表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の剣士は、世界の低すぎるレベルに失望し、異世界へ転生しました。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/176

第83話 話したくないこと

 俺とセリアは、カノンさんの元へと向かっていた。

 カノンさんに俺達が調べたことを聞いてみるためだ。


 という訳で、カノンさんがいるはずの副隊長室の前まで来ていた。

 隊長だけでなく、副隊長にもこういう部屋が用意されているのだ。


「さて……」


 俺は、その戸をゆっくりと叩く。

 しかし、中から反応は返ってこない。


「……出かけているんでしょうか?」

「どうだろうな……」


 恐らく、中にはいないのだろう。

 セリアの言う通り、出かけているのかもしれない。

 どうやら、無駄足になってしまったようだ。


「仕方ないか……」

「図書室に行ってみましょうか? 昨日は、そこにいましたから……」

「そうだな……」


 昨日は、中庭と図書室でカノンさんと会うことができた。

 そのため、図書室に行くのもいいかもしれない。


 だが、もしかしたら、拠点に来ていない可能性もあるのだ。そうなると、カノンさんに直接話を聞くことはできないということである。

 その場合は、別の手段を考えるしかないだろう。


「とりあえず、図書室に向かおう」

「はい!」


 しかし、今はそこに行ってみるしかない。

 そのため、セリアにそう言い、俺達は図書室に向かおうする。


「……待って」

「え?」

「あれ?」


 だが、俺達は足を止めた。

 後ろから、戸が開く音と女性の声が聞こえてきたからだ。

 その声は、何度か聞いたことがあるカノンさんの声である。


「カノンさん……」

「ごめんなさい、開けなくて。少し、迷いがあったから……」


 どうやら、中にいたようだ。

 つまり、居留守をしていた訳である。


「一体……どういうことですか?」

「……中で、話しましょう」


 俺の質問に、カノンさんはそう言ってきた。

 俺とセリアは、顔を見合わせて合図した後、カノンさんに向かって頷く。


 すると、カノンさんは頷き、部屋の中に入る。

 それに続いて、俺達も入っていく。


「さて、座ってもらえる?」

「あ、はい」

「失礼します」


 カノンさんがソファに座り、俺とセリアはその正面に座る。

 すると、カノンさんはゆっくりと口を開いた。


「それで、私に聞きたいことがあるのよね?」

「……ええ、そうですね……」

「何が聞きたいのか、話してもらえる?」


 カノンさんの言葉に、俺は素直に答える。

 ここで話を渋っても、仕方ないだろう。

 そのため、単刀直入に聞きたことを聞くことにする。


「俺達は、あなたのことを調べていました」

「ええ、その辺りは、なんとなくわかっていたわ。昨日の図書館出会って、ここに尋ねてくる。少し、私に関わり過ぎているものね」

「……ええ、それにはある理由があります」


 どうやら、カノンさんは俺達が調べていたことを察していたようだ。

 人を避けていたカノンさんにとって、同じ人物にここまで関わられるのは珍しいはずだ。俺達は、この二日間だけでかなりカノンさんと関わっているので、そう思うこともあるかもしれない。


