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最強の剣士は、世界の低すぎるレベルに失望し、異世界へ転生しました。  作者: 木山楽斗


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第74話 五番隊の副隊長

 俺とセリアは、魔物討伐の任務を終えて、騎士団の拠点に帰って来ていた。

 そこで、二日酔いの女性を見つけ、介抱しているのだ。


「ん……大分、良くなってきたわ」


 俺の持ってきた水を飲みながら、女性はそう呟いた。

 どうやら、回復してきたようだ。


「……二人とも、色々とありがとうね」

「あ、いや……」

「ボク達は、当然のことをしたまでですから……」


 女性は、俺達にそうお礼を言ってきた。

 その表情は、先程まで二日酔いだったとは思えない程穏やかだ。

 その回復は少し驚いたが、良くなったのだから、別にいいだろう。


「ところで、あなたは……」

「ああ、自己紹介が遅れていたわね。私は、カノン、五番隊の副隊長よ」

「え?」

「やっぱり、そうでしたか……」


 そこで、女性の自己紹介が行われた。

 その言葉に、俺は驚いてしまう。


 五番隊の副隊長といったら、騎士団の中でもかなりの地位を持つ人だ。

 そんな人だったという事実に、俺は思わず怯んでしまったのだ。


 ただ、セリアは薄々気づいていたらしい。

 セリアは、俺よりも騎士団の在籍期間がかなり長いので、それも当然だろう。


「ふふ、驚いているみたいね、スレイド君」

「え? どうして、俺の名前を?」

「あなたは、色々と有名だもの。あのファラエスが推薦した男……知らない人間の方が珍しいわ」

「師匠、有名なんですね……」

「もちろん、あなたのことも知っているわ。四番隊の若きエース、セリアちゃん」

「ええ? ボクも知っているんですか?」


 どうやら、カノンさんは俺達二人のことを知っていたようだ。

 だが、考えてみれば、ファラエスに推薦された俺は、知っていてもおかしくないのかもしれない。

 それに、セリアも騎士団の中でもかなり若い方なので、名が知れているのも納得できる。


「ふふ、まあ、私個人が、四番隊には興味があるからというのもあるけれど、それを差し引いても、二人は有名だと思うわよ?」

「なるほど……うん?」


 そこで、カノンさんが放った言葉に、俺は少し引っかかった。

 五番隊の副隊長であるカノンさんが、四番隊に興味を持つとはどういうことだろうか。

 単純に、一緒に拠点にいる隊だからかもしれないが、その言葉には少し何かある気がする。少し気になるので、聞いてみることにしよう。


「カノンさんは、四番隊に何かあるんですか?」

「ああ、私、元々は四番隊に所属していたのよ」

「四番隊に?」

「ええ、そこである程度功績をあげていたんだけど、その時丁度五番隊の副隊長が欠けてね。それで、私に話が回って来たのよ」


 俺が質問すると、カノンさんはすらすらと答えてくれた。

 どうやら、元四番隊の隊員であるようだ。確かに、それなら先程の言葉もなんとなく納得できる。


「今は五番隊だけど、四番隊も気になるのよね。特に、今の隊長であるファラエスのことは、色々知っているから……」

「え?」

「あの子が、騎士団に入ってから、私が副隊長になるまでくらいは、よく一緒にいたのよ」

「なるほど、そうなんですか……」


 そこで、カノンさんからそんなことを言ってきた。

 まさか、ファラエスと親しかったとは驚きだ。


「最近は色々あって、話せていないけど、あの子、元気?」

「ええ、多分、元気だと思います」

「そうですね、ファラエス隊長、最近はかなり明るいです」

「そうなのね? それなら、よかったわ」


 俺とセリアの言葉に、カノンさんは笑顔を見せた。

 その優しい笑顔は、少しファラエスに似ているような気がする。というか、全体的に持つ雰囲気もそうかもしれない。

 いや、ファラエスがカノンさんに似せているのだろうか。


「さて、そろそろ、私は行かないといけないわ」

「そうなんですか?」

「ええ、少し用があってね」


 そこで、カノンさんが立ち上がる。

 何やら、用があるようだ。


「……あら」

「うん? カノンさん?」

「どうかしたんですか?」


