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それでも君を愛してる  作者: 林 愛
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入学式(前半)

今日は高校の入学式。普通の人なら友達できるかな?だの、何部に入ろうかな?だの、考えているところだが俺、飯島隼人は違う。

今俺は校門の前に立っているわけだが、帰ってもいいですか?

今、時間は10時30分。ちなみに集合は9時で9時半から式が始まる。つまり、俺は一時間半遅刻したのだ。入学式から遅刻なんて不良でもしないだろう。

しかも、母親は

「隼人君の晴れ姿、この目でしっかり見届けないとね」

とか言い、俺より先にでっかいカメラを持って行ってしまった。

一緒に行ってもよかったのだが、ここで思春期が発動してしまい、親と一緒に学校に行くのが恥ずかしくなり、少し遅れて行こうと思い、ソファーに寝転がっていたら、いつの間に寝ていた。

なので今、息子の入学式に息子は参加せず親だけが参加するという何とも言えない現象が起きている。

「しょうがない。行くか」

覚悟を決めるように言うと、俺はこれから学びの舎となる県立中徳高校の校内へと踏み出した。



中に入ると誰もいなかった。おそらく式が行われている体育館に全員いるのだろう。

どうする?堂々と体育館に入っていくか?いや、無理がある。俺は思春期だぞ思春期、そういうの弱いんだ。

でも、体育館に入らなければ何も始まらない。何とかコソコソ入れる入口とかないのか?ここの高校には学校見学に来たが、体育館の入口の数まで説明されていない。

どうすればいい?帰るか?思春期が発症したので帰りますとかそれこそ大問題だぞ。そんな蕁麻疹が発症したので帰りますみたいな乗りで帰れるなら帰るけど、どうすればいい?

俺は一人で体育館の前で葛藤していた。すると

「おい、そこの君」

女の人の声がした。声からして大人っぽいから先生だろうか?

やばい、見つかった。女の人から見て俺の顔は見えないから顔はばれていない。どうする?逃げるか?いや、遅刻したことを正直に話して謝罪するチャンスではないか?

また葛藤を始めた俺に足音が近づいてくる。ここはもう謝罪するしかないな。

「すいませんでした!悪気はありません。遅刻に悪気とか関係ないかもしれないけど悪気はありません」

「落ち着くんだ。君は1年か?」

「はい」

女の人は制服を着ていた。リボンは緑だ。この学校は男子はネクタイ女子はリボンの色が学年によって違う。緑は確か3年生だったような気がする。

女の人は外見から言うと、何かスポーツをやっていそうな雰囲気だ。ショートヘアーだし少し肌が焼けている。なんかすごいボーイッシュな女性だな。

「それで、君は遅刻したのか?」

「はい。すいません」

やはり怒られるのか?入学式から先輩に怒られるとは、これから先、学校中で問題児扱いされるだろうな。やだな、中徳高校はすごい頭がいい訳ではないけど、それなりに頭が良く真面目な学校だ。真面目な学校に入学式から遅刻する問題児は俺だけだろう。

「ハハハハハハハハハ」

「えっ」

女の人はいきなり笑いだした。それも爆笑している。

その笑顔は男の俺が思わずドキッとしてしまうくらいかっこよかった。いや、女性にかっこいいは失礼だな。でも、ジャニーズでもこんな笑顔できる人はいないだろう。

「すまない。私は一条香だ。中徳高校の生徒会長をやらせてもらっている」

「えっ!生徒会長?」

この人が生徒会長なのか。確かにしっかりしそうだし、リーダーに向いてそうだ。

「まさか入学式から遅刻してくる新入生がいるとは。少し驚いてしまったよ」

「すいません」

「いやいや、別にいいんだ。私は今から新入生歓迎の言葉を言わなくてはならなくてね。少し緊張したから外に出てきたんだ。君のおかげで緊張がほぐれたよ。ありがとう」

生徒会長はそう言うと、俺に微笑んできた。俺は不覚にもまたドキッとしてしまう。

「私はそろそろ行くけど、君も早く行った方がいい。遅刻したのをしっかり謝れば先生方も許してくれるさ」

「はい」

「そう言えば、名前を聴いてなかったな」

「俺は飯島隼人です。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく頼む、飯島くん」

そう言うと生徒会長は体育館へ戻っていった。生徒会長にも言われたしな、素直に謝りますか。

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