諦めよ
青年よ 大志を抱くな 諦めよ
老人は 言った
執着と根性
努力と浪費
忍耐と怠惰
固執と意思
どうやって 区別をつけるのかと
老人は 言った
それは とても むずかしいから
どうせぼくなんて
いても いなくても おんなじ
せかいはなにも かわりゃしない
ぼくがそう言うと
ほんとうにそのとおりだね と
老人は ほほえんだ
どうせぼくなんかより やくにたつひと
いくらでもいるよ
どうせぼくなんか
あれもだめだし これもだめ
それに あのことを言われれば
ひとことだって かえす言葉がありません
どうしようもないね と
老人は 頷く
そうだねと ぼくも 頷く
ああ ぼくは
あきらめよう いろいろ
どうしようもないこと
あきらめよう
だって どうしようもないんだから
むりのある綺麗事で 執着せずに
あきらめよう いろいろ
表があれば 裏がある
綺羅びやかな表の面の 裏側には
人知れぬ 暗い面
そうして
あきらめたぼくは いつしか
「どうせ」とは 言わなくなった
「さあ どうする」 と
ぼくは ぼく自身にたずねた