 しかし、カノンさんの動きはすぐに止まった。

 その目線は、一点に向いていることから、何かを見たから止まったのだろう。


 俺とセリアは、ゆっくりとカノンさんが見ている方向に目を向ける。


「カ、カノンさん……」


 そこには、ファラエスが立っていた。

 ファラエスは、カノンさんを見つめながら、驚いたような表情をしている。


「……久し振りね、ファラエス」

「あ、はい……お久し振りです」

「元気そうで、何よりだわ」

「はい……」


 俺達が振り返った後、ファラエスとカノンさんは会話を始めた。

 ただ、俺はその会話に違和感を覚えてしまう。


 カノンさんの言葉通りなら、この二人は親しい関係であるはずだ。

 だが、二人の会話は、雰囲気がとても暗い。親しい間柄なのに、こんな雰囲気はおかしいだろう。


「さて、私はそろそろ行くわね。あなたも、頑張ってね……」

「は、はい……カノンさんも……」


 最後にそれだけ言って、カノンさんは去っていく。

 それに合わせて、ファラエスもこちらに歩いてくる。

 その足取りは、少し重い。


「二人とも……カノンさんと話していたのかい?」

「あ、ああ……」

「は、はい……」

「そうか……」


 俺達の元に寄って来たファラエスは、そんなことを聞いてきた。

 その口調は、先程と同じく暗い。


「ファラエス、どうしたんだ?」

「カノンさんと、何かあったんですか?」

「あ、いや……」


 俺とセリアは、ファラエスに質問していた。

 こんな状態は、普通ではない。

 つまり、ファラエスとカノンさんの間に何かがあったと考えるのが妥当だろう。


「……うん」


 ファラエスはしばらく考えた後、ゆっくりと頷いた。

 やはり、何かがあったようだ。


「隠しても仕方ないだろうから、話させてもらうよ。少し、長くなるかもしれないから、座って話そうか」

「ああ……」

「わかりました」


 ファラエスの言葉で、俺達はベンチに座る。

 どうやら、全て話してくれるようだ。

 一体、どのような事情があったのだろうか。


「カノンさんから、どれくらい聞いているのかな?」

「ああ、ファラエスが騎士団に入った頃から、親しくしていて……」

「カノンさんが副隊長になるくらいまでは、一緒にいることが多かったと聞いています」

「……なるほど、それなら、大体はわかっているようだね……」


 俺とセリアの言葉に、ファラエスは少し笑う。

 ただ、楽しそうな笑顔ではない。少し、寂しげな笑みだ。


「私は、十歳の頃から騎士団に入っていたんだけど、入ってすぐに出会ったのが、カノンさんなんだ」

「最初から、という訳か」

「ああ当時の隊長が年も近いからという理由で、同じ任務に割り当てて、それで出会ったんだ」

「なるほど……なんだか、ボクとソーナさんみたいですね」

「ああ、当時の隊長に倣って、セリアにソーナを割り当てたからね」


 話し始めたファラエスの表情は、少し変わっていた。

 当時のことを思い出したのか、少し嬉しそうなのである。

 それが何故、今のような関係になったのだろうか。


「出会ってからカノンさんは、妹みたいに可愛がってくれて、色々なことを教えてくれたよ。私が騎士としてやっていられるのは、あの人のおかげさ」

「そうなのか……」

「それから、何年くらい経ったかな……カノンさんが、五番隊の副隊長に推薦されてね」


 そこから、ファラエスの表情がまた変わる。

 どうやら、カノンさんが五番隊の副隊長になったことが、二人の分岐点であるようだ。


「その時は喜んだけど、そこからはあまり会えなくなって……それでも、少しは交流していたんだよ? ただ、私が四番隊の隊長になることが決まって……それからは、ほとんど交流がなくなったんだ。よくわからないけど、カノンさんも私を避けるようになってね」

「避けるように?」

「ああ、多分、違う隊の隊長と副隊長が懇意にするのはまずいと思ったんだろうね。それで、私の方からもあまり関わらないようにしていて、今に至るということだね……」


 それだけ言って、ファラエスは黙る。

 その顔は、少し悲しそうだった。


 これが、ファラエスとカノンさんの間にあったことであるようだ。

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