第73話 弟子との討伐任務
俺は三人とともに、拠点まで来ていた。
ソーナとは、途中で別れ、俺とセリアは隊長室まで行く。
ファラエスから、任務についての説明を受けるためだ。
「さて、それでは任務について、説明しようか」
「ああ、よろしく頼む」
「といっても、単純な任務だから、そこまで説明することもないのだけど……あ、あった」
隊長室に入ると、ファラエスが机の中から紙を取り出す。
恐らく、任務の内容を記した紙だろう。
「さあ、これを見てくれ」
「ああ……ストライプスネーク?」
「それが、街道沿いに現れたから、倒して欲しいと……」
ファラエスに渡された紙を、セリアと一緒に確認する。
どうやら、ストライプスネークというのが、今回倒さなければいけない魔物のようだ。
ただ、俺はこの世界の魔物に、そこまで詳しくない。そのため、セリアにどんな魔物か聞いてみることにする。
「セリアは、この魔物がどんな魔物か知っているのか?」
「あ、はい。ストライプスネークは、縞模様の体を持つ大蛇です。その体のせいで、長さが掴みにくいのが少し厄介な魔物ですね」
「なるほど……つまり、距離感を大切にしないといけないのか……」
セリアの言葉で、相手がどんな魔物か少し理解できた。
距離感が掴みにくいのは、かなり戦いづらいと思うので、しっかりと気を引き締めなければならないだろう。いや、どんな相手でも、油断しようとは思わないが。
「ありがとうな、セリア。なんとなく、相手のことがわかったぜ」
「参考になったなら、よかったです」
「ふふ、どうやら、作戦会議は終わったようだね。それでは、二人とも頼んだよ」
「ああ、任せてくれ」
「はい! 頑張ります!」
こうして、俺とセリアは任務に向かうのだった。
◇◇◇
俺とセリアは街道を進んで行き、ストライプスネークが目撃された付近に来ていた。
「この辺りですね……」
「ああ、一体、どこにいるんだか……」
「セリア、森の中に入るぞ」
「はい!」
そこから、俺とセリアは森の中に入っていく。
恐らく、森のどこかに潜んでいるはずだからだ。
「さて、出てきてくれるかな……」
「どうでしょうか……」
俺とセリアは周囲を警戒しながら、森の中を進んで行く。
街道に現れたことから、人間でも襲ってくる可能性は高いだろう。
つまり、相手の方から出てきてくれるはずなのだ。
「うん?」
「あっ……」
少し開けた場所に出た時、俺とセリアは気づく。
何かが擦れるような音が聞こえてきたのだ。
俺達は同時に構え、来るはずの魔物に備える。
「シャアアアアア!」
「来たか!」
「はい! ストライプスネークに間違いありません!」
俺とセリアの方に、縞模様の大蛇が迫って来た。
こいつが、俺達が探していた魔物である。
予想通り、あちらの方から出てきてくれたようだ。
音も消さずに真っ直ぐに出てきたことから、こちらのことを舐めているのかもしれない。
それは、こちらにとっては好都合だ。
「なるほど……確かに、わかりにくい体だ……」
セリアに教えてもらった通り、縞模様の体で、どれくらいの長さなのかわかりにくい蛇だった。それに、かなり大きな体だ。これは、中々に戦いにくそうである。
「シャアア!」
「よっと!」
「はっ!」
突っ込んでくるストライプスネークに、俺とセリアは左右に身を躱す。
その体は、隙だらけだ。
「はああああっ!」
「シュルル!」
そう思い放った俺の一撃を、大蛇は体を丸めることで躱してきた。
何も考えず突っ込んできた訳ではなかったようである。
だが、俺は一人ではない。
「やああああっ!」
「シャア!?」
体を丸めたストライプスネークに、セリアの突きが刺さる。
ただ、完全に入った訳ではない。
「シュルル!」
なぜなら、ストライプスネークが周囲の木に噛みつき、その突きから逃れたからだ。
