第100話 メイドに釣られて
俺はクレッタと洗い場にいた。
色々あって、クレッタと一緒に入浴することになったのだ。
背中を洗ってもらい、頭を洗ってもらい、体も洗ってもらって、俺は綺麗になった。
その後、その他を洗ったりして、いよいよ湯船に浸かる。ちなみに、その間クレッタには離れてもらっていた。色々と見られたくなかったからだ。
クレッタも、色々としていたらしいのだが、その内容は聞いていない。クレッタの方は、見ないようにしていたからだ。
「さて、それでは入りましょうか」
「ああ……」
俺はクレッタとともに、湯船の中に入っていく。
温かいお湯が、俺の体を癒してくれる。今日も、色々とあったため、お湯が体に染みてくるのだ。
「気持ちいいですね」
「ああ、そうだな……」
クレッタは、湯船に入ってから距離を詰めてきた。
その肩が、俺の肩に当たる。そのことに、俺の心臓は少し鼓動を早くしていく。
「スレイドさん……少し、こちらを見てもらえますか?」
「え?」
そこで、クレッタが俺に呼びかけてきた。
という訳で、俺はクレッタの方を向いてみる。
「ここですよ?」
「うおっ!」
俺は、思わず声をあげてしまった。
なぜなら、クレッタが胸元を強調するようなポーズをしていたからだ。
それにより、俺の視線はその谷間に向いてしまう。これは本能なので、避けることができないものだ。
「あ、見ましたね」
「くっ……」
「見ていいんですよ」
クレッタの表情は、得意げであり、とても楽しそうである。
なんだか、負けたような気分だ。俺の動きは、概ねクレッタの予想通りのはずだろう。そのことが、俺に敗北感を味わわせてくれる。
「な、なら、見せてもらおうか……」
「あらら……」
そのため俺は、視線を逸らさないことにした。
このまま胸元から視線を外せば、またもクレッタの想定した動きになってしまう。そう思ったので、俺はクレッタの谷間をガン見する。
俺にとって、それはデメリットがないことだ。見てもいいというなら、たっぷりと見せてもらおう。
「それなら……」
「うん?」
「こうしましょうか?」
「うっ……」
そこでクレッタは、タオルを動かし始めた。
少し位置を動かし、見える部分を増やしてきたのである。もう少しで、大切な場所まで見えてきそうだ。それにより、俺の視線が動く。
「ふふふ……」
「ぐっ……」
またも、クレッタの想定通りに動いてしまった。
俺の心に、さらなる敗北感が到来する。
「あ、スレイドさん、こういう所は隠して欲しいんでしたね」
「あっ……」
その瞬間、クレッタがタオルを元の位置に戻した。
なんだか、とても残念な気分になってしまう。とりあえず、視線は胸元から外さないが。
「うーん、次は何をしましょうか……」
クレッタは、何か悩み始めていた。
完全に、俺で遊ぼうとしている。だが、俺は負けない。絶対に、クレッタに勝ってみせる。
そんな感情が、俺の心に湧き出してきた。ただ、どうしたら勝てるかわからない。そもそも、何をしたら勝ちなのだろう。
「あ、そうだ」
俺がそんなことを考えていると、クレッタが声をあげた。
どうやら、何かを思いついたようだ。
一体、何を思いついたのだろうか。最早、俺は期待すら覚えてしまっている。
「これは、どうですか?」
「おおっ!?」
クレッタは、自身の胸を揉み始めた。
それにより、その胸が形を変えていく。その光景が、俺の心を激しく揺さぶってくる。
「さて……」
「あっ……」
俺がそこに夢中になっていると、クレッタが手を止めた。
少し残念だが、これも仕方ない。
「スレイドさん、随分楽しそうですね……」
「え?」
そう思っている俺に、クレッタがそう声をかけてきた。
またも、クレッタの策略に乗せられてしまったのだ。
もしかして、俺はクレッタに勝てないのだろうか。
