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女子自動車部こんぺてぃちおーね!  作者: 多井矢成世
第3話 上達に近道無し!
12/19

3-1

 新学期が始まり早1ヶ月、ゴールデンウィークも明け世間一般で言うところの5月病のシーズンだ。


 新勧のデモンストレーションも、ひとみが付けたタイヤマークの件で学校側から奉仕活動のペナルティを受けはしたが、概ね好評で例年より多い入部希望者が訪れた。

 

 しかしである。日が進むにつれまた一人、また一人と新入部員の足が部室から遠のく。

 

 そしてゴールデンウィークが明けた今、真面目に参加しているのは例年並みの3人になっていた。


「はぁ……やはり私に部長の責務は重すぎたのかしら……」

 本日ノルマのキャンパス掃除から帰ってきて部室の片隅でどんより肩を落としているのは響子である。


「そ、そんなこと無いですよ!ひとみの暴走をコントロールしてこの部をまとめられるのは部長だけです!」


「コントロールできなかったからこの1ヶ月キャンパスの清掃やら裏山の草刈りやらに精を出してたんですけどね……これじゃ新入部員にも自動車部じゃなくて清掃部だと思われてるわきっと……」


「部長、もともとウチは少数精鋭がモットー、凄い新人もいることだし大丈夫…っ!?」

 ペナルティの張本人であるひとみが臆面もなく言い放つと、まどかが『それ以上一言もしゃべるな』と言わんばかりの鬼の形相でひとみを睨みつけた。


「ただいま戻りました~!」

 部室に戻って来たのは裏山の草刈りから帰って来た新入部員3人組だ。 

 1人はもちろん元カート少女、期待の新人守山亜里沙である。

 残りの2人は、牛乳瓶の底のようなレンズの丸眼鏡少女、植田美優うえだみゆ。そして全開ギャル、寒河江江梨奈さがええりなだ。


「みんな、本当に今までお疲れ様……今日で奉仕活動もようやく終了、これからは部の活動に集中していくからよろしくね」



「私は先輩のレクチャーのおかげで無事免許を取ることができました。これくらいの事はどうってことないです!」

 免許取得で四苦八苦していた植田美優だが、システムを理解しておらず教習費用が高いから丁寧なんだと勘違いをしてMT免許を受講していた。そんな車音痴の美優に響子は自分の車を使って練習するなど全面的にサポートしていたのだ。


「アタシも実家の畑の手入れに比べたら全然ラクショーっしょ!それにひとみ先輩の頼みなら断れないし~!」

 こんなキャラだが江梨奈の実家は山形でさくらんぼ農家をしているらしい。実家の軽トラを運転するため、当たり前のようにMT免許を持っていた隠れた逸材だ。おまけに妙にひとみに懐いている。


「お、掃除組も戻ってきたか。こっちも無事に終わったぜ!」

 睦美と茉莉がガレージから戻ってきた。


「睦美と茉莉もお疲れ様。ごめんね、あまりそっちを手伝えなくて」


 2人は奉仕活動の代わりに念願である練習車両の製作を行っていた。CR-Xは大会に向け万全の状態を保つ必要があり、練習用に乗り回せる車の準備を急いでいたのである。


「エンジンはまだ大丈夫そうだけどミッションがヤバかったな。まぁどうせデフとファイナル交換で開けるつもりだったけど。それより安い部品がなかなか見つからなくて、思ったより時間食っちまった」

 

「睦美先輩の実家が車屋さんでほんと大助かりだよねー!あんな車がタダで手に入っちゃうなんて!」

 ぶかぶかのツナギ姿の茉莉は上機嫌だ。


「ウチは修理だけじゃなくて中古車販売もやってるからな。アレが廃車扱いで入ったって聞いてソッコー親父に頭下げたよ。さて、せっかく全員揃ってることだし、今からガレージでお披露目会と行きますか!」


 部員一同ガレージへ移動する。今まで何度も車を目にしているし手伝いもしている。しかしいざ完成となると新鮮な気持ちで見れるものだ。

 

 

―「こいつが今日から私たちの新しい相棒になる『ミラージュ サイボーグ』だ!」―

 

 三菱 ミラージュ サイボーグZR【CJ4A】、ミラージュには競技専用のRSというグレードもあるが、サイボーグは快適装備付きの街乗り仕様車である。と言ってもエンジンは共通で違いは重量増と若干ボディー補強がされていない位である。


「20万キロ近く走ってるがエンジンは好調、ボディーも綺麗なもんだったぜ」


「この車、後ろのデザインちょっと変わってますね。なんかダルマみたいで少し可愛いかも」

 亜里沙がリアのハッチを開け閉めしながら言った。


 まどかが早速運転席に乗り込み操作系の確認をしている。

「ああぁ、やっぱり内装結構剥がされてる…先輩、ちなみにエアコンは?」

「んなもん外してるに決まってるだろ」

「ですよねー……」

 聞いた私が馬鹿でしたと言わんばかりの表情で答える。


「え?エアコン無いとかマジ!?夏とか超ヤバく無い!?」

 周りが毒されているだけで江梨奈の反応が普通である。


「移動は積載車で運ぶからまぁ大丈夫だけどな。それでも雨の時は窓が曇ってしょうがないし、有ってもいいとは思うけどね……」

 ひとみも少しエアコンに未練が有りそうな表情で言った。


「馬鹿言うな、CR-Xにエアコンが無い以上同じ条件にするのは当然だろう。窓が曇る時の対処を覚えるのも練習車の目的だ」

 睦美がなんとなく理に適っているようなそれっぽい理由付けをする。ちなみに元競技車両だった彼女のランサーもエアコン無しだ。


「夏の大会まであと3ヶ月と少し、部長、私頑張りますから!」

「まどかもどんどん上手くなってるから期待してるわよ」


 新しい車の周り続く部員たちの団らんを少し離れたところから響子とまどかは見つめていた。

登場車両紹介

三菱 ミラージュ サイボーグZR【型式CJ4A】

愛心学院大学女子自動車部練習車

 1995年に登場した5代目ミラージュのスポーティモデル。4代目ミラージュから引き継いだ4G92 MIVECエンジンは、ホンダV-TEC同様の可変バルブタイミングを備え1.6Lながら175psを発揮する。1トン強という車重の軽さも相まって、前輪駆動の競技車両としてはシビックに次ぐ人気を誇った。

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