表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

2

 先日、私は5歳の誕生日を迎えた。それはそれは、流石公爵家!というような規模のパーティーを開き、色々な人たちを呼び込み紹介されたのだ。


 そして今日。何か用があるとかで家族皆呼び出され、王城に来た。正直内容は予想できている。私の婚約者うんぬんの話であろうと。父はこの国の宰相の一人だ。愛妻家、そして家族にとても愛情を持っているのは知っているが立場上、政治的判断を特に強いられる人間である。今後のことを考え、私とこの国の王子と婚約をしておいた方が良いと考えたのだろう。もしかしたら虫よけも含んでいるかもしれない。


 公爵家自体が力を持ちすぎるのも良くないからと、色々と考えた上での判断だろうとは思うので、私も特に気にしてはいなかった。何より婚約者とか言われたら、ちょっと気になってしまったのも女の性かもしれない。


 そういうことで連れられて来た王城で、何か急な応対があったらしく2時間ほど待てと言われた。王という立場が忙しいのも知っているし、父が傍にいることから大事ではないと判断。寛ごうとした所で、兄様からのお言葉。


「王城の図書館に行きたいです!」


 そしてキラキラな笑顔で一緒に行こうと言われれば、兄様ラブ……ブラコンにならない程度で、な私としては頷く以外の選択肢はなかった。確かに時間もあるし、と家族皆で図書館に繰り出す。五歳の私から見れば大きいと思われる扉の先には、図書館と言うだけあってずらっとした本が詰め込んであった。


 わぁすごーい、なんてぎっしり詰められた本を眺めていた所で聞こえる声。


『汝、資格ありし者。我が元へ』

「……なに?」


 とか言うちょっと痛いと思われる台詞に答えっちゃったが最後、暗闇にボッシュートされた。




 そして現在、その暗闇の中から私と原因と思われる魔導書でお送りいたしております。


「さてさて。何度やったか分からないお役所仕事よりも融通聞かない問答を再度始めようか! 誘拐犯よォ!」

『……何度やっても同じなのだから、再度やる意味が分からぬ』

「私がここに誘拐された現状確認をしたいんだよ、付き合え」

『そうは言われてもな、我は資格ありし者。つまりそなたを招いただけなのだが』

「うんうん、そうかー。じゃあ帰してくれないか?現実世界に」

『それがそなたの望みだな?』


 ほら、きたー……うっわ、何回目だよ、本当に!


「だから、勝手に招いておいて望みとか言うんじゃねぇよ。しかも通行料取るんだろう?」

『我は望みに対する対価を貰うだけだが』

「それはもう強奪っていうんだよ!」


 今のやり取りから分かって貰えたと思うが、この魔導書。なんでも願いを叶えてくれる感じのものらしい、有料で。しかし、勝手に誘拐しておいて「家に帰せ」「元に戻せ」と言っても、テンプレ通りのこの対応。お役所仕事も真っ青な柔軟の無さである。あ、お役所仕事馬鹿にしてるとかじゃなくて、マニュアル通り以上に酷いってこと言いたいんだよね。要は、本当に柔軟性というか機械を相手にしてるって言うか。行ってもないのにATMで金下ろせ、有料でとか言われてる感じ? ……あっ、そっちならまだやりようあるか。有料の内容も分かってるしな!


『強奪? 我は何も奪ってはいないが』

「私の自由を既に奪ってるけれども!? 確認するけど、私を戻したあとの対価は?」

『分からぬ。願いに応じて対価を貰うようになっている』

「だからそれ前もってわからないのか?」

『何度も言うが不可能だ。あくまで我の機能、どうなるかは知らぬ』


 これだよ! 別に帰るって選択しても良いけど、私の何を取られるか分かったもんじゃない。だから下手に選択できなくて頭を抱える。願いに応じてというのであれば、「帰る」って願いと同等のものなんだろうが、それが私の思っている以上に大変だったら、何を奪われるか分かったもんじゃない。


 頭を抱えてどうするか、ぐるぐると答えのない答えを探すように私の夢や今までの人生の回想をしていたのだ。仮にこの魔導書を説得したとして、機能とは別、みたいな事言ってるからオッケーかどうかも分からない。いっそ夢の手伝い、とか思ったけど難しい事は分かってるので、たくさんのものを奪われるのではないかと考え込んでしまうのだ。


 ……あれ、これ、積んでない?





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