「くっ……俺はどうして、こんなに……」
「スレイドさん、とても乗せやすいですよ」
「な、なんだって……」
そんな俺に対して、クレッタはそう言ってきた。
なんだか、とても屈辱的だ。だが、何も言い返せない。
「……さて、スレイドさん、そろそろ遊びは終わりにしましょうか?」
「え? あ、ああ……」
そこで、クレッタがそんなことを言ってきた。
どうやら、俺は勝利の機会すら与えさせてもらえないようだ。
仕方ないので、俺はクレッタの顔に視線を向ける。
「スレイドさん、すみません。少しからかい過ぎてしまいましたね」
「え? いや、別にいいけど……」
「あまりに上手くいき過ぎて、調子に乗ってしまいました」
クレッタは笑みを浮かべながらそう言ってきた。
なんだか、勝ち誇られているようにも聞こえなくもないが、恐らくはそんな意図ではないはずだ。
ただ、楽しかったのは確かだろう。この笑顔は、そうでなければでないはずだ。
「まあ、俺も乗せられてしまったからな……」
「そう言ってもらえると、なんだか嬉しいですね。私の体でも、スレイドさんを満足させられるんですから……」
「え?」
「これなら、いざという時も大丈夫ですね」
俺に対して、クレッタは意味深なことを言ってくる。
それは一体、どういうことなのだろう。よくわからないが、少しドキドキしてくる。
「もし本当に我慢できなくなったら、私に言ってくださいね?」
「うん? あ、ああ……?」
クレッタの言葉に、俺はとりあえず頷いた。
よくわからないが、同意しておけばいいだろう。
「ところで、お嬢様とお風呂に入った時は、どうたったんですか?」
「え?」
「見たんですか?」
そこで、クレッタがそんなことを聞いていた。
その顔は、先程と同じく楽しそうだ。もしかして、わかっていて聞いているのだろうか。だとしたら、質が悪い質問である。いや、そうでなくても答えにくいことなのだが。
クレッタならその可能性もあるだろう。からかうのが大好きだからな。
「……見ました」
「ふふふ、そうだったんですか」
少し考えた結果、俺はそう答えることにした。
ここで言い訳すると、もっと詰められそうだ。もう全てさらけ出す方が早いだろう。
「お嬢様のおっぱいは凶悪ですから、大変だったでしょう」
「そりゃあ、まあ……」
「私もまさか、あんなになるなんて思っていませんでしたよ。食べているものは同じなので、あれは体質なのでしょうか……?」
何故かクレッタは、そんなことを語り始めた。
ファラエスの胸事情のことなど、知る訳がない。そもそも、クレッタも充分大きいので、食事がよかったというのも捨てきれないのではないだろうか。
「まあ、いいですよね。スレイドさん、大きい方が好きですし」
「え?」
「違うんですか?」
「……どうだろうな?」
俺に対して、クレッタはそんなことを聞いてきた。
その質問に、俺は悩んでしまう。
確かに、大きいのは好きだ。だが、別に小さいからといって嫌いという訳ではない。
そのため、この質問は答えが出しにくいのである。
「スレイドさん?」
「いや、すまない。少し考えてしまって」
「い、いえ、なんとなく何を考えているかわかったので、いいです」
俺の心中を察してか、クレッタがそう言ってくれた。
その言葉は、とてもありがたいものだ。これは俺も、答えが上手く出せそうにない。
「さて、私はそろそろ上がろうと思います。スレイドさんは、どうしますか?」
「ああ、もう少し入っておくよ」
「そうですか。それでは、失礼します」
そこでクレッタは、湯船から出ていく。数秒後、脱衣所の戸が開く音が聞こえてきた。
これで、クレッタとの入力は終わりだ。色々あったが、中々楽しいものだった気がする。
その後しばらく、俺は風呂に留まるのだった。




