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最強の剣士は、世界の低すぎるレベルに失望し、異世界へ転生しました。  作者: 木山楽斗


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第88話 昔みたいに

 俺はいつも通り、目を覚ます。

 昨日は、ファラエスと一緒に寝た。

 という訳で、今日も俺はファラエスの胸に顔を埋めている。

 やはり、ここが定位置であるようだ。


「ふう……」


 その感触を楽しみつつ、俺は考える。

 今日は、まだ寝ていてもいいのではないだろうか。


 昨日は、カノンさんを助けるために戦って、かなり遅くに帰ってきたため、寝る時間も遅かった。そのため、かなり眠たさが残っている。

 今日は、別にそこまで何かある訳ではないため、まだ寝ていても問題無いはずだ。

 ただ、カノンさんの様子も気になるので、拠点にも行きたいとも思う。


「うん……」

「あっ……」


 俺がそんなことを考えていると、ファラエスが声をあげた。

 どうやら、起きたようだ。


「あ、スレイド、おはよう」

「ああ、おはよう」

「今日もこの体勢か……」

「ああ、そのようだ」


 ファラエスは、笑いながらそう言ってきた。

 確かに、毎回この体勢になるのは笑えることかもしれない。

 一体、俺は寝ている間に何をしているのだろうか。


「ふう、なんだか、まだまだ眠たいね……」

「そうだな。昨日、かなり疲れたから、そうなんだろうけど……」

「まあ、そうだよね……」


 俺と同じように、ファラエスも眠たいらしい。

 それも当然だろう。あれ程疲れて帰って来て、寝るのも遅かったのだ。そうならない方が、おかしいとさえいえる。


「でも、この時間に目が覚めるんだね……」

「習慣というやつだろうな。この時間になると、自動的に体が目覚めてしまう……」

「まあ、そのおかげで、いつも起きられているから、悪いとも思えないけど……」

「確かにな……」


 俺とファラエスは、疲れているというのに、いつも通りの時間に起きていた。

 恐らく、体が自動的に目覚めてしまったのだ。


 だが、今日はまだ起きなくてもいい。それなら、やることは一つだろう。


「二度寝といこうか、スレイド」

「ああ、俺もそうしたいと思っていた」

「そうだよね? あ、クレッタには昨日起きるのは遅くなるかもしれないと伝えてあるから……」

「そうか、流石だな」


 という訳で、俺とファラエスは二度寝することに決める。

 起きても眠ればいいのだ。


「ただ、拠点に行ってカノンさんの様子も見たい」

「ああ、だから、あまり寝すぎるのも駄目だな」

「うん、だから、眠るのはもう少しだね」


 やはり、その考えも同じだった。

 カノンさんの様子は、確認しておきたいのだ。

 恐らくは大丈夫だと思うが、そこは気になる。


「ところでスレイド、この体勢のままでいいのかい?」

「え?」

「私の胸で、眠れるのかな?」

「ああ……」


 そこで、ファラエスがそんなことを聞いてきた。

 確かに、この感触は、俺の眠りを妨げるものになるかもしれない。

 だからといって、ここから離れたいとも思っていなかった。なぜなら、こんないい場所は他にはないからだ。


「いや、離れたくはない」

「離れたくないか……まあ、いいけど」

「そうか、ありがとう」


 俺の言葉に、ファラエスはそう言ってくれた。

 どうやら、その胸で眠ることを許してくれるようだ。それなら、存分にこの感触を楽しませてもらおう。


「……というか、君は本当に胸が好きなんだね?」

「え? いや……」


 そんな俺に、ファラエスがそんなことを言ってきた。

 その指摘は、とても答えにくいものだ。


「まあ、いいか。お休み、スレイド」

「ああ、お休み」


 そんな感じで、俺達は二度寝するのだった。




◇◇◇




 俺とファラエスは、拠点に来ていた。

 二度寝したので、少し遅い時間での到着だ。だが、そのおかげで元気はいっぱいである。


「さて、スレイド。まずは、医務室に向かおうか」

「ああ、そうしよう」


 俺とファラエスは、カノンさんのいる医務室を目指していた。

 恐らく、まだそこにいるはずである。


 しばらく歩いて、俺達は医務室に着く。

