第81話 今日も皆で
俺は色々あって、ファラエスと一緒に風呂に入っていた。
「さて、これで私の話は終わりだ。聞いてくれて、ありがとう」
「いや、こっちこそ、話してくれて、ありがとう。色々と、ファラエスのことがわかったよ」
「そうかい? それなら、よかったのかな?」
どうやら、ファラエスの話は終わったようだ。
それなら、後はどうするのだろう。
「それで、後はどうするんだ? ファラエスは、一度風呂に入ったんだよな?」
「ああ、そうだね。だから、もう上がらせてもらうよ。本当は、もう少し君とお風呂を楽しみたいんだけど、流石にのぼせそうだからね」
俺の質問に、ファラエスは少し残念そうにそう言ってきた。
やはり、ファラエスもそろそろ限界だったようだ。
少し前に、皆と長い時間お風呂に入った後、俺と一緒に入り、結構な時間話していたのだから、それも当然だろう。
「いや、いいさ。それは、また今度ということにしよう」
「ああ、そうだね。また、一緒に入ろう」
俺の言葉に、ファラエスは笑顔を見せてくれた。
そして、ファラエスはゆっくりと立ち上がる。
「おおっ……」
「うん?」
ファラエスが立ち上がったことにより、俺は思わず声をあげてしまった。
話している時は、ファラエスの顔くらいしか見ていなかったが、そこで再び体を見てしまったからである。
改めてみると、やはりすごいものだ。
「スレイド、そんなに見られると、恥ずかしいよ?」
「あ、すまない……」
俺の視線に気づき、ファラエスがそう言ってきた。
やはり、あまり見るのはよくなかったようだ。またも、ファラエスに申し訳ないことをしてしまった。
だが、その体の魅力には、俺も逆らえないのだ。
「まあ、許すといったから、仕方ないか。それに、実の所、君に見られるのは嫌でもないからね」
「え?」
「いや、なんでもないよ」
そこで、ファラエスが意味深なことを言った。
見られるのが嫌ではないとは、どういうことだろう。
ただ、ファラエスはこれ以上答えてくれるような雰囲気ではなさそうだ。
「……悪いけど、私が出ていくまで、目を瞑っていてくれないかな?」
「え?」
「その方が、お互いに気を遣わないでいいだろう?」
「あ、ああ、そうだな……」
ファラエスに言われ、俺は目を瞑る。
確かに、ファラエスは気にしないでいいし、俺も目の置き所を迷わなくていい。
「さて、最後に……」
「え?」
「ん……」
そう思い目を瞑っていると、頬に柔らかいものが当たった。
それが、ファラエスの唇であることを俺はすぐに理解する。
「なっ……」
その動揺により、俺は思わず目を開けていた。
そして、後ろを振り返る。ファラエスは既に、湯船から出て、脱衣所を目指していた。
俺の視線に気づいたようで、ファラエスもこちらを振り返り、ゆっくりと口を開く。
「スレイド、目を瞑っているように言ったじゃないか?」
「い、いや……」
「まあ、構わないよ。もう、脱衣所だしね……」
「あっ……」
「それじゃあ、後はゆっくりとしてくれ……」
それだけ言って、ファラエスは脱衣所の中に入っていった。
残った俺は、困惑することしかできない。
あのキスは、なんだったのだろう。
「……くっ!」
それと、振り返ったことで見えたファラエスの後ろ姿に、俺の心は激しく動揺するのだった。
◇◇◇
俺は風呂からあがり、自分の部屋に帰って来ていた。
当然のように、皆は既に俺の部屋にいる。
「あ、スレイドさん。お帰りなさい。お嬢様とのお風呂、楽しかったですか?」
部屋に入るなり、クレッタがそんなことを聞いてきた。
何故かわからないが、クレッタがとても楽しそうな気がする。
これは、もしかしていつものだろうか。
「あ、ああ……」
「そうですか、それなら、よかったですね? お嬢様?」
「う、うん、そうだね」
俺が答えると、クレッタはファラエスに話を振った。
