第52話 二刀流の弱点
俺は、ノワールと対峙していた。
ノワールの二刀流は、とても厄介なものである。これをどうにかしなければ、俺に勝機はないだろう。
『さあ、ノワール選手向かっていきます!』
そんなことを考えている内に、ノワールが俺に向かってきている。
先程と同じように抜刀術で迎え撃っても、恐らくは無駄だろう。そのため、別の方法で迎え撃たなければならない。
その方法は、色々あるとは思うが、今思いつくことをやるとしよう。
「お前には、これだ!」
「何!?」
『おおっと!? スレイド選手、これは防御の体勢か!?』
『うん? いや、あれは……!?』
俺は刀を構え、ノワールを待ち構える。
あの猛攻を耐えるという課題に対して、最初に思いついたのがこれだった。
『セリクさん、どうしたんですか!?』
『スレイドがしようとしているのは、恐らく防御の剣技……我らが家に伝わる伝統の剣技です……』
『なっ!? つまり、あれはセリク選手の技ということですか!?』
俺がとったのは、セリクから学んだ防御の体勢。
俺が知っている中で、最も優れた防御は、セリクのものだ。故に、この体勢でノワールを迎え撃つことに決めたのだ。
「ふはは! 少々驚いたが、それがどうした!?」
「どうかな!?」
「ふはあああ!」
『ノワール選手、一撃!』
ノワールが片方の剣を振るってきた。
俺は、その攻撃を受け止めながら、次の攻撃に備える。
『スレイド選手、受け止めました! しかし、これはまだ一撃目! 猛攻は続いていく!』
『いえ、問題ありません……』
「ふはは! まだまだ!」
「くっ!?」
『おおっと!? ノワール選手、二撃目!』
ノワールは、さらに攻撃を重ねてきた。
俺は素早く刀と体を動かし、それを受け止める。
防御に集中したことと、セリクの動きを参考にしたこととで、先程よりは受け止めやすい。
『スレイド選手、受け止めた!』
『我が家の防御は鉄壁です。二刀流であろうとそれは変わりません』
「ふはは!」
「おおっ!」
ノワールの攻撃を、俺は受け止めていく。
『ノワール選手、さらなる攻撃! しかし、スレイド選手受けとめます!』
『完璧ではないとはいえ、防御の剣技は、ノワールでも破れないでしょう』
『セリクさん、先程から解説が偏っていますよ!?』
俺の防御は、ノワールに崩されない。
流石は、鉄壁といわれる防御の剣技だ。
「くっ……何故破れん!?」
「さあて、反撃といきますか!」
「ぐっ!?」
『む? スレイド選手、押したあ!?』
『これは……?』
俺が刀に力を込めると、ノワールの体がどんどんと後退していく。
多少怯むとは思っていたが、ここまでとは驚きだ。
ノワールの力は、思ってより低かったのだろうか。
「な、何!?」
ノワールの様子を伺うと、何かに驚いているようだった。
奴自身も、押し返されたのに驚いているらしい。
「……そうか!」
そこで、俺はあることに気づいた。
それは、ノワールの剣技が持つ絶対的な弱点のことだ。
奴は、普通に戦っているつもりかもしれないが、それはどうしても避けられないはずである。
「ノワール、お前の弱点がわかったぞ!」
「な、何!?」
『むむむ!? スレイド選手、ノワール選手の弱点を見つけたようだ! 一体、なんだというのか!?』
俺の言葉に、周囲が少し騒めくが、そんなことは気にしない。
「お前の二刀流は、確かに強力なものだが、それには欠点がある」
「欠点だと!? 俺の二刀流に、そんなものはない!」
「いや、あるのさ。お前も気づいていなかった最大の弱点がな……」
『ス、スレイド選手、自身満々だ!』
『弱点ですか……一体、何を言い出すのか……』
やはり、ノワールは二刀流の欠点に気づいていないようだ。
それなら、特別に教えてやるとしよう。
「二刀流は、二つの剣を扱う都合上、通常よりも腕にかかる負担が大きいのさ。お前は気づいていないかもしれないが、その腕は限界の悲鳴を上げているぜ」
