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惑星フラター:未開の星でハーレムサバイバル!?  作者: ペペロンチーノ
第二話 Big Girls Don't Cry
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Big Girls Don't Cry その3

ヒロイン3人目 登場

「おい!これどういうことだよ!」


『名前と船内IDは』


「…」


詰問めいた口調に押し黙ってしまうと、依由ちゃんを自身の後ろへ下がらせた。


『やっぱり私の記憶障害じゃないみたいね、あんた...何者?』


脅迫めいた顔つきで問い詰められ、言葉に詰まる。


『キルケー、照合して』


天井にある蛍光灯からフラッシュのようなものが焚かれ、壁のモニターに照美と依由ちゃんの写真と細かな情報が映し出された。



〈データベースには星野 守に該当する情報はありません〉


モニターから鋭い目つきでこちらを振り返り胸倉を掴まれ軽々と持ち上げた。


『何が目的?』


空で見せた笑顔とはまるで違う怒りに満ちた形相を向けられ戸惑う中、依由ちゃんが間へ入り強気に出る。


『守さんは悪い人じゃありません!』


『何十人と死んでるのよ!個人の感情で片づけられないの!』


『悪意があるなら私のことを命がけで助ける必要はないはずです!』


次第に険悪な雰囲気が充満し、2人の気迫に押され閉じていた口がやっとの思いで弁解を始めた。


「ちょっと待ってくれ照美!俺だってわけもわからずあの船にいたんだ!」


『気安く名前で呼ばないで。そもそもIDも持たないこと自体、拘束されてしかるべしよ!』


「俺だってこんなことになるなら!」


自問自答のように続ける。


「あんなアンケートにマジにならなけりゃよかった....」


『なにブツブツ言ってんの?』


「そうだ!お前のことだって助けたろ!」


『あれはそもそも私の機転の助かったんでしょ!』


上半身を乗り出し、いがみ合う俺と照美に割って入り声を荒げた。


『そんなことより!』


『まずは守さんを精密検査にかけないと!船にはまだ着かないんですか?』


そういわれハッとし互いに目を合せ押し黙ると、依由ちゃんはそれを不思議がっている。


……そうだ、彼女は船があんなことになったことを知らないんだ。


ポッドルームの惨状、燃える船内、爆発し割れる船体。


先ほどまで強気だった照美さえどう自分の中で整理するか決めあぐねているようだった。



沈黙が続くリビングのドアが開き、190程ある背の高い女が俺の頭を押さえつけるように撫でつけてくる。


『よっ!守ぅ』


見慣れぬ端整な顔と黒く艶めく長髪で、旧知の仲とでも言わんばかりに馴れ馴れしく、そのモデル体型ほどの身長差でヘッドロックをかけられた。...悪くない。


「なんで俺の名前を?」


ここまでの美人なら記憶に強く残っているはずなのに、そう思い聞くとこの女性は不遜仄めいた口ぶりで告げた。


『12月25日 校門前』


言われるがままその日付へ遡ること数年前。中学の校門、そこにはへたれこむ少年と夕陽へ向かって去っていく少女がいた。


『思い出したかね?』


言われてみればどこか面影がある、あぁ...響だ。



遠山 響、隣に住んでいた幼馴染にして決死の告白を笑いながら断った張本人。



「....誰かと人違いをしてるんじゃないですか」


他人のフリでその場を乗り切ろうとすると、彼女は掌を突き出し中指と薬指を離し言った。


『長寿と』


「繁栄を」


しまった!


『ほーら、何で他人のフリすんのさ。』


冷や汗を垂らし虚空を見つめるとまたしても依由ちゃんは割って入る。


『皆さんがどういう関係なのかは置いておいて、船にはまだ付かないんですか!?』



『ん、もう着いたよ。これがヴァジュラ級巡洋艦にして、我が家 スーペリアにございます』


響は大袈裟に指を鳴らすと床から壁、天井にかけて全面が外を映し出すモニターに変わった。


そこには5階建てほどの高さの船体にメタリックブルーの植物が絡みつき、まるで大木がそびえたっているようだった。.....酷いな


『なんなんですか....これ...』


唖然とし声を漏らすと律儀にさぁ、と肩を上げ清ました顔で首を傾げる響。


異様な光景に怯えているのか依由ちゃんはこちらに身を寄せ、つい横目で響へ視線を向けるとすぐさま気づき「見てしまった」ことそのものを嘲笑うようにしてニヤつく。


とんだ赤っ恥だ、気を散らし真反対を向くとその先では照美が奥のクローゼットから宇宙服を出し着始めていた。


「おいどこ行く気だよ!」



『月にでも行くと思う?ジョーンズじゃないのよ。』


『あんたの尋問は後回し。まずがあの船がどうなってるのか調べないと。』


『せいぜい今のうちに鼻の下伸ばしてなさい』


「伸ばしてねぇ!」


吠えるが、返すことなくテキパキと準備を済ませ工具箱を携え外へ出た。


『行っちゃった』


響は止めることもせず船へ向かう照美へ手を振り、依由ちゃんはその間に結束帯を切ってくれた。


「あぁ腹立つ!」


勢いよく立ち上がりスーツの元へ向かうとぐい、と引っ張られる。


『待ってください、どんな影響があるか分からないんですから!』


「離してくれ!このまま言われっぱなしじゃ男として収まりが!」


『よく言うよ~昔はあんなに女の子に間違われたのに』


くつろぐ響がソファ越しで茶化す。


顔を真っ赤にして細い手を振りほどき、スーツに身を包むと左右にスッと人影が伸びる


『船の中がどうなってるか私も気になりますし、なにより守さんが行くなら私もついて行きます』


右から依由ちゃんが


『私も1人じゃ退屈だしね~』


左からは響が俺の倍の速さでスーツ姿に着替え横並びで立ち


二人は一歩先に踏み出すと、空で見た照美に似た笑顔で手を伸ばした。


『さぁ!』


彼女らを見てふと思った。


なんで俺はこんなところにいるんだろう


なんで俺なんだろう


なんで2人は何もない俺に手を差し伸べてくれるんだろう


二度も人を見殺しにした俺に....




それでもただ一つ、確かに分かることはある。


ここは....俺の望んでいた「ここではないどこか」だと。

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