「あなたが、どうしてファラエスを避けるようになったのか、それがあなたを調べている理由です」

「……なるほど、あの子のため……か」


 俺の言葉に、カノンさんは少し笑う。

 それは、嬉しそうな表情である。


「それで、あなたが病気であると、ザギル隊長に聞きました」

「……そう。隊長も、案外口が軽いわね……」

「だから、ファラエスを避けた。それでも、納得できないことではないでしょう」

「……どうかしらね」


 病気のことを口にすると、カノンさんの表情が変わった。

 少し警戒しているような、そんな表情である。

 やはり、この辺りには何か事情があるようだ。


「……ですが、避けている割には、こうして俺達とは普通に話しています。だから、あなたの病気がどういうものか、まったくわからないんです」

「……」

「それに、図書室で見ていた死病蝶しびょうちょう、そこまで深刻な病気なら、ここに来ていることがそもそもおかしいはずです」

「……そこまで、見ていたのね」


 俺が言葉を続けると、カノンさんの表情が再度変わる。

 その表情は悲しんでいるような感じだ。


「……私のことは、放っておいて、と言っても無駄なのよね……だって、ここまで調べているんだもの」

「ええ……」

「でも、私はあなた達に真実を知って欲しくはない。ファラエスだろうと、ザギル隊長だろうと、誰にもね……」


 カノンさんは、そんなことを言ってきた。

 つまり、何かを隠しているということは認めたのだ。


 ただ、それを話すつもりはないらしい。

 そんなにも、隠しておきたいことなのだろう。


「……そうですか」


 そこで、俺は考える。

 カノンさんが、一体何を考えているのかを。


 話から、カノンさんには何か問題があるということだ。

 それは話せないことというよりは、話したくないことらしい。

 その言葉の意味が、重要なはずだ。


 カノンさんは、優しい女性である。

 そのため、真実を知られると、俺達に何か危険があるということなのかもしれない。

 それなら、先程の話も納得できるような気がする。


「わかりました、それなら、今回は引きましょう」

「師匠!?」

「スレイド君……」

「話を聞いてくださり、ありがとうございました」

「ま、待って下さい! 師匠!」


 とりあえず、俺は副隊長室を後にする。

 なんとなく、カノンさんの事情は予測できてきた。

 それなら、後は考えるだけだ。


「……スレイド君」


 カノンさんに一礼してから、俺とセリアは部屋を出る。

 すると、セリアがゆっくりと口を開く。


「師匠、いいんですか? これじゃあ、何も得られていないんじゃあ……」

「そんなことはないさ。色々と掴めることはあった。後は、行動を起こすだけだ」

「行動……?」


 セリアに向けて、俺は笑顔を向ける。

 こうして、俺は新たなる案を試してみることにするのだった。




◇◇◇




 俺は拠点の闘技場にいた。

 現在は、夜。そのため、周りに人はいない。


 そんな拠点で待つのには、ある理由がある。

 それは、ある人物を待つためだ。


 俺の予想が確かなら、ここに現れるはずである。

 

 少し待っていると、その人物がやってきた。


「……え?」


 その人物は、この闘技場の様子に驚いているようだ。

 それも当然だろう。


 次に声を出したのは、俺の隣にいる人物だ。

 こちらも、少し驚いている。


「カノンさん……まさか、本当に来るなんて……」

「スレイド君に、ファラエス……どうしてここに?」

「すみません、少し張らせてもらいました」


 現れた人物とはカノンさんで、俺の隣にいるのはファラエスだ。


 ディオンの情報から、カノンさんがここに現れると思い、待っていたのである。

 この情報を持っていることを悟られないために、話した時には言わなかったのだ。


「まさか、ここで待っているなんて……」

「やはり、ここで何かがあるんですね?」

「カノンさん、一体、何が起こっているんですか……?」

「くっ! これは予想していなかった……二人とも、逃げて!」


 俺達の言葉に答えることなく、カノンさんはそう言ってきた。

 さらに、カノンさんの体が震え始める。


「ここまで、抑えてきたけど、そろそろ限界なのよ……このままでは、あなた達も……」

「これが、カノンさんが持っていたものか……」


 カノンさんの背中から、羽のようなものが生えてきた。

 それは、まるで蝶のような羽だ。


「私の体は、死蝶病(しちょうびょう)に侵されている。この病は、かつてある町で流行った病……」

「ある町……?」

「この病が流行ったことで、ある蝶の噂が生まれた。あれは、実際にいる蝶ではない。この病の副産物に過ぎない……」


 そこで、俺は理解した。

 その蝶の羽が、図鑑で見た死病蝶(しびょうちょう)と同じ模様であるということを。


「うっ……!」


 さらに、カノンさんは剣を抜いた。すると、その剣は形を崩していく。

 剣が、何体もの蝶に変化したのだ。その蝶は、死病蝶(しびょうちょう)である。


「二人とも、逃げて……! この病には、感染力はないけど、宿主を操り、他者を攻撃させる……! 私の体に宿るものが、私を操ってしまう!」


 カノンさんは、苦しみながらそう言った。

 どうやら、カノンさんが病気を隠していた理由はこれらしい。


 この病は宿主を操り、人を襲うのだ。

 だから、カノンさんは夜の拠点にいたのである。誰も、病で襲わせないために。


「ファラエス、とにかく、カノンさんを止めよう」

「ああ、わかっている……」


 俺とファラエスは、ゆっくりと刀と剣を抜く。

 とにかく、カノンさんを止めなければならないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