ボクに生きる価値なんて無い。
今日も独り、抱え込んでいる。
夜中十一時。壁に背を預け、枕を座布団代わりして座り、三角座りしつつ足にだけ布団を掛け、明日が来ることを拒んでいる。
「――はぁ」
何も成せず、心の闇を発散させる術も無く、ただ悩みに呑まれてだらだらと過ごすだけ。
人に迷惑だけをかけて何も恩返し出来ず、「ダメな人間」に堕ちるだけ。
そんな自分に、生きる価値など無いと思っている。
世の中の「成功者」の様に何かを成し遂げられたら?クラスメイトの明るいあの子みたいにポジティブで居られたら?ボクはもっと、「良い人間」として命を全う出来ただろうか?
何故、こんなに弱くて脆い、ガラスの様な人間になってしまったのだろうか。強化ガラスには成れなかったのだろうか。
――なんで自分は、こんなにもダメなやつなのだろうか。
「······死んでもいいかな」
生きる価値を見出だせないのだ。今なら別に死んだって、悔やむことは無いだろう。
明日学校へ行く途中、眠気の抜けきれていないサラリーマンの運転であの世へ行けたら。――なーんて妄想するだけで、自ら死ぬ勇気なんて無い。
事故死、あるいは事件に巻き込まれて、が一番良い。それらが、自分の大切な人達が一番悲しまずに死ねる方法だろう。
もしくは、ボクが死んでせいせいしてくれるだろうか?惰眠を貪るしか出来ないボク分のお金や労力が浮くわけだし、考えてみればメリットが大きい。
ボクはボクの大切な人達に何も返せてやれてないし、死んでしまったほうが、良いのかな――。
「······考えすぎか」
あまりに薄情な妄想だったか。ボクの両親やじいちゃんばあちゃん、従兄弟は、例えボクが何も返せていなくても、本気で悲しんでしまうだろう。
――有り難くも思うが、死にづらい。お陰で「死のう」という気持ちが湧きづらい。
悪い事では無い筈だが······、なんだか複雑な気持ちだ。
「······寝たくないなぁ」
寝れば早く明日がやってくる。明日がやってくれば辛い一日がまた始まる。
だからなるべく夜更かしして、明日が来ないようにと『今日』を引き伸ばしている。
可能なら時間を止めてみたいものだが······。
「まぁ、無理だよなぁ」
悪魔契約でもしない限り、そんな力は手に入らないだろう。
そして願いを叶えた悪魔が魂を奪っていくというのがお約束。
「なら、どっちにしろ好都合か」
死ぬにしても時間を止める能力を手に入れるにしても大歓迎。
――という現実逃避だ。
「······はぁ」
溜息を出してみる。心のわだかまりを吐き出せないかなぁと思って。
良く「溜息をつくと幸せが逃げる」なんて言うが、自分はそうは思わない。
そもそも、溜息をついてしまう状況に居る人は、その一瞬幸せが残っていないのだから、逃げる幸せなんて何処にもないのだ。
あるのは辛さだけ。その辛さを体外に吐き出す、それが溜息だと思っている。
まぁ、吐き出せたとしてもほんのちょびっとにも満たないが。
「······生きてたくないなぁ」
可能ならば消えてなくなりたい。死んだ訳では無いけど、現実世界に存在していない、そんな感じ。
どうせ生きる価値も、生きる理由も、未来への希望も無いのだ。ならばもう、辛い事がたっくさんある人生を歩んでいたくない。
こうやって散々悩むけれど、結局何も変わらないのだ。
明日は皆平等にやってくるし、明日もまた悩みながら生きていく。それが繰り返されて、いつか『壁』に激突する。
そうなった時、自分がどうなるか······。死ぬのか心が壊れるのか分からない。ただそれに恐れている。
そんなこんなで、生きる価値を見出だせないまま、自分は生きていってしまうのだろう。