やはり、からかおうとしているようだ。
「いやあ、お二人仲良くお風呂なんて、素敵ですよね」
「ああ、そうだけど……クレッタ、君も後日一緒に入るんだよ?」
「え? それとこれとは話が別ですよ」
「まったく、君は……」
ファラエスの反論にも、クレッタは挫けない。
今日は、調子が良いようだ。
「はあ、まあ、いい。皆、いつも通り寝る順番を決めようか?」
そんなクレッタの言葉に動揺しつつ、ファラエスがそう言ってきた。
いつも通り、ベッドでの並び順を決めなければならないのだ。
「はい。といっても、この順番でいいんじゃないですか? もう、寝転んでいますし……」
「ボクもこれで構いませんよ」
「私も構いません」
俺が後で来た都合上、皆は既にベッドに寝転んでいた。
そのため、別に動く必要がないという判断のようだ。端から、ソーナ、セリア、クレッタ、ファラエスと並んでいる。
スペース的に、ファラエスの隣に、俺が入ればいいということだろう。
「あ、でも、私は抱き枕にしないでくださいね?」
「え? 駄目なのかい?」
「はい。スレイドさんにしてください」
そこで、クレッタがそんなことを言ってきた。
どうやら、今日の抱き枕担当は俺のようだ。クレッタは、何故か頑なにファラエスの抱く枕になろうとしない。
「あ、そうだ。私とお嬢様の間に、スレイドさんを挟みましょう」
「はあ、まあ仕方ないか……」
ファラエスも納得したため、俺は二人の間に挟まれ、抱く枕にされるようだ。
俺の許可は出していないのだが、まあ、いいとしよう。
「それじゃあ、スレイド、私が明かりを消すから、ベッドに寝転んでもらえるかい?」
「ああ、ありがとう、ファラエス」
ファラエスと入れ替わる形で、俺はベッドに寝転がった。
少しして明かりが消え、ファラエスが俺の横に寝転ぶ。
「さあ、スレイド」
「あ、ああ……」
その後すぐに、俺は温かく柔らかいものに包まれていた。いい匂いもする。
ファラエスに抱きしめられたのだ。この感覚は、いつ味わってもいいものだ。
眠れなくなるのではないかという心配もあるが、いつも眠れているので問題ないだろう。
この心地よい感覚は、安心感ももたらしてくれるので、眠れるはずである。
「さて……」
「え?」
そこで、俺の背中に柔らかいものが当たってきた。
それは、クレッタの胸だと、俺はすぐに理解する。
クレッタも、俺に後ろから体を押し付けてきたのだ。
「クレッタ、なんのつもりだ……?」
「え? いやあ、サービスですよ? 駄目ですか?」
「サービスか……」
俺が質問すると、クレッタはそう言ってきた。
サービスというなら、仕方ないのだろうか。
恐らく、またも真ん中で寂しいとかそういう理由だと思うが、胸を押し付けられると、こちらとしても色々と困ってしまう。
だが、嫌という訳でもない。それなら、このままでいいのだろう。
「それじゃあ、礼を言っておく。サービス、ありがとう」
「……スレイドさん、ありがとうございます。お礼に、いっぱい楽しんでくださいね」
「うっ……」
俺の言葉に、クレッタは喜んでくれたようだ。
そのお礼かはわからないが、体を少し動かしてくれる。そうすると、胸の感触がより伝わってきて、色々とすごい。
「……さて、話も終わったかな? それなら、眠るとしようか」
「あ、ああ……」
そこで、ファラエスが話をまとめようと声をあげてくれた。
その言葉を合図に、クレッタも体を止める。あのままだと眠ることができそうになかったので、これは助かった。
最も、しばらくは眠れないかもしれないが。
「お休み、皆……」
「ああ、お休み……」
「お休みなさい、皆さん」
「お休みなさいです」
「お休みなさい……」
各々そう言い、俺達は眠りにつくのだった。
俺は、その後しばらく目が覚めていたが、最終的には眠れたので、よしとしよう。




