第71話 隊長達からの追及
俺は、セリアとの入浴を終えて、廊下まで出てきていた。
そこで、クレッタに色々と詰められ、さらにはファラエスとソーナまで現れたのだ。
「さて、スレイド、話は大体聞いていたけど、確認させてもらうよ。君は、セリアと一緒にお風呂に入っていた、この認識でいいのかな?」
「あ、ああ……」
焦っている俺に、ファラエスがそう聞いてきた。
隠しても無駄なため、俺は素直に答える。
「なるほど……」
すると、ファラエスは顎に手を当て、考えるような仕草になった。
俺への処罰でも、考えているのだろうか。
色々と覚悟はしておく必要があるかもしれない。
「……スレイド、あなた、一体何を考えていたのかしら?」
「あ、いや……」
そこで、ソーナが声をあげた。
ファラエスが何かを考えている内に、ソーナからは説教なのだろうか。
「ソ、ソーナさん、怒らないでください。ボクから提案したことで、しかも師匠を騙してまで……」
そんなソーナに、セリアが声をかけてくれる。
どうやら、俺を助けてくれるようだ。
この弟子は、本当にいい弟子である。
「セリア、あなたも何を考えていたのかしら? 男の人と一緒にお風呂に入るなんて、色々と問題だわ」
しかし、ソーナの態度は変わらない。
それどころか、説教の矛先がセリアにまで及んでしまった。
ただ、これはソーナがセリアのことを大切にしているから故のことだろう。
やはり、ソーナも優しいのだ。
「スレイド? 何を少し嬉しそうな顔をしているの?」
「あ、いや、別に……」
「あまり、反省していないようね……」
俺がそんなことを考えていると、ソーナがそう言ってきた。
まさか、顔に出てしまっていたとは思わなかったので、俺は驚いてしまう。
説教中にそんな表情をするのは、いい印象ではないだろう。だから、ソーナが怒ってしまうのも当然だ。
「でも、ソーナさん。スレイドさんとはいつも一緒に寝ていますし、ソーナさんも色々問題なのではないでしょうか?」
「え?」
「だって、ソーナさんが感じている問題って、そこなんでしょう」
「そ、それは……」
そこで、クレッタがソーナに対してそんなことを言い放った。
その言葉に、ソーナは少し怯んでしまう。どうやら、クレッタの言葉はソーナにとって割と効いているようだ。
「ファ、ファラエス隊長からも何か言ってください」
そのためかはわからないが、ソーナはファラエスに助けを求めた。
「いや、ソーナ、別に一緒にお風呂に入ることはいいんじゃないだろうか?」
「え?」
しかし、ファラエスの放った言葉は、ソーナが望んでいたようなものではないようだ。
どうやら、ファラエスの中では、一緒に風呂に入るのは構わないという判定らしい。
「私も、スレイドと一緒にお風呂というのは、少考えていたよ」
「ええ!? ファラエス隊長!? 何を言っているんですか?」
「だって、スレイドはいつも一人でお風呂に入っているんだよ? それは、可哀そうだと思わないかな?」
「そ、それとこれとは話が別でしょう!?」
ファラエスの言葉を、珍しくソーナが否定する。
いくら尊敬する隊長でも、これは譲れないようだ。
結局、怒っているのはソーナ一人になってしまった。
「ファラエス隊長、一体どうしたんですか? いつもは、こんな感じではないのに……」
そのことに、ソーナは落ち込んでいるようだ。
怒られていたのは俺だが、流石にソーナが可哀そうになってくる。
そもそも、どちらかというと俺はソーナの考え側だ。
ここで怒られるのは、むしろ納得していたくらいである。
「ソーナ、俺はわかるぞ。今回は、俺も悪いことをしたとは思っていたんだ」
「ス、スレイド? あなた……」
色々考えた結果、俺はソーナのことをフォローしていた。
すると、ソーナの顔が明るくなる。
