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最強の剣士は、世界の低すぎるレベルに失望し、異世界へ転生しました。  作者: 木山楽斗


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第84話 死を呼ぶ蝶

 俺とファラエスは、夜の闘技場にて、カノンさんと対峙していた。

 カノンさんの体は、死蝶病(しちょうびょう)という病に侵されているようだ。

 その病気は、カノンさんの体を操り、俺達を襲わせてきたのである。


「ううっ!」


 カノンさんの持つ剣は、死病蝶(しびょうちょう)という無数の蝶に変化した。

 その蝶が、俺に対して向かってきたのだ。


「スレイド! 気をつけるんだ! その蝶には、何があるかわからないぞ!」

「ああ、わかっている!」


 俺は、その蝶に対して、刀を振るい対抗する。


「はあっ!」


 蝶は、簡単に斬ることができた。

 だが、思ったより数が多すぎる。


 俺の周囲を蝶がどんどんと囲んでいく。


「スレイド!」


 そんな俺の元に、ファラエスが近づいてきた。

 そこでファラエスは、剣を振るう。


「はああ!」


 ファラエスの攻撃により、蝶は何体か切り裂かれていく。

 それにより、俺の逃げ道も確保できそうだ。


「はああ!」

「スレイド! 大丈夫かい!?」

「ああ……」


 ファラエスとともに、俺は蝶から距離をとった。

 だが、蝶も俺達を追ってくる。

 その無数の蝶が、俺達に襲い掛かってくるのだ。


「くっ!」

「スレイド!?」


 俺とファラエスは、当然それに対応した。

 しかし、数が多すぎたため、蝶が俺の右手の甲を少し掠めてしまったのだ。


「これは!?」


 蝶に掠められた場所は、刃物で切られたような跡がついていた。

 どうやら、あの蝶に当たると、切られてしまうらしい。元々は、カノンさんの剣だったので、それもなんとなく納得できる。


「スレイド、大丈夫か!?」

「ああ、かすり傷だ。だが、あの蝶は刃そのものらしい。気をつけた方がいい」

「……ああ、そのようだね」


 傷を負ったが、その蝶の性質がわかったのは、不幸中の幸いだ。

 最も、あれに当たりたくないのは、先程から思っていたことなので、あまり変わりはないかもしれない。


「……スレイド! 蝶が!」

「何っ!?」


 ファラエスに声をかけられ、俺は気づく。

 蝶達の動きに、変化が起こっているのだ。


 蝶は、一斉に俺の右手に向かってきたのである。

 その動きは、先程までと比べ、非常に単調な動きだ。

 一つの場所に狙いを定めているので、それも当然だろう。


「おおお!」

「はああ!」


 俺とファラエスは、向かって来る蝶をどんどんと切り裂いていく。

 蝶達は、簡単に斬ることができた。

 ただ、何体もいるため、全てを防ぐことはできない。


「くっ!」


 そこで、一匹の蝶が俺の手にとまった。

 何故切り裂いてこないのか、理解できなかったのは、一瞬のことだ。

 次の瞬間、蝶は傷口にその口をつけてくる。


「うっ!」

「スレイド!」


 向かって来る蝶を斬る俺に、奇妙な感覚が襲ってきた。

 それは、血を抜かれるような感覚だ。

 恐らく、蝶が俺の体から血を吸っているのだろう。


 蝶が、右手の甲に向かってきた理由が理解できた。

 こうやって、俺の血を吸うために狙いを定めていたのだ。


「くっ!」


 俺は、左手で蝶を払おうとした。

 ただ、これは大きな間違いだとすぐに気づく。


 蝶は刃そのものなのだ。それに触れるとどうなるかは、明白だろう。


「ファラエス、頼む!」

「ああ、任せてくれ!」


 そのため、俺は右手をファラエスに向けた。

 すると、手の甲にいる蝶にファラエスの剣が突き刺さる。

 それにより、俺の手から蝶はいなくなった。


「スレイド! これを!」

「これは……!?」


 蝶から逃げながら、ファラエスは俺にあるものを投げてくる。

 それは、ハンカチだ。


「それで、傷口を塞ぐんだ!」

「ああ! ありがとう!」


 ハンカチを受け取りながら、俺は言われた通りハンカチを結んで傷口を隠す。

