の上に座り、こちらを見てくる。もちろん、服は全て元通りになっている。
「ファ、ファラエス、この度は、誠に申し訳ありませんでした……」
そんな中、カノンさんがファラエスに謝った。
こちらは、未だ下着姿である。着るタイミングがなかったのだ。反省の意味も、あるのだとは思う。
「カノンさん、これからは変な酔い方をしないでくださいね」
「あ、はい……」
「というか、全然お酒に強くないじゃないですか……」
「ちょ、ちょっと今日はテンションが上がっちゃって……」
ファラエスは、カノンさんに対してそう言った。
結果的に、カノンさんはお酒にまったく強くなかったのである。わずか二杯で、あの酔い方だ。あれで少し前までは酒瓶一本を飲み干していたとは、驚きである。
普段は、一体どんな酔い方になっていたのだろうか。
「しかも、質が悪い酔い方ですし……」
「あ、はい、すみません……」
カノンさんの酔い方は、とても質が悪かった。
ファラエスは、特に被害を受けていたので、そう思うのも当然だろう。
「今後は、お酒は一杯までです」
「え? そ、それは、ちょっと……」
「あの酔い方をされると、とても迷惑です」
そこでファラエスは、カノンさんにそんな要求を出した。
あれだけされて、酒そのものを禁止しないのは、尊敬している人への気遣いの表れだろうか。
だが、それでもカノンさんは抵抗する。あまり、反省はできていなのかもしれない。
「で、でも……」
「カノンさん? 自分のしたことを反省しているなら、私の言葉に従ってください」
「で、でもね。お酒は大切な養分なのよ? ファラエスも飲めるようになったらわかると思うけど……」
「はあー」
カノンさんは、よくわからない言い訳で、誤魔化そうとしている。
その態度には、流石のファラエスも呆れてしまったようだ。
ファラエスは、冷たい視線をカノンさんに向ける。
「カノンさん、今からその下着をはぎ取ります」
「え?」
「なので、動かないで下さいね」
ファラエスは椅子から立ち上がり、カノンさんの下着に手をかけようとした。
すると、カノンさんは早口で喋り始める。
「ごめんなさい。自分のしたことが、いかに駄目だったかわかりました。お酒は一杯にします。どうか、お許しください」
「はい。とりあえず、それでいいということにしましょう」
カノンさんの言葉を聞き、ファラエスは再び椅子に座った。
なんだかんだ実行しないのが、ファラエスの優しい所だ。
「さて、次……」
「あ、私ですか……」
続いてファラエスは、クレッタに目を向けた。
クレッタに関しては、余計なことを言っただけで、ファラエスに何かしようとはしていない。
これに、ファラエスはどんな決断を下すのだろうか。
「この度は、酔って余計なことを言ってしまって申し訳ありませんでした」
「よく考えたら、クレッタは酔ってなくてもいいそうだから、特に言うことないな……」
「え?」
クレッタに対して、ファラエスはそんなことを言い始めた。
確かに、酔っていなくてもああいうことをクレッタは言う。それなら、いつもと変わらないのだろうか。
「お嬢様? 私、かなり酔っていましたよ?」
「後は寝ていただけだし……何もないかもしれない」
ファラエスは、そう言って納得したように頷く。
それに対して、クレッタは少し不服そうだ。
本人にとっては、かなり酔っていたという感覚なのだろう。それで、素面と変わらないと言われるのは、少し嫌なのかもしれない。
「さて、次……」
「お嬢様!?」
だが、クレッタの願いも虚しく、ファラエスは俺に目を向けてきた。
いよいよ、俺の番であるようだ。
「この度は、酔っ払っての様々な無礼、誠に申し訳ありませんでした……」
「でも、スレイドは踏み止まってくれたし、そこまでは怒っていないんだよね」
「そ、そうなのか?」
「うん、むしろ、スレイドが私のことを思ってくれたのがわかて、嬉しかったくらいだよ」
どうやら、ファラエスは俺に関してはあまり怒っていないらしい。
それはありがたいことではある。だが、罪悪感が心に沁みついているため、非常に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「だ、だが、俺もずっと見ていたし……」
「別に、スレイドに見られるのが、嫌という訳ではないから、問題無いよ。とても、恥ずかしかったけどね……」
「そ、そうなのか……」
なんだか、ファラエスがすごいことを言っている気がする。
ただ、それを掘り下げるのもなんなので、何も言わないでおく。
何はともあれ、俺は許されたということだ。
それなら、よかったということにしておこう。
「ねえ、スレイド君……」
「うん?」
そこで、カノンさんが俺に小声で話しかけてきた。
その表情は、少し怪しい笑みだ。何か、変なことでも思いついたのだろうか。
「ここからなら、ファラエスのパンツが見られるわよ」
「なっ……」
「ほら、角度的に……」
カノンさんが伝えたかったのは、ファラエスのパンツが見えるということだった。
こんな時に、何を言っているのだろうか。
一応確認したが、確かにその角度からはファラエスのパンツが見える。
だが、それがなんだというのだろうか。
「スレイド、どさくさに紛れて、パンツを見ないでくれるかな?」
「あっ……」
そんな俺に対して、ファラエスがそう言ってくる。
カノンさんに乗せられて、思わず見てしまったが、これは駄目だった。先程反省したのに、なんてことをしているんだ。
ファラエスは顔を赤くしながら、スカートを押さえて、こちらを見る。これは、怒られるのだろうか。
「ふふふ、スレイド君、全然欲望を押さえられていないわね……」
「いや、俺は……」
「そもそもは、カノンさんのせいです」
「え?」
しかし、ファラエスは俺に怒ることなく、カノンさんに怒り始めた。
これには、カノンさんも目を丸くする。
「どうせ、スレイドを乗せてパンツを見させれば、私が怒るとでも思ったんでしょう?」
「え? いや……」
「考えが、浅はかじゃないですか?」
「ご、ごめんなさい」
カノンさんは床に頭をつけて、ファラエスに謝った。
そんなカノンさんを、ファラエスは冷たい目で見つめる。
「カノンさんは、反省していないんですか?」
「い、いや、そうじゃないんだけど……」
結局、ファラエスからカノンさんへの説教が再開するのだった。
そんな二人の横で、俺とクレッタは正座したままだ。これも罰と思って、しっかりと受け入れよう。
「二人とも、昔と変わらないようで、何よりですね……」
「え?」
そんな中、クレッタがそう呟いた。
その言葉に、俺は思わず驚いてしまう。
「カノンさんって、一応尊敬できる先輩ということなんじゃ……」
「仕事の面なら、そうでしょうね。でも、プライベートはあんなものでしたよ」
「そ、そうか……」
部屋の惨状からも予想できたことだが、カノンさんは意外にもだらしない人だったようだ。
なんというか、もっと冷静沈着な人だと思っていたので、驚いてしまう。
もちろん、家で気心の知れたファラエスとだからこそ、こういう風な絡みをするだけで、普通はちゃんとした人であるはずだ。というか、そうであってくれ。
こうして、俺達の反省は続いていくのだった。




