表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の剣士は、世界の低すぎるレベルに失望し、異世界へ転生しました。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/176

第77話 図書室にて

 俺とセリアは、五番隊副隊長カノンさんの情報を得るため、五番隊隊長であるザギルさんの元に来ていた。

 ザギル隊長から、カノンさんが病気になってということを聞き、俺達は新たなる手がかりを得ることができたのだ。


「ザギル隊長、ありがとうございます。おかげで、手がかりを掴むことができました」

「いや、構わんさ。むしろ、礼を言うのは私の方かもしれん」

「え?」

「本来、私の隊で起こった問題は、私が片付けなければならないことだった。それを君達に気にさせてしまったのは、私の過ちだ。申し訳ない……そして、礼を言おう、彼女のことを気にかけてくれて、ありがとう……」

「え? いや、そんな……」


 お礼を言って立ち去ろうとしていた俺達に、ザギル隊長はそんなことを言ってきた。

 俺達からすれば、ただファラエスとカノンさんの関係をどうにかしたかっただけなので、このように感謝されたり謝ったりされるのは、予想外である。


「……俺達はただ、かつて仲が良かったはずの二人の関係を、なんとかしたいだけです。だから、ザギル隊長がそんなになる必要なんてないですよ」

「結局それが、カノンを救うことに繋がるのだ」

「そ、そうですか……」


 俺がそのように言っても、ザギル隊長の態度は変わらなかった。

 それなら、それでいいのだろう。


「……彼女が病気であることを話したのは、君達が初めてだ」

「え?」

「彼女に止められていたため、誰にも話すことはなかった。私自身にも、色々と疑念があったからだ」


 そこで、ザギル隊長がそんなことを言い出した。

 今まで、カノンさんの病気のことは誰にも言っていなかったようだ。

 確かに、誰かに話していたら、ファラエスやセリクやノワールの耳にも入っているはずである。

 だが、それなら、どうして俺達に話してくれたのだろうか。


「なら、何故、俺達にこのことを?」

「君達なら、この問題を解決できると、思っているからだ。違う隊だが、私はそんな期待をしてしまう」

「え?」


 何やら、ザギル隊長は、俺達に期待してくれているようだ。

 違う隊の隊長だが、そう言ってもらえるのは、中々嬉しいものである。


「……ところで、スレイド、君はこの騎士団にある図書室を知っているか?」

「え? ああ、それは利用したことはないですけど、知ってはいます」

「それなら、言ってみるといい。色々と、見聞を広められるぞ」


 ザギル隊長は、唐突にそんなことを言ってきた。

 これは、何かのヒントなのだろうか。


 それ以降、ザギル隊長は何も言わなかった。

 話は、これで終わりということだろう。


「ザギル隊長、失礼します」

「失礼します……」


 そのため、俺とセリアは隊長室を後にした。


 隊長室の外に出てから、セリアが話しかけてくる。


「師匠、次は……」

「ああ、とりあえず、図書室に行ってみよう」


 次の目的地は決まっていた。

 それは、ザギル隊長が示してくれた図書室だ。


 こうして、俺とセリアは図書室に向かうのだった。




◇◇◇




 俺とセリアは、図書室に来ていた。

 ザギル隊長から言われて来たが、ここに何があるというのだろうか。

 図書室は、人がほとんどいないようで、とても静かだ。

 というか、人はいるのだろうか。


「セリアは、図書室を利用したことはあるのか?」

「あ、はい、ありますよ。わからないことを調べる時には、ここに来たりします」

「それなら、ザギル隊長の言っていた意味って、どういうことだと思う?」

「え? それは、わからないです……すみません」

「あ、いや、それはいいんだ」


 セリアに聞いてみたが、特にあの言葉の意図はわからないらしい。

 それなら、適当に病気の本でもあったてみるしかないのだろうか。


「あ……」


 俺がそんなことを考えていると、セリアが声をあげた。

 図書室だからか、小さめの声だ。

 一体、どうしたのだろう。


「どうした、セリア?」

「師匠、あれ……」

「あっ……」