「悲鳴……? そんなはずはない、俺の腕に限界などありはしない」
「なら、証明してやるさ……その弱点をな」
俺は言葉の後、ゆっくりとノワールに近づいていく。
これから、ノワールにそれを痛いほどわからせてやる。
『スレイド選手、ノワール選手の弱点を言った後、ゆっくりと近づいていきます』
『……確かに、二刀流の弱点とは言えることでしたが、スレイドは何をするつもりか、注目すべきでしょう……』
「なんだか知らんが、この俺に隙は……ない!」
向かっていく俺に対して、ノワールは駆け出してきた。
その身のこなしの軽さは、変わっていない。
しかし、それは足へのダメージの話である。
腕への負担は、それと関係ないことなのだ。
「喰らえ!」
『ノワール選手、向かって行っての一撃!』
ノワールが俺に向かって、剣を振るってくる。
俺はその剣に合わせて、刀を振るう。
「秘剣技! 震!」
「くっ!?」
『おおっと、スレイド選手、迎え撃った! ……な、なんだ!?』
『これは……!?』
俺の一撃は、ノワールの剣に当たり、その振動をノワールの手に伝えていく。
「なっ!?」
『ああ!? ノワール選手、ぶつかった方の剣を、取りこぼしてしまった!?』
それにより、ノワールは片腕から剣を落としてしまった。
ノワールは、自身に何が起こったか全く理解できてないようだ。
「ば、馬鹿な……」
「さっきの攻撃は、お前の腕にダメージを与えるものだ。その一撃で剣を落としてしまう程、お前の腕は限界だったんだ……」
「くっ……!」
ノワールは体を下げ、剣を拾うおうとする。
俺は敢えて、それを邪魔しない。ノワールに、自身の状態を理解させるためである。
「なっ……!?」
ノワールは、剣を拾えない。
持つことはできても、上げることはできないのだ。
二刀流の負担に加え、俺の一撃を受けたことで、ノワールは腕に力が入らなくなったのだろう。
『ノワール選手、拾えません! 本当に、腕に限界がきていたようです!』
『スレイドの一撃が、決定的でしたね。ノワール自身は、戦っているおかげで、それを意識せずにいられましたが、それで瓦解してしまいました』
これで、決着はついたも同然だ。
ノワールは片腕を封じられている。戦力は半減だ。
「何を、勝ち誇った顔をしている……」
「何?」
しかし、ノワールはまだ諦めていなかった。
片腕の剣を握りしめ、こちらに向けてくる。
「まだ片腕が残っている……故に、勝負はまだまだだ!」
「ノワール……」
「最後の最後まで、付き合ってもらうぞ!」
『ノワール選手! 片手だけでも諦めてはいない! スレイド選手に剣を振るいます』
『しかし、これは……』
ノワールは、俺に向かって剣を振るってきた。
まだ戦いを続けてくるとは、大した根性である。
ならば、俺も応えなければならない。
「秘剣技! 震!」
「うっ……!」
『スレイド選手、無慈悲にももう一撃! ノワール選手は、もう片方の剣も取りこぼしてしまいます!』
「終わらせよう! ノワール!」
「ぐわあああああっ!」
『スレイド選手、さらに一撃! ノワール選手の体が、引き裂かれてしまいます!』
向かってきたノワールを、俺は切り裂いた。
手加減などない、全力の一撃だ。
ノワールの体から、鮮血が噴き出る。
「み、見事……!」
『ノワール選手、膝をつきます! これ以上、耐えられないか!?』
『両腕を封じられましたから、恐らくは……』
ノワールから力が抜け、地面に倒れ込む。
「試合終了!」
そこで、審判の一声が響く。
これで、試合は終わりだ。
ノワールを運ぶために、担架が運ばれて来るのが、見えてくる。
『ノワール選手が倒れ、今、ここに勝者が決まりました!』
会場から、大きな歓声が聞こえてきた。
『その名はスレイド! 四番隊の新進気鋭! 見事な戦いでした! 皆さん、拍手でお送りください!』
さらに、拍手が聞こえてくる。
それを聞きながら、俺はゆっくりと闘技場から歩き出す。




