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それでも君を愛してる  作者: 林 愛
3/3

入学式(後半)

「えっ!あの人遅刻した人?」

「そうそう。初日から遅刻して反省文書かせられるとかヤバイよね」

「あの目ヤバイな。睨まれただけで殺されそうだ」

「たぶん裏でカツアゲとかしてんだろ」

先生に謝り何とか式の最後の10分だけ出れたのだが、その後先生に呼び出しをくらい今回は初回なので反省文のみで済ましてもらったものの原稿用紙5枚分も遅刻の反省書けないだろ。

しかも、初回なので大目に見てもらったはずなのに反省文書かせられるということは、次は監禁でもされるの?

今は教室で待機している。

「あんま関わらないようにしようぜ」

「中徳って真面目な高校だから入学したのに、本当サイアク」

「あの目怖いよね。何かつり上がってるし」

うん、さっきから無視してきたが、もう限界だ。何か俺遅刻したのと目がつり上がって怖いので不良扱いされてる。しかも、中徳高校の恥になってる。

確かに遅刻したし目が怖いってよく言われるけど、何も中徳高校の恥にしなくてもいいだろ。これからお前らのうち誰かが遅刻する度、机に中徳高校の恥ってちゃんと消えるように鉛筆で書いてやる。

でも、通常の授業の日と入学式に遅刻するのは雲泥の差ですよね。

あと、なんで反省文のこと皆知っているの?俺と先生だけの、ひ・み・つ❤なんだけど

「はーい。静かに。席に座ってー」

担任の小田原先生が教室に入ってきた。小田原先生は若い女性の先生だが、体育の先生だけあって怖い。

「じゃあ、自己紹介からいくね」

そう言うと小田原先生は黒板に自分の名前を書いた。

「私は小田原和子といいます。この1年4組の担任を担当させてもらいます。一年間よろしくお願いします」

「パチパチパチパチ」

教室に拍手が起きる。

小田原先生は先程俺を叱った先生だが悪い先生ではない。少なくとも綺麗事を言って何でも済ませようとしたり、とてつもなく理不尽なことを言ってきたりはしないだろう。

「じゃあ、出席番号順に自己紹介してもらおうかな?緊張するだろうけど、なるべく自分のことを知ってもらえるようにしてね。じゃあ、相田君からどうぞ」

小田原先生に指された相田君は俺の前の席である。つまり、次は俺が自己紹介をするのかよ。相田君、どうか名前と一言だけで終わらせてくれ。そしたらハードル下がって俺も言いやすい。

「相田翔太です。出身中学は第四中です。趣味はこれといってないけどスポーツ観戦かなー。特に野球が好きです。部活は・・・」

長い、長いよ。相田君。しかも、人前で話すことに慣れているのか緊張した様子もない。

「パチパチパチパチ」

いつの間にか相田君の自己紹介が終わり、ついに俺の番がきた。俺は相田君と違って人前で話すの苦手なんだよな。

「わっ不良だ」

「あいつが入学式から遅刻したやつか」

「目つきヤバ」

さっき席が遠くて俺のことが見えなかったやつらが騒ぎだした。

もはや目つきだけで不良扱いされているような気がする。まあいいんだけどな。中学のときもそうだったし。いいんだよな。あれ、じゃあなんで目の前がボヤけて見えるんだろ。なんで俺目を押さえてるんだろ?

「うるさい。静かに。飯島君が始められないでしょ」

小田原先生が注意してくれてなんとか静かになったけど、皆の視線が痛い。どこを見ればいいんだ?

しまった。女子と目があってしまった。

このパターンは中学であったが、すぐに目を逸らされ傷つくパターンのやつだ。そして二度と目が合った女子と話すことはない。

なんだ、俺の目って何か特殊な能力でも持ってるの?

だから、あの女子とは二度と話すことはない。あれ?何か手を振ってきた。すごい可愛らしい女子だな。生徒会長とは真逆な存在だな。まだ幼さが残る顔は・・・可愛いな。

しかも俺の女子を退治する目が効かないとは、なんて純水な心の持ち主なんだ。まるで恐れを知らない小学生のようだ。

「えっと、飯島君?どうかした?」

「あっ!いえ、何でもないです」

いかん、いかん、あの子の純水さに心を奪われてしまった。

「えっと、いい、飯島隼人です。よ、よろしくお願いしましゅ」

お願いしましゅ?お願いしましゅ?何言ってんだ俺は?緊張しすぎだろ。

皆これ笑うとこって空気醸し出してるし。教室の空気が凍っている。

「ぷぷぷ」

隣を向くと黒髪の清楚そうな綺麗な女子が笑いを堪えていた。まだ吹き出してないから皆気づいてないけど。

俺はしーんとなった教室の空気に圧されながら静かに席に座った。

皆の視線が痛い。さっき目があった幼さが残る少女の方を見ると口パクで「ドンマイ」とやってきた。やっぱりいい子だな。君と俺の隣の席の女子だけだぞ。何かリアクションしてくれた人。

「じゃ、じゃあ次行こうか」

小田原先生まで何か俺に気を使っている感じだし。

俺の高校生活最初の学校は失敗に終わった。

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