表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の剣士は、世界の低すぎるレベルに失望し、異世界へ転生しました。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/176

第53話 試合後の疑問

「スレイド! 大丈夫か!?」

「師匠、大丈夫ですか!?」


 ノワールとの戦いが終わった後、セコンドのディオンとセリアがそう声をかけてくれる。

 戦いの中で、ほとんどかき消されてしまっていたが、二人が応援してくれていたことだけはわかっていた。このように、迎えてくれることも含めて、二人には感謝の気持ちしかしかない。


「ありがとよ、でも大丈夫だ。今回は、大した傷は負っていないしな」

「そうか、それならよかった」

「師匠が無事で、何よりです!」


 ディオンもセリアも、俺の言葉に安心したような表情をする。

 やはり、二人とも優しいのだ。


「とりあえず、中に入ろうぜ。話はそれからでもできる」

「そうだね、そうしようか」

「はい!」


 俺はそう言って、入り口から戻っていく。

 すると、前方に見知った二人の人物が見えた。ファラエスとソーナである。

 二人とも、試合が終わった後、すぐにこちらに来てくれたようだ。


「スレイド!」


 俺がそんなことを考えていると、ソーナが駆けて来ていた。

 本日の当事者なので、色々と心配だったのだろう。


「ソーナ、約束通り、勝って来たぜ?」

「ええ、スレイド、本当にありがとう……」


 ソーナは目に涙を浮かべながら、そう言ってきた。

 喜んでいるようで、何よりだ。


「スレイド、無事で何よりだよ」


 ソーナから少し遅れて、ファラエスもそう言ってくれる。

 前回の試合は、色々迷惑をかけてしまったため、今回はあまり傷つかずによかった。

 

「ああ、ありがとう、ファラエス」

「だけど、ちゃんと医務室に行くんだよ」

「ああ、わかっている」


 もちろん、医務室にはちゃんと行くつもりだ。

 外傷はないが、どこにダメージがあるかなどはわからないものである。念のため、医療のプロに任せるべきだろう。

 何より、とても疲れているので、休みたい気分である。


「それじゃあ、早速、医務室に向かわせてもらおうか……」

「一人で大丈夫かい?」

「ああ、問題ない」


 こうして、俺は控室に向かうのだった。




◇◇◇




 俺は医務室から出た後、廊下を歩いていた。

 ある人物を探すためである。しばらく歩いていると、その人物が発見できた。とりあえず、声をかけてみることにしよう。


「オルフィーナさん」

「……スレイドさん、お久し振りですね」


 その人物とは、ソーナの姉であるオルフィーナさんである。

 彼女には、聞いておきたいことがあったのだ。


「見事な戦いでした、おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 オルフィーナさんは、俺に笑顔でそう言ってきた。

 だが、少しだけ元気がなさそうである。


 オルフィーナさんは、ソーナとノワールの結婚話を進めていた側の人間だ。そのため、俺の勝利が嬉しくなくても当然かもしれない。

 しかし、そこは俺の気になっている点の一つでもある。


「私に、何かご用でしょうか?」

「ええ、実は聞きたいことがあるんです」

「はい、なんでしょうか?」


 俺は、オルフィーナさんに聞きたいことがあった。


「あなたは、一体何を考えていたんです?」

「何を? それは、どういうことですか?」


 オルフィーナさんの態度には、前々からいくつか疑問があったのだ。

 最初に会った時は、ソーナのことが好きでたまらないという感じだったが、次に会った時は、結婚の話を淡々と進めていた。

 それが、どうにも引っかかってしまっていたのだ。


「俺にはあなたが、ソーナの結婚話を淡々と進めるような人には、どうも思えないんです」

「……」

「こちらに来たのが、それが目的だなんて、ソーナ思いのあなたが考えるような人ではないはずでしょう? だから、一体何を考えていたのか、気になってしまったんです」

「ふふ……」


 俺の問い掛けに、オルフィーナさんは笑う。


「あなたになら、打ち明けてもいいのかもしれませんね。恐らく、全てわかっているのでしょうし……」


 それは、諦めの合図だったのかもしれない。

 どうやら、オルフィーナさんは、全て話してくれるようである。


「確かに、私がこちらに来たのは、ソーナの結婚話を進めるためではありません。むしろ、その逆です」

「つまり、ソーナの結婚話を止めるため、ということですか?」

「はい、やはり、わかっていたんですね」


 やはり、俺の予想通り、オルフィーナさんの目的はそちらだったようだ。

 ソーナが大好きなこの人が、嫌がっている婚約を進める訳がないのである。


「つまり、最初から俺とノワールを戦わせて、婚約を破棄しようとしていたってことでいいんでしょうか?」

「ええ、そうです。婚約を取り下げるには、ノワールさんから提案してもらわなければならないので、少々誘導させてもらいましたが……」


 オルフィーナさんは、自身の作戦を成功させるために、色々としていたようだ。しかし、そこにはある問題があったはずである。


「もし俺が負けたら、どうするつもりだったんです?」

「その時は、別の手を考えるまでです。色々と手は回してありますから」

「なるほど……」


 オルフィーナさんは、色々と入念に計画しているようだった。

 この人のソーナに対する愛情は、そこを知らないようである。


「あなたを利用したことについては、謝ります。すみませんでした」

「いや、それは別に構いません」

「そうですか、聞いていた通り、寛大な方ですね」


 俺がオルフィーナさんにこのことを聞いたのは、謝罪して欲しかったからではない。

 なぜなら、仮に俺が全てを知っていたとしても、同じことをしたからだ。つまり、何も変わらなかったということである。


「しかし、一つだけ気になることはあります」

「なんでしょう?」

「どうして、ソーナには何も言わなかったんですか?」

「そのことですか……」


 オルフィーナさんの計画は、ソーナに何も伝えられていなかった。ソーナの様子は、計画を知っている風ではなく、普通に心配し落ち込んでいたのだ。

 オルフィーナさんが、何故ソーナに知らせなかったのか。それは、気になっているところである。


「私のしていることは、褒められたことでありません。だから、ソーナに知られる訳にはいかなかったのです」

「……それで、ソーナに全てを秘密にして……」


 確かに、オルフィーナさんのやっていることは、あまり褒められたことではない。

 それを、ソーナに教えたくなかったというのも、理解できる。

 だが、俺には、どうしても納得できない問題があるのだ。


「それで、自身が嫌われても、いいということですか?」

「……はい、そうです」


 俺が問題に思ったのは、その部分である。

 結婚の話をしている時、姉妹の雰囲気はとても悪かった。その後も、ソーナは家に帰らず、俺達の家にいたのだ。姉妹の仲が拗れているといっても、過言ではないはずである。


 それが、俺にはまったく理解できなかった。

 ソーナのために、これだけしているオルフィーナさんが、本人から嫌われてしまうなど、いい訳がない。


「私は構わないのです。ソーナが幸せになるなら、私が嫌われてもいいのです」

「……そんなことで、いいはずがないでしょう」

「スレイドさんにも、納得して頂かないと困ります。このことをあなたの口からソーナに伝えられてしまったら、意味がなくなります」

「それは、無理ですね……」


 俺は、オルフィーナさんの言ったことをすぐに否定する。

 なぜなら、もう遅いからだ。


「そうだろう? ソーナ!」

「……ええ」


 俺が呼びかけると、物陰からソーナが飛び出してくる。


「お姉様……」

「ソ、ソーナ!? どうしてここに?」


 ソーナが現れたことで、姉妹の対話が始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