無題(風に問い、風に乗る その先へ)
碧が溶け 細い月の浮かぶ夜の始まり
陽はずっと顔を見せず 一日は終わってゆく
ただ薄い雲が空を覆い 星はなく
切れ間に漏れる白い光が ここを照らす
ここに立つ私は今を生きているの?
私を信じているの? これからも私でいられる?
数々の不安は木々を渡る風に消えていく
時に立ち止まり 振り返ると
そこにある軌跡は
弱々しく曲線を描き私の足元につながっている
これまでを悔みたくはないけれど
こんな時、私は道を見失う
このままでいいの?
渡る風に答えを求めても ただ
頬を冷たくなでるだけ
風に乗って
私もこのままどこかへ流れてみようか
この夜を越えて 明日をさまよってみようか
私の心に残る最後の勇気に頼ってみようか
私を打ち消すほどの強い波を探しに
常に何かを比べて選んで生きてきたから
いつも私にはひとつのものしか残らない
こぼれていったたくさんの欠片の中に
私の心まで置いてきてしまった
私に残るのはたったひとつの勇気
小さな、とても小さな勇気をひとつ
今を打ち破って この風に乗って明日へ
私にそれが出来るかはわからないけれど
この冷たい風の向かう先へ流れてみようか
私の弱々しい軌跡を断ち切るために
この淋しい夜から私は始めようか
もう一度だけ 失くしたすべてを探しに
この心に残ったたったひとつの勇気で
この風の向こうへ
昔の作品からまた書き出してみました。この頃、深夜にひとりで散歩をすることが好きで、この詩もそんな時に浮かんだものでした。とても寒くて淋しい夜だったのを覚えています。