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女子自動車部こんぺてぃちおーね!  作者: 多井矢成世
第1話 春です!モータースポーツシーズンです!
3/19

1-1

 時は戻り現在、すっかり葉桜が目立ち始めた4月の頭、愛知県にあるジムカーナコースのひとつ、キョウエイドライバーランドで中部地区の大学女子自動車部・合同テストが開催されていた。


一台の車が走行を終えパドックに帰ってくる。ホンダCR-X【EF8】1990年製でヒストリックカーに片足を突っ込んでいる車齢であるがどうして、未だにサーキットやジムカーナでは高い戦闘力を誇るれっきとした現役のスポーツカーである。


「おっし、なかなかいい感じ!タイムはどうだった!?」

CR-Xより一回り近くは年下であろう、短髪でボーイッシュだが、スタイルは良いレーシングスーツで身を固めた少女が車から降りながら問いかける。

彼女の名前は今池ひとみ、愛心学院大学女子自動車部2年生。昨年は1年生ながらドライバーに抜擢され同校初の全国大会進出に貢献。今年はエースとして更なる活躍が期待されている。


「ひとみ、お疲れさま。1分2秒581、0.3秒更新ね」

対照的に落ち着いた雰囲気で答えるのは神沢響子、同自動車部3年生の部長である。後輩のひとみの才能を素直に認めており、第2ドライバーとして部をまとめている。


「へへーん、じゃあ全体ベストだ。エンジンも絶好調だし今年も全国大会の切符は頂きだね!」


「ひとみ!ボサっとしてないで次のメニューの準備!サスペンションのセット替えるからウマ(※車をジャッキアップした後作業のしやすい高さに固定するツール:リジッドラックの俗称)架けるの手伝って!茉莉はCPUのログチェックお願い」

ガレージジャッキをゴロゴロ引きずりながら大声で叫ぶのは3年生でメカニック担当の本郷睦美だ。


「先輩!了解であります!!」

いかにもお調子者と言った口調でひとみはレーシンググローブからメカニックグローブにはめ替えウマを取りに向かった。

ひとみと入れ替わり小柄な少女がCR-Xのコクピットへ入る。2年生の八草茉莉。メカニック担当であるが、CPUのセッティングなど電子機器の扱いに長けている。ちなみに重度の車オタクでレースや車の知識は部員の中でも群を抜いているらしい。


「ひとみ~!しっかりビデオ撮ったから後で解析と私の走りのアドバイスお願いね!」

ビデオカメラを片手に観戦エリアから帰ってきたのは第3ドライバー候補、2年生の篠原まどか、ややおっとりとしており部員の中でもいじられ役である。


「まどかぁ~、さっき君は何秒だった~?」

「え、えぇ、、、私は1分、、、5秒1です・・・」

「ふむ、正直でよろしい。次のセッティングはもう少しアンダーステアになると思うけど、思ったより路面温度も高くてタイヤもグリップするからぐんぐん踏んでくぞ!」


大学女子ジムカーナの大会は各大学代表の3名のドライバーが2本ずつ走行し、そのうち速かった2名それぞれのベストタイムの合計で争われる。極端に言えば2人速いドライバーがいれば良く、第3ドライバーは保険扱いなのだがそこは競技の世界、どんなトラブルがあるか分からない。勝つためには優秀なドライバーを3人揃えられる学校が強いのである。

まどかはひとみ、響子に比べてはっきり言って遅い。部内ではメカニックの睦美の方が腕前は上である。しかし部員が現状5人と少なく、睦美はメカニックに集中したいという本人の希望もあってまどかの育成は急務なのだ。


「ダダッ、ダダッ!」

電動インパクトの音が響き渡る。睦美がフロントのショックアブソーバーの交換を終え、CR-Xをウマから降ろそうとジャッキ手をかけた時だった。


「愛心学院大学の皆さま~~!グッモーニンー!ですわ!!」


睦美の背後から甲高い声が響き渡る。一瞬睦美の表情が強張り手が止まるが何事も無かったように車を地面に降ろした。


登場車両紹介

ホンダ CR-X【型式EF8】

愛心学院女子自動車部部車

1987年~1992年に生産されたモデルで、VTECを備えたB16A型エンジンを搭載した「SiR」をベースにしている。当小説内での女子ジムカーナ競技は『JAF国内競技車両規則第3編スピード車両規定 スピードSC車両』の『2輪駆動車』によって行われる。当該車両はB16Aエンジンにスーパーチャージャーを後付けし200psオーバーを実現。また徹底的な軽量化により車両重量は850kgを下回るモンスターマシンとなっている。


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