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カミナギ~光から陰に編~

目を覚ます。カーテンの隙間から強烈な日の光が差し込み、今日も暑いんだろうなそんな気持ちになる。


パジャマから制服に着替え終わった時に机に置いている何の装飾もない鏡のついた首飾りを持ち、



「おはよう」



呼びかけて、首にかける。



「おはよう」


「おはよう、奈津美」


「おはよう、お父さん、お母さん」



キッチンに行くとお父さんはエプロンをして朝ご飯の用意、お母さんはスーツを着て、ご飯を食べていた。


夏休みに行われた夫婦喧嘩はお母さんがお父さんの元にエクレアを持って謝りに来たことで幕を閉じた。


夏休みの後半は祭りや旅行に行き、地球をかんかんと照らす太陽よりも暑くうっとおしい夫婦愛を見せつけてくれた。



「奈津美、パンだよ。付けるのはマーガリンでいい?」


「うん」



席に着くと、目の前に食パン2斤、マーガリン、牛乳を置いてくれる。



「お母さんはピーナツバターとコーヒーだね」


「さっすがお父さん、私のことよくわかっているね」


「当たり前だよ。大好きな人…だからね」



うっとおしい茶番を見せつけてくれる。夏休みに起こった夫婦喧嘩は夢のことのようだ。


夢、夢のことで思いつくのはお父さんの故郷で起こった事件のことだ。あそこで私は…


ニュースを見ると○○市で起こっていた連続殺人犯のことが流れてきた。手が震えてくる。



「別のにしよう」



お父さんが話題を変えるように別のチャンネルにするが同じように流れている。


何回か変えて占いの時間となっていた。


お父さんに気を使わせてしまった、家族旅行とかはお母さんと仲直りする意味があったが本当は私の傷心旅行もあった。


……私はお父さんの故郷、木戸村で誘拐事件が起きた。あの村に来ていた殺人鬼に誘拐されて本殿に倒れていたそうだ。


私が助かった時、首飾りを指さしながらおばあちゃんは首飾りをくれた座敷童が助けてくれたんだなと言い、おばあちゃんが後で礼をゆっとくぞと、よくわからないことを話していた。


首飾りはいつの間にか持っていて、座敷童からもらった記憶がないのだ。けど、助けてくれたと聞くと不思議とそんな気がしてくるのだ。


首飾りを握ると心が温まる、時計を見るともう家を出る時間帯、急いで残りのパンを食べ、ランドセルを背負う。



「行ってきます」



お父さん、お母さんに声をかけて、学校に向かおうとするが、



「車で送って行こう」



エプロンを外し、車のキーを持ってくるお父さんに制止する。



「大丈夫だよ」


「けど」


「大丈夫だって、外は明るいし、学校もすぐに終わるから早く帰れるよ」



もう1度行ってきますと言うと学校に向かって歩きだす、途中にお友達と会い、話をしながら歩いていると、



「勇人」



遠くからの聞こえる名前に反応して振り返る。



「どうしたの」



友達の声が聞こえるが無視して、勇人と呼ばれた人物を見るとその子は私と同じ小学校の制服を着ており、ランドセルを背負っていた。


顔は無表情でやる気のない雰囲気を体中から出しているような男の子だった。



「勇人、髪整えろよ」


「うん」



大人の男性が勇人と呼ばれている子の髪の毛を整えている、親子なのだろうか。



「勇人って子、確かお化け太郎よ」


「お…お化け太郎」



変な名前だ、ニックネームとしても悪意がありまくりだ。



「ずっと笑わない子で、あんな風に無表情で無関心だからいじめていた子も気味悪がってぼっちな子だよ」



勇人は私の方に来る。が、通り過ぎて学校に向かう。



「どうしたの」


「ううん、何でもない」



何故だろう。彼とは出会った記憶がないに、一言、ただ一言が伝えたい気持ちになる。


勇人を引き留めようと手が伸びる。伝えたい一言が喉に、口から出ようとする。



「奈津美どうしたの?ぼーとしちゃって」



友達が心配したように話しかけてくる。夢から覚めるように頭が覚醒し、とっさに友達の方を向く。



「何でもないよ」


「そう?」



伸ばしていた手を隠すように引っ込める。彼の方に目を向けるがもういなくなっていた。


私は何を伝えようとしたのだろうその気持ちも彼と同じように消えていった。


学校から始まり5分前のチャイムが鳴る。9月1日は夏休みが終わり、暑い日から寒い日に変わっていく。






「勇人」


「何?」



同じように小学校の制服を着ている生徒がたくさんいる教室で勇人は1人、窓側の席で本を読んでいる。


勇人から出ている暗い雰囲気からか彼に近づく者はいない。


それなのに誰かと会話しているのは携帯電話とかではなく。窓から声が聞こえてきているのだ。



「少し心配だったが、記憶の方は消えているな」


「違和感として残っているだけだから…その違和感もすぐになくなるよ」



3階の窓の外側から聞こえているにも関わらず、勇人が特に驚くこともなく話しているのは、声の主がどんな奴か知っており、学校で話しかけてくるときはいつもこの方法と知っているからだ。



「ならいいけど、勇人はよかったのか女を助けたのに覚えてもらえなくって、覚えてもらったらお礼とか貰えるのではないのか」


「覚えてもらえなくていいよ。今後の活動に支障があってはいけないから」



からかうような話声にも勇人は特に反応することもなく、特に感情もない機械のような声で返す。


しばし無言ではあったが、窓の外にいる奴が帰ると、飽きたように発する。



「そうだよ。覚えなくていい、悪夢は特に…」



外にいる奴の気配が感じ取れなくなると勇人は本を閉じて机に置く。


その本には今までの活動内容が書かれており、木戸村のことも書かれている。


表紙を軽く撫でると木戸村でのことを思い出すため瞳を瞑った。







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