そんな小さなことで婚約破棄されるなんて思いませんでした……が、その後良き人と巡り会えたので、結果的には成功だったと思います!
「明日も晴れるといいですね、アインさん」
「ああー……まぁ、そう、だな」
私エリカと婚約者である彼アインは学園時代に知り合い婚約するに至った。
この関係のはじまりを作ったのは彼の方だ。
学園内にて向こうが声をかけてきて、少し喋るようになり、やがて彼が「一緒に生きていかないか? 婚約してほしい」と言ってきた。
それで、流れのままに、気づけば婚約者同士となっていたのだ。
そんな私たちは今、二人で、私の家の庭でティータイムをしている。
「晴れはあまり好きでないですか?」
「まぁ……そう、だな。どちらかといえば曇りや雨の方が好きかもしれない」
「何でも、それぞれ好みがありますよね」
「ああ……エリカは晴れが好きなのだな」
「特にこだわりはないですけど、どちらかといえば、という感じです」
すると彼は突然椅子から立ち上がり。
「悪いが、エリカ、君との婚約は破棄とすることとする」
重みのある低い声ではっきりと言いきった。
「え……っと、その……それは、どういう?」
「そのままの意味だ」
「婚約破棄する、ということ……ですか」
「ああ、その通り」
「そうですか……」
場が何とも言えない空気に包まれる。
「君は晴れが好きだと言ったな。だが、相手がどう思っているかも分からない状況でそのようなことを言うのは間違っている。俺が晴れを望んでいるのかどうか、分かっていない状態でそのようなことを言うなど、愚かの極みだ」
え……そこまで言う……?
軽く言葉を交わしただけなのに。
重大な話というわけでもないのに。
天気についての軽い言葉だけで愚かの極みとまで言われる必要が本当にあったのか。
どう考えても謎でしかない……。
「君には幻滅したよ。まさか君がそんな自分勝手で周りのことを欠片ほども考えないような女性だったとは。ああ、今まで騙されていた……君のことを良き人と思ってしまっていた……残念残念残念、だ。……だが、結婚前に気づくことができたのは良かった。危うく君を良い人と思ったまま結婚してしまうところだったよ」
では、と、彼は続ける。
「さらばだ、自分勝手の極みな悪女……エリカ」
こうして私たちの関係は突如終わりを迎えてしまったのだった。
終わりは呆気ない。
信じられないくらい、一瞬で、築いてきたものは壊れてしまった。
見つめてきた未来も崩れ去り。
残されたものは何もない。
二人の間にあったものは何一つなくなった、ここに残っているのは二人の関係が壊れたという事実だけ。
◆
あの後間もなく良き出会いがあった。
父親の親友が紹介してくれた青年と顔を合わせることとなり、親しくなれたのだ。
初めて会った時から初めて会う気がしなかった。まるで、ずっと前から知っていたかのような感覚で。常に自然体のまま言葉を交わすことができたし、話題もそこそこ合っていた。
それからたびたび二人で会って、やがて、将来について考えるようになっていく。
そして、夏のある日、彼からついに想いを告げられて――婚約するに至った。
その後も順調に時は流れ、無事結婚。
新たなスタート地点に立つことができた。
ちなみにアインはというと、あの後別の女性と婚約したそうだが、黙って別の女性と二人で出掛けるなど自分勝手なことをやりすぎたために女性を怒らせてしまったそうだ。で、数時間にわたりかなり厳しい言葉をかけられたうえ婚約破棄を宣言されてしまったそう。アインは「婚約破棄だけはやめてくれ」といったようなことを情けない様子で頼んだそうだが、女性はまったくもって相手にしてくれず。結局そのままアインは婚約破棄という形で関係を切られることとなったようである。
婚約破棄されたアインは酷く落ち込んでいたそうだが……ただ、まぁ、自己中心的過ぎる行動をしていた彼が悪いのだから、女性に非はなく、完全に自業自得というものだろう。
◆終わり◆