大蛇は、そのまま木に巻き付きながら、上へと向かっていく。
「逃がすか!」
そんな相手に向けて、俺は石を投げつける。
セリアが突きを放った直後に、地面から回収しておいたのだ。
「シャア!?」
石は、ストライプスネークの頭に直撃した。
そのことにより、奴は木の上から落ちていく。どうやら、バランスを崩したようだ。
後は、しっかりと切り裂くだけである。
「セリア! 合わせるぞ!」
「はい! 師匠!」
俺とセリアは、落ちているストライプスネークの元に向かっていく。
「はああああ!」
「やああああ!」
そして、二人同時に刀と剣を振るう。
その攻撃によって、ストライプスネークの体は三つに分かれる。
「シャアアアアア!」
「師匠!?」
「大丈夫だ!」
しかし、この大蛇の生命力は凄まじいものだった。
ほとんど頭だけになって、俺の元に向かってきたのである。
だが、その攻撃はあまり脅威ではない。
俺は素早く、刀を振るう。
「はあああ!」
「シャ……!」
その一撃が、ストライプスネークの頭を引き裂いた。
大蛇の顔が、地面に落ち、その力を失う。
流石に、命が尽きたようだ。
「師匠! やりましたね!」
大蛇が力尽きたのを確認して、セリアが寄ってきた。
セリアに向かって、俺はゆっくりと言葉を放つ。
「ああ、これで大丈夫だな……」
「はい!」
こうして、俺とセリアの討伐任務は完了したのだった。
◇◇◇
俺とセリアは、騎士団の拠点に戻って来ていた。
ファラエスへの報告も済ませたので、今は自由な時間である。
という訳で、俺とセリアは拠点の廊下を歩いていた。
行き先は、中庭である。
ただ単純に、休憩するためだ。
「あれ?」
「セリア、どうした?」
「師匠、あれを見てください」
「うん?」
そこで、セリアがそんなことを言ってきた。
何やら、見つけたようだ。
俺も、セリアが言った方向に意識を向けてみる。
「あ!」
そこには、黒い髪の女性がうずくまっていたのだ。
もしかしたら、具合でも悪いのかもしれない。
「セリア、行こう!」
「はい!」
俺とセリアは、すぐに女性の元へ向かっていく。
周りに人はいないため、俺達だけしか向かえない。
「大丈夫ですか……?」
「うっ……」
近づいて声をかけてみたが、女性は呻き声をあげるだけだ。
よくわからないが、表情は苦しそうに見える。
これは、医務室に行った方がいいだろう。
「セリア、医務室に行って、現状を伝えてくれないか?」
「あ、はい。すぐに……え?」
そう思い、俺がセリアに頼んだが、その時女性が動いた。
医務室に行こうとしたセリアを、止めたのだ。
よくわからないが、医務室に行くのが嫌なのかもしれない。
「どうしたんですか? 何か、医務室に行けない理由でも……?」
「ふ……」
「ふ?」
俺の質問に、女性は短く言葉を放った。
ただ、その言葉だけでは何かよくわからない。
「つ……」
「つ?」
女性は、さらに何かを言ってきた。
もしかして、先程の言葉から続いているのだろうか。
「か……」
「か?」
「よ……」
「よ?」
さらに言葉は続いた。
やはり、繋げるべき言葉のような気がする。
それと同時に、俺の中に一つの言葉が浮かんできた。
「い……」
「い、か……」
最後の言葉が放たれ、俺は理解する。
やはり、俺が思い浮べていた言葉だ。
「つまり、二日酔いか?」
「ん……」
俺の言葉に、女性はゆっくりと頷いた。
どうやら、二日酔いであるようだ。
医務室に行きたがらないのは、恥ずかしいからだろうか。
「……セリア、とりあえず、背中でも擦ってやってくれないか? 俺は水を汲んでくる」
「あ、はい。わかりました」
セリアにそんな指示を出し、俺は動き始める。
二日酔いだろうと、とりあえず助けることにしよう。
こうして、俺とセリアは二日酔いの女性を助けるのだった。