 戸を叩くと、中にいた回復術師が戸を開けてくれる。


「あ、スレイドさんに、ファラエス様ですね」

「あ、ああ……」

「ファラエス様……」


 回復術師は、若い女性で、ファラエスのファンだ。

 そのため、このような口調なのである。


 そのことに、ファラエスは少し頭を抱えてしまう。

 昨日からだが、この呼び方は流石にきついらしい。


「入ってください。カノン副隊長が、待っています」

「そ、そうか……」

「ファラエス様……」


 という訳で、俺達は医務室の中に入っていく。

 カーテンのかかったベッドに、カノンさんはいるはずだ。


「カノンさん、開けますよ」

「ええ」


 回復術師がカーテンを開けて、カノンさんが現れる。


「ファラエス、スレイド君、昨日振りね」

「あ、カノンさん」

「カノンさん……」


 カノンさんは、昨日よりもかなり顔色が良くなっており、雰囲気も明るくなっていた。

 どうやら、あの後も特に問題はなかったようだ。

 そうだとは思っていたが、実際に顔を見るまでは少し不安だった俺達も、これで安心できる。


「二人とも、ちゃんと休めた?」

「ええ、大丈夫です」

「はい。申し訳ないんですが、少し休んでから、こっちに来たので……」

「そうだったのね。それなら、よかったわ」


 ファラエスの言葉に、カノンさんは笑顔になった。

 その笑顔は、昨日までなら向けることがなかった笑顔だろう。


「ファラエス、少し……近くに来てくれない?」

「え? あ、はい」


 そこで、カノンさんはそんなことを言った。

 ファラエスがその言葉に従い、カノンさんに近づく。


「ファラエス、今までごめんなさいね。あなたに、辛い思いをさせてしまって……」

「カノンさん、そんな……」

「こんな私でも、これから仲良くしてくれる?」

「当り前ですよ」


 カノンさんの言葉に、ファラエスはすぐにそう答えた。

 ファラエスにとって、それはずっと望んでいたことだったのだ。それも当然だろう。


 ファラエスとカノンさんは笑い合った。

 その笑顔が見えたことは、俺のとっても嬉しいものだ。


「スレイド君も、ごめんなさいね。私のせいで、色々と迷惑をかけてしまって……」

「いえ、全然構いませんよ」

「本当に、ありがとう。私を救ってくれて……」


 次に、カノンさんは俺に声をかけてきた。

 その笑顔はとても穏やかなものだ。これが、本来のカノンさんなのだろう。


「……それにしても、ファラエスも大きくなったわね」

「え? そうですか?」

「ええ、本当に素敵な女性になって……」


 そこで、カノンさんがそう言い始めた。

 なんだか、とてもしみじみとした感じだ。

 もしかしたら、ずっとそう言いたかったのかもしれない。


「カノンさんにそう言ってもらえるなんて、本当に嬉しいです……」


 その言葉に対して、ファラエスが頬を赤くする。

 かなり、嬉しそうだ。こんなファラエスは、珍しい。


 そこで、俺はあることを思い出す。

 その姿はソーナに似ているのだ。

 尊敬する人の言葉に、一喜一憂する。その雰囲気が、まったく同じなのだ。

 本人も、自身とソーナが似ていると言っていたので、やはりそうなのだろう。


「あ、でも、その感じは一緒ね」

「そ、そうですか……?」

「ええ、その照れ方は一緒。それはそれで、安心するものね」


 カノンさんと話している時のファラエスは、少し幼いように思える。

 寂しがっている時や甘えている時の子供っぽいファラエスと同じ感じだ。

 年上に甘えているが故に、そういう感じが強いのかもしれない。


 だが、よく考えてみれば、俺やクレッタはファラエスより一応年上だった。

 俺達も、カノンさんみたいに大人の雰囲気を出さなければならないのだろうか。


「本当の昔は、かなり尖っていたけどね?」

「そ、その話はやめてくださいよ……」


 そんな感じで、二人の会話は続いていく。


 俺は、回復術師に手を挙げて、部屋から出ようとする。俺がいても、邪魔になるだけだと思ったからだ。

 すると、回復術師も頷きながらついてきた。どうやら、こちらも空気を察しているらしい。


 という訳で、俺達はファラエスとカノンさんを二人きりにするのだった。

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