 セリアに言われ、俺も気づいた。

 図書室の一角に、カノンさんがいたのだ。


 ここで、やっとザギル隊長の意図がわかってきた。

 恐らく、ここにカノンさんがいるから、誘導してくれたのだろう。


「声をかけてみましょうか……?」

「あ、ああ、そうしてみるか」


 とりあえず、俺とセリアはカノンさんに近づくことにした。

 すると、カノンさんもこちらに気づいたようで、声をかけてくる。


「あら? 二人とも、図書室に何か用?」

「あ、ええ、少し、知りたいことがありまして……」

「そうなのね? ここには色々な本があるから、きっとわかるでしょうね。私は、もう行くから、ゆっくりしていくといいわ」

「あ、はい……」


 カノンさんはそれだけ言って、去っていってしまった。

 その様子は、まるで俺達が来たから去ったという感じだ。

 残された俺達は、顔を見合わせる。


「逃げられたのかな?」

「そうみたいですね。ところで師匠、さっき、カノンさんが読んでいた本、見ましたか?」

「ああ、見ていた」

「それじゃあ、とってきますね」


 セリアがそう言って、カノンさんが読んでいた本をとってきてくれた。

 その本は、少し気になる内容である。


「昆虫図鑑ですね……」

「ああ、これをカノンさんが読んでいたのは、少し気になるな……」


 カノンさんが、昆虫図鑑を読んでいたというのは、少し疑問を覚えてしまう。

 もしかしたら、カノンさんが虫好きなだけかもしれないが、一応調べてみる価値はあるはずだ。

 そう思い、カノンさんが見ていたページを開いてみる。


「確か、このページだったよな?」

「はい、一瞬でしたが、ちゃんと見ていました。このページです」

「蝶か……」


 カノンさんが見ていたのは、蝶についてのページだった。

 前後に、色々な蝶が紹介されていたようだが、カノンさんが見ていたのは、恐らくある蝶だっただろう。

 それは、見たことがない蝶である。


「セリア、この蝶は知っているか?」

「え? ええっと、死病蝶しびょうちょう……? 聞いたことないですね……なんだか、物騒な感じがしますけど……」


 カノンさんが見ていたのは、死病蝶しびょうちょうという蝶だった。

 黒くて不気味な印象を浮かべる蝶である。

 とりあえず、その蝶の解説に目を通す。すると、気になる記述が見つかる。


「この蝶は、病に侵された者が、死ぬ前に見ることが多いことから、この名がついた……これは……」

「もしかして、カノンさんはこの蝶を見たんでしょうか? それで、自身の死期が近いと……」

「いや、待ってくれ……だが、それは一種の都市伝説である。かつて、この蝶が生息している町で、病が流行り、その時にこの話が作られた……つまり、別に死期と関係がある訳ではないらしい」

「そ、それなら、問題はないんですか……」


 恐らく、死病蝶しびょうちょうは、その見た目から、そういう風に言われているだけで、なんの根拠もないのだろう。

 だが、問題はカノンさんが、このページを見ていたという事実だ。


「いや、カノンさんの病気が、そこまで進行しているということなのかもしれないな……それで、この蝶を見て、気になって調べたとかか……」

「そ、そんな! それじゃあ、カノンさんは死んじゃうんですか?」

「そういう訳じゃないが……どうなんだろうな……」


 もしかしたら、カノンさんの病気はかなり進行しており、蝶を見たことで図鑑を調べた。

 それでも、確かに辻褄は合う。ただ、そこには違和感がある。


「そんなに病気が進行しているのに、まだ騎士団で普通に働いているんだよな……それって、なんだかおかしくないか?」

「それは、そうですね……」


 仮にカノンさんが重い病気なら、ここに来ることもできないはずだろう。

 それなのに、ずっと仕事を続けている。そこは、どうも引っかかるところだ。


「……とりあえず、これは頭の片隅に留めておこう。一度、戻るとしようか」

「あ、はい、そうですね……」


 とりあえず、一度戻らなければならない。

 なぜなら、そろそろいつも帰る時間が近づいてきたからだ。

 まだ調べるにしても、ファラエスと相談しなければならないだろう。


 こうして、俺とセリアはファラエスの元に向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