 これで、とりあえずは傷を塞ぐことができた。蝶の攻撃も、少しは防ぐことができるだろう。


「ファラエス、どうやらあいつらは、血を吸ってくるらしい……」

「そのようだね。かすり傷でも、かなりまずそうだ……」

「ああ、あの蝶の攻撃は、受けないに限る……」


 俺とファラエスは、蝶から逃げていく。

 先程の攻防で、蝶の数はかなり減らせたはずだ。

 だが、元々の数が多すぎたため、まだかなりの数がいる。


「無駄よ……」


 そこで、先程まで黙っていたカノンさんが口を開く。

 その表情は、かなり苦しそうだ。

 この状態は、カノンさんにとっても、かなり辛いのだろう。


 カノンさんは、優しい人なので、俺とファラエスを襲っていることも、精神的にきついのかもしれない。


 しかし、無駄とはどういうことだろうか。


「……何!?」

「あれは!?」


 次の瞬間、その言葉の意味がわかった。

 俺達が斬ったはずの蝶が、再生していくのだ。

 どうやら、あの蝶は再生能力をもっているらしい。


死病蝶(しびょうちょう)は、いくらでも再生する……だから、あなた達はそれを倒すことはできない……私を止めることが……できない!」

「カノンさん……」

「くっ……!」


 カノンさんは、涙を流していた。

 ただ、蝶は止まらない。カノンさんの感情など、あの病にはまったく関係ないのだ。


「スレイド、どうやら、あの蝶はかなり厄介なようだ……」

「ああ、そのようだな……」


 俺とファラエスは、体勢を立て直しながら、蝶に構える。

 無限に再生する触れられない蝶。これは、かなり厄介な敵だ。


 これを止めるには、カノンさん本体をどうにかするしかないだろう。

 ただ、無数の蝶が、それを許してくれないのだ。

 状況は、かなり不利であるといえる。


「ふん!」


 そこで、闘技場の上から、一本の大剣が落ちてきた。

 大剣は、蝶を切り裂き、地面に刺さる。

 その直後、上空からさらに下りてくる者がいた。

 それは、鉄仮面の騎士である。


「あなたは……」

「ま、まさか……」


 その人物の登場に、ファラエスとカノンさんは目を丸くしていた。

 だが、俺は驚かない。なぜなら、この人物を呼びだしたのは、俺だからだ。


「遅くなってしまったか……すまないな、スレイド、ファラエス……」

「いえ、丁度困っていた時ですから、問題ないですよ」

「そうか……それなら、安心というものか……」


 鉄仮面の騎士は、地面から大剣を抜き、一気に振るう。

 すると、周囲の蝶達が何体も落ちていく。

 剣が大きいため、かなりの蝶を落とせるのだ。


「カノン……君が、こんな事情を抱えているとはな……だが、安心しろ。君は、私達が必ず助ける!」

「ザ、ザギル隊長……!」


 ザギル隊長は、カノンさんに向かって、大きく宣言した。

 その宣言は、俺達の総意である。


「ど、どうして、ザギル隊長がここに……?」

「スレイドに呼び出されていたのだ。カノンのことで、何かわかるかもしれないとな……」


 ファラエスの質問に、ザギル隊長はそう答えた。

 その言葉通り、ザギル隊長にはそう言って、ここに来てもらったのだ。


 カノンさんの口振りから、今回の件は危険が伴うと俺は感じていた。

 そのため、ザギル隊長に声をかけることにしたのだ。騎士団の隊長ならば、かなりの実力があり、このような事態に対応できると思ったのである。


「さて、ここからは三人で戦おう。あの蝶は私が引き付ける。君達は、カノンに接近するのだ」


 ザギル隊長の言葉に、俺とファラエスはゆっくりと頷く。

 二人の時は、蝶の相手で手一杯だったが、三人ならば他のことができる余裕があるはずだ。


「ふん!」


 その言葉の後、ザギル隊長は大剣を振るう。

 大剣とは思えない程の素早い一撃だ。その剣さばきは、見ていてとても頼もしい。


 その広範囲の攻撃により、たくさんの蝶が落ちていく。

 一対多でも、あの大剣ならば、充分対応できるようだ。


「ファラエス」

「ああ、スレイド」


 俺とファラエス、一気に動き始める。

 ザギル隊長が蝶を倒してくれている間に、カノンさんに接近するのだ。

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