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起きる災害・上

早朝でも太陽は早くから仕事を始め、暑さが地面や家の中を焼き始める。


そんな感覚に陥った勇人は汗だくで暗闇から覚醒した。



「あ…暑い」



起きだした勇人は着替えるためパジャマを脱ぐ。普段着ている洋服とおばあさんから借りている甚平を見ると甚平を着る。



「涼しい」



窓を開けると吹き込んでくる風が甚平の隙間を通り、肌に当たる。勇人の顔も気持ちよさそうな表情をしていおり、リラックスしている。


時刻は6時、この時間帯で起きているのはラジオ体操をする人たちぐらいではないかと、一緒に寝ていた読夜を見て考えたが台所に向かうとお爺さんとおばあさんが活動していた。


年寄りは早起きなのだろうそう考え、突っ立ているのも邪魔になると思い台所に顔を出す。



「おはようございます」


「おはよう」


「おはよう。勇人ちゃん、ご飯とお味噌汁でいい?」



勇人は頷くとおばあさんに催促されて席に着いた。勇人の前には暖かいご飯とネギや豆腐が浮かんでいるお味噌汁が出てくる。


1口食べると柔らかい米が歯で潰れて甘さが引き出される。お味噌汁も少し濃いがネギと豆腐の味の組み合わせで美味しいのでちょうどいい。



「美味しい?いつもはどんなの食べているの」


「美味しいです。朝は食パンばかり食べているので新鮮です」


「そうか、そうか」



おばあさんの質問に勇人は淡々と答えるが暖かな食事をしているため口元が緩んでいる。


食事を済ませた勇人は2人にお礼を言って、やることもないため外に出た。



「どうしようかな。カシヤはどっか行ったし」



昼ほどではないが少し暑く感じる。体を思いっきり伸ばすと山の方に森に埋もれているような神社が視界に入った。



「…少し行ってみるか」



朝方でも日差しが強く、さらに蝉も活動を始めたように泣き始め、いやでも夏の季節を感じさせる。


勇人は額に無数の汗をかきながら神社に足を進める。



「ふぅ、やっと着いた」



昨日は神社に上がってはいない。急勾配の石の階段を見て勇人はため息をつく。長時間の歩行や高い気温のせいで息が絶え絶えになりながら神社に着く。


年季のある神社は人によっては神秘的に感じるのかもしれないが勇人には何か気味の悪い気配を感じ辺りを警戒する。風により葉のこすれる音や蝉の合唱しか聞こえてこない。


勇人はお手洗いに近づくが水道が止められているのか水が出ていない。頭をかきながらあたりを見渡すが人が来ない場所でも最低限の掃除はされているのか参道の部分には落ち葉やゴミが少ないしか感想が出てこなかった。


備え付けられているベンチに座り休憩をする。勇人は目を瞑ると涼しい風が汗を冷やしていくので冷たく感じている。



「よし」



ベンチから離れると林の方に行き、少し硬い枝を持つ。軽く振ると心地いい風切り音と振った程度では折れない耐久度で勇人は少しご機嫌になる。


周りに木があり、枝を振り回せる空間に立ち、目を瞑ると強い風が吹く荒れる。


勇人の頭上から大量の葉がゆっくりと降ってくる。勇人は目をゆっくり開くと目の前に通り過ぎる葉を見ると枝を振り、叩き落していく。



「1、2、3、4、5」



ぶつぶつと呟きながら徐々に振る速度を上げていく。その姿は一種の演武のように見えて人によっては立ち止まって見学しているかもしてない。



「6、7、8、9…あ」



降り積もった落ち葉に足をとられ、転びそうになる。


10枚目に目をつけ無理やりな態勢で枝を振ったが葉に当たることなく情けない風切り音を発し、勇人は背中から倒れた。


背中が痛い仰向けに倒れながらそんなことを考え、木の葉の間から注ぎ込まれる木漏れ日が勇人の顔を染める。背に着いた葉や枝を叩き落としながら立ち上がる。


やる気がなくなったのか手に持っていた枝を放り捨てて神社の方にあるベンチに足を進める。



「ん…誰かいる」



勇人がベンチに座っていた所に女の子が座っている。少しづつ近づいていくと奈津美とわかった。


奈津美はベンチに座ったまま、本殿の方を見ている。その眼差しは本殿の中には何があるか興味がわいている瞳をしている。



「それ以上見ていると飲み込まれるよ」


「え!」



勇人は背後から奈津美に声をかけると奈津美はびっくりしてベンチから落ちそうになる。奈津美は高鳴る心臓を抑えるように手を胸に当てが振り返る。



「座敷童…」


「座敷童?違うよ」



奈津美のつぶやきには勇人は特に気にしている様子はなく、ただ見つめるだけである。


奈津美は居心地が悪そうにもぞもぞと体を動かしている。意を決したように勇人に話しかける。



「じゃあ、何て呼べばいいの」


「勇人」



勇人…勇人…奈津美は忘れないようにぶつぶつを呟き、何かを考えているようだが困った表情をしている。



「ねえ、どこかで会ったことある?」


「いや、ない」



奈津美の質問を勇人は間髪入れずに答える。勇人の表情が変わることがないので、奈津美は嘘か本当か判断がつかない。



「…」


「…」


「えっとね、私は奈津美」


「…そう」



2人の間には沈黙が続く。奈津美は居心地の悪さから遠くからはセミの鳴き声、風が吹けば葉のこすれる音が聞こえているはずなのに無音の空間にいる感覚に陥る。



「一緒に遊ぶ?」



沈黙が耐え切れなかった奈津美は口から絞り出すように出た言葉は遊ぶという提案だった。


言った後すぐに後悔した普通に帰ればいいのに彼ならそう、の一言で簡単に別れられそうなのにと考えたが、



「いいよ」



勇人は何を考えているのかわからない表情で答える。奈津美は覚悟を決めた表情となるがこの炎天下、外で走り回るのはいかがなものかと思い。



「じゃあ、かくれんぼ」


「いいよ」



奈津美の提案にまたも間髪入れず勇人は答える。いいよの一言、奈津美には嬉しいか嫌かもわからない。


とっさに提案したことだが無表情ばかりで何を考えているかわからない勇人から少しの間でも別れたいので奈津美はかくれんぼで少し離れておこうと思った。



「私が隠れるから勇人が鬼ね。100秒数えてね」


「わかった」



勇人は狛犬の台に顔を伏せて数え始めた。


奈津美は急いで本殿の方に向かい周りを見渡すが裏の方に小さな小屋が見えるだけで隠れるところが見当たらない。


かくれんぼいえども勝負は勝負、勇人から離れることを考えていたが奈津美は携帯ゲームや玩具など遊ぶものを持ってくるのを忘れていたので娯楽に飢えているのだ。


よって、隠れるところを探しているとかくれんぼが楽しくなってきている。


急いで隠れるところをあらかた探したがここだと思うような所を見つけることができなかった。


奈津美はふと本殿に目をつける勇人の言葉で我に返ったが何か心惹かれるものがあると思ったのは確かだ。


ここに隠れようそう思った奈津美はゆっくりと本殿の扉を開けて中に入っていく。



それがのちに悲劇を起こすと知らずに、

7月6日10時に投稿します

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