「わかってくれるのね……」
「ああ、年頃の男女が一緒に風呂は、流石に危ないはずだ」
「スレイド……」
ソーナは、俺の手をとりながら何度も頷いた。
何故、説教されていた俺がソーナの味方なのだろうか。
だが、ソーナの顔が明るくなったので、これでよかったのだ。
「え? でも師匠、また一緒に入ってくれるって……」
「え?」
「あっ! セリア! それは……」
いい雰囲気で終わらせられそうだったが、セリアの言葉がそれを止めた。
先程、ソーナの言葉を肯定したのに、矛盾する行動を俺はとっていたのだ。
これでは、ソーナも怒ってしまうだろう。
「スレイド……あなた、全然反省していないようね?」
「ち、違うんだ……」
「師匠、あの言葉は嘘だったんですか……?」
「セ、セリア、その……」
ソーナとセリアからの追及に、俺は困惑する。
どちらかを優先すれば、どちらかが悲しむ。何故か、そんな状況に追い込まれてしまっているのだ。
「ソーナ、それくらいにしてあげてくれ」
「ファ、ファラエス隊長……」
「本人達が納得しているんだ。それでいいじゃないか。外野から色々言うのは、あまりよくないと思うよ?」
「……はい」
そこで、ファラエスが助け船を出してくれる。
その言葉にある程度納得できたのか、ソーナは俺への追及をやめてくれた。
とりあえず、これで大丈夫だろう。
「それでスレイド、今度は私とも一緒にどうかな?」
「え?」
「私とスレイドが納得すれば、一緒に入ってもいいということでね」
「い、いや、それは……」
「駄目かな?」
ファラエスの提案に、俺は困惑してしまう。
その提案は、非常に魅力的な提案ではあるのだが、流石にまずい気がする。
ファラエスと一緒に風呂ということは、その裸を見ることになるだろう。そうなると、かなり色々とすごいことになるはずだ。
そのため、この提案はまだ受け入れられないのだろうか。いや、別にいいのかもしれない。俺は、どうすればいいのだろう。
「ふむ。悩むようなら、今はとりあえず保留としようか? それなら、君も問題ないだろう?」
「あ、ああ……」
悩んでいる俺を見かねてか、ファラエスがそう言ってくれた。
正直、このままでは結論が出そうになかったので、この提案は助かる。
心情としては一緒に入りたいと大いに思うが、理性がそれを止めてしまうのだ。
人の心とは、意外とよくできているものである。
「さて、その話は置いておいて……実は、スレイドとセリアに話さなければならないことがあるんだ」
「え? 俺とセリアに?」
「な、なんでしょう……?」
「ああ、仕事の話になって申し訳ないんだが……」
そこで、ファラエスが話題を切り替えた。
どうやら、仕事の話らしい。
恐らく、俺とセリアに任務でもできたのだろうか。
「君達が帰った後、魔物退治の依頼が一件入ってね。それを君達二人に頼みたいんだ。構わないかな?」
「なるほどな。それなら、俺は構わないぜ」
「はい。ボクも大丈夫です」
「そう言ってもらえると助かるよ。これで、色々と調節できるからね」
俺の予想通り、任務の話だったようだ。
もちろん、俺もセリアもまったく問題はない。
「本当は、家で仕事の話はしたくなかったんだけど……」
「構わないさ。むしろ、早く連絡できて便利じゃないか」
ファラエスは家で仕事の話をしたことを、気にしているようだ。
そんなことは気にする必要がないことである。むしろ、早く教えてくれて、嬉しいくらいだ。
「さて、皆さん、色々な話はありますが、一旦お開きとしましょう。ここで話続けるのも、なんだか変ですし」
そこで、クレッタが声をあげる。
その案は、俺達も納得できることだった。廊下でずっと話すのも、おかしな話だからだ。
こうして、この場は一旦解散となるのだった